優秀なIT人材の採用に伴う課題とは


ロバート・ベックレー、ヘイズ・オーストラリア&ニュージーランド、リージョナルディレクター ​​​​
 
 

高度なスキルを持つ人材へのニーズが順調に伸び続けています。こうしたIT人材への需要が供給を上回る状況はしばらくの間続いていますが、こうした傾向が最も顕著に表れるのがIT業界です。
 
IT技術は絶え間なく進化しています。企業運営の要であるIT技術が発展すれば、企業を動かす条件も変わります。このため、採用するIT人材へのニーズも年々変化しているのが現状です。
 
IT人材の採用にあたり、企業が直面する課題はおおよそ以下の5つに分類されます。
 
 

1. 十分なスキルを持った人材の不足

経験豊富で高度なスキルを持つIT人材への需要は、かつてないほど高まっています。多くの企業は、プロジェクト遂行という大きなプレッシャーの中で、適任のIT人材を探し出して採用しなければなりません。また、多数の企業が同じスキルを持つ人材を必要としていることから、こうしたIT人材の獲得競争も始まっています。人材不足を速やかに補うために、請負契約などを活用する企業も少なくありません。特に不足しているのは、DevOpsやサイバーセキュリティの専門家、データサイエンティストなどの人材ですが、IT分野ではこの他にも数多くのIT人材が不足しています。
 
そして今、企業は技術的なスキルだけではなく、業界経験やビジネスに関する洞察力、高いコミュニケーション能力、優れた対人能力なども重視するようになりました。これらの能力やスキルが、将来のビジネスの課題を解決するために必要になるからです。こうした背景が、IT人材の採用を一層困難なものにしています。
 
 

2. 海外人材の活用を視野に入れているか

国内での人材不足を受けて、海外のIT人材の採用を視野に入れる企業も出てきました。ハイスキル人材の採用は、国境を跨いで世界規模に広がってきたのです。
海外など離れた地域で就業する場合はテレワークが中心になりますが、この働き方には課題もあります。しかし、IT技術が進歩し、コミュニケーションや業務上の連携、ノウハウの共有などが効果的にできるようになっていることも確かです。
 
 

3. 優秀な人材は相応の給与と福利厚生を求める

IT人材は、自分たちのスキルが売り手市場にあることを知っています。待遇の交渉を優位に進められる他、希望する仕事を選ぶことができることを分かっているのです。このため、優秀な人材の獲得には、どのような待遇を用意できるかが一段と重要になっています。
 
企業もまた、こうした候補者を惹き付けるために、自社の仕事や昇進制度がどの位魅力的かをアピールする必要があります。SNSなどのオンライン媒体も浸透していることから、企業が持つブランド力はこれまで以上に重要なポイントになります。言い換えれば、選ばれる企業になるために、高い信頼を獲得する必要があるのです。そこで、自社の昇進制度や最先端の技術を活用した仕事、トレーニング、人材開発などの福利厚生についても広く伝えておきましょう。場所や時間を選べるフレックス勤務制度や年金制度、インセンティブボーナスなども他社と差別化を図る重要なポイントです。
 
 

4. 採用にかかる時間は適切か

優秀なIT人材をライバル企業にさらわれないようにするためには、採用期間の短縮も有効です。例えば、同僚や上級管理職、経営陣や人事部との面接や適性検査、入社試験を1日で済ませることはできないでしょうか。また、同じ日に面接担当者からのフィードバックをまとめたり、条件を提示することが可能かどうかも考えてみましょう。企業の中には、一部のポジションについて採用プロセスの規模の縮小に踏み切ったところもあるようです。こうした採用の短期間化や規模の縮小などは、企業と候補者の双方にメリットとなるでしょう。
 
 

5. 条件は常に変化するもの

技術のイノベーションは、目まぐるしい速度で進んでいます。次にどのようなニーズが発生するのか予想することは、非常に困難です。こうした背景から、企業は今、目の前の課題に対応できるだけのIT人材では満足していません。未来の環境変化に備えることができる、高い将来性を備えたIT人材を求めているのです。
 
つまり、一人の人材が時間と共にどのようにスキルを向上させて、変化への対応力を身に着けたのか、また、今後もスキルアップし続ける意欲を持っているのかに注目することが大切になってくるのです。
 
発展を続けるIT業界において、優秀なIT人材の惹き付けやつなぎとめが困難なことに変わりはありません。しかし、その時々の状況に鑑みながら採用方法を調整したり、あるいはもう一度最初から作り直したりすることができるのなら、最終的には非常に有望なIT人材を採用することができるでしょう。
 

著者

ロバート・ベックレー
ヘイズ・オーストラリア&ニュージーランド、リージョナルディレクター
 
ロバート・ベックリーは、メルボルンを拠点とするリージョナル・ディレクター。2006年以来、オーストラリアのIT人材紹介市場に従事。現在はヘイズのアジア太平洋地域のITビジネスを統括しています。バーミンガム大学で修士号を取得し、20年にわたる業界経験を有している。
Responsive Image

最新記事

業界動向から面接準備、チームマネージメント、需要の高い仕事まで、転職活動に有益なさまざまな情報を提供いたします。