パネルインタビュー、目的を知り対策を練る

1人と面接をすることも大変ですが、複数の面接官が対応するパネルインタビューに臨むとなると、さらに気が重くなると思います。パネルインタビューと聞くと、硬い表情の面接官たちが自分の前に座り、矢継ぎ早に質問をされる光景が頭に思い浮かぶのではないでしょうか?
 
今回は、外資系企業の採用プロセスで見られるパネルインタビューに際して、緊張を和らげるためだけでなく、パネルインタビューの準備として実際に使える対策をまとめました。
初めに、なぜ企業がパネルインタビューを行うのか説明します。
 

なぜ企業はパネルインタビューを行うのか?

企業がパネルインタビューを行う理由の1つは、公平な判断をするためです。面接官にそれぞれ、惹かれやすい意見や経験があることは避けられない事実。このような潜在意識的な好みは「バイアス」と呼ばれ、意識的なものと無意識的のものがあり、私たち一人ひとりが持っているものです。多様な面接官が複数参加することで、バイアスの影響を少なくし、より公平な評価・選考を行うことできることから、パネルインタビューが取り入れられています。
 
パネルインタビューは、採用の最終的な判断の前に行われることが多いと言われています。この段階ではライバルは1人~2人になっている場合が多く、企業はより多くの関係者を巻き込み、さまざまな意見を聞くことで、その人の長所を十分に考慮し、適切な人材を採用しようとします。
 
もう1つの理由は、複数の候補者と同時に面接を受けるパネルインタビュー独特の形式によって与えられるさらなるプレッシャーにどう対応し、対処するのか評価するためです。落ち着いて自分の専門知識を伝え、信頼関係を築くことができるか、それとも緊張に負けて平均以下のパフォーマンスになってしまうのかを見ています。
 

パネルインタビューに向けてどのような準備をすれば良いのか?

パネルインタビューに向けて今すぐできる最も簡単な準備として挙げられるのが、企業の概要や製品、サービスについてインターネットで調べ、SNSのアカウントをフォローすること。企業の最近のニュースを読み、履歴書・職務経歴書の内容を頭に詰め込み、回答を準備しておくこと—これらに加え、パネルインタビューのためにはさらに次のレベルの準備をすることが不可欠。より多くの面接官がいるということは、より多くの下調べが必要になります。
 
例えばパネルインタビューの前に、転職エージェントや採用担当者に、参加する面接官の名前と役職を確認。LinkedInやGoogle検索で、各面接官の会社での役割やキャリアパス、最近成功したプロジェクト、受賞歴を調べます。時間をかけてしっかりと下調べを行うことで、以下のようなメリットがあります。
 
  • 未知への不安を取り除き、自信を持って面接に臨むことできる
  • 各面接官の優先順位や課題、ビジネス/チームでの役割を理解することで、質問内容を予測し、先手を打つことができる
  • インターネットで書いたブログやマスコミに提供したコメント、動画を見つけて確認しておけば、相手のコミュニケーションスタイルを事前に把握し、良い関係性を築きやすくなる
もう1つの準備方法として、家族や友人に面接のリハーサルをしてもらうのもおすすめ。さまざまなテーマについて複数人から連続して質問をしてもらうのは良い練習になります。
 
Performance of a Lifetimeの最高経営責任者(CEO)のキャシー・サリットは、ハーバードビジネスレビューの記事で、次のように述べています。「面接では、文字通り新しい役のためにオーディションを受けているのです。パフォーマーとしてのスキルを磨くことは、転職を成功させるだけでなく、自分を成長させ、常に柔軟性と新しいパフォーマンスを求められる21世紀の職場において重要なスキルを身に着けることができます」。
 

パネルインタビューで面接官と良い関係性を築くためには

自己紹介:面接室に入り、笑顔で挨拶して自己紹介を始めます。しっかりとしたアイコンタクトは、自信と社会人としてのマナーを示すことができ、良い第一印象を与えるのに効果的です。また、最初の自己紹介で、面接官の名前を覚えておくことも大切。メモ帳にテーブルの絵を描き、座席の位置にそれぞれの名前を書いておくのも1つの方法です。会話中や質問されたときに、自信を持って面接官を名前で呼ぶことができるようになります。
 
身振り手振りに気を配る:あるハーバードビジネスレビューの記事では「どのように伝えるかは、少なくとも話す内容と同じくらい重要です」と述べられています。そわそわせず、面接官と目線を合わせ、背筋を伸ばし、話をさえぎらないように注意する必要があります。身振り手振りは、面接官の印象だけでなく、気持ちの持ち方にも影響を与えます。実際にプリンストン大学の研究で、積極的に身振り手振りを見直すことで、気持ちの持ちようも変えられるとわかっています。
 
すべての面接官に気を配る:まんべんなく目線を配り、面接の前に会ったことのある人ばかりに集中せず、すべての面接官と関わるように意識します。「Art of Charm」の著者であるAJハービンジャーは、ビジネスインサイダーの記事で「アイコンタクトは相手に認識、理解、納得させる最も簡単で強力な方法の1つ」と述べています。
 
すべての面接官に質問する:各面接官に会社での役割や優先事項、目標に基づいて逆質問をします。それぞれの専門分野についてしっかりと調べていることをアピールし、良い印象を与えることで、面接官と良い関係性を築くことができます。逆質問については「面接で逆質問を一つしか聞けないなら、この質問を聞くべき」にまとめています。
 

冷静さと集中力を保つ

適度なストレスはポジティブなものですが、多くの人にとって面接はどのような形式であっても大きなプレッシャーを感じるものです。エグゼクティブ・コーチでキャリアカウンセラーのアンナ・ラニエリは「問題は、パネルインタビューを含む転職での面接が通常の会話の形ではないということです。通常の人との付き合いではあまりしないような、自信を持って自分の強みを伝えるということが必要になります」と語っています。パネルインタビューで感じるストレスは大きなものですが、適切な準備と正しいマインドセットがあれば、落ち着いて対処できます。
 
また、パネルインタビューは、より多くの人との関わりや意見、アジェンダがあるため、1対1の面接ほどきめ細かく、スムーズに行われないかもしれません。面接官がお互いに話し込んでしまったり、補足の質問をされたりすることもあります。このような場合は、一息ついて全員が話し終えるのを待ってから、自分の回答を話します。
 
必要であれば、質問の意図を明確にするために確認をすることは悪いことではありません。自分が熱心に聞いていることをアピールすることができます。また、質問に対して即座に答える必要があるわけでもありません。質問に的確に答え、面接官に実績をわかりやすく伝えるのに有効なSTARテクニックも駆使して、しっかり考えたうえで答えることが大切です。
 
面接官のなかには、他の面接官と似たような質問をする人もいるかもしれません。その場合は、同じ内容で答えますが、言い回しは変えます。その前の質問と関連したものである場合は、前回の回答内容も踏まえて答える必要があります。また、補足で何か答える必要があるか、聞いてみるのも一手です。
 

パネルインタビュー後にすべきこと

フォローアップのメールを送る:面接の後に、フォローアップとお礼のメールを採用担当者またはエージェントに送ります。貴重な時間を割いてくれたことの感謝や、その仕事と企業の両方に関心を持ったことを伝えます。メールは早ければ早いほど◎。熱意を示し、最終的な採用を決定するときに面接官の頭の中に思い浮かびやすくなります。
 
一歩引いて自分に合った企業か考える:パネルインタビューは、企業や社員のイメージをつかむ絶好の機会。面接では、人間関係やチームワークを分析し、企業文化を把握することが大切です。面接後は気が抜けてしまうかもしれませんが、振り返りの時間をとり、この仕事を本当にしたいと思っているのか、この企業は自分に合っているか、面接をしてくれた人たちと一緒に働く自分を想像できるか、自分自身に問いかけてみてください。
 
上記の対策は、パネルインタビューへの不安を和らげ、オファーへとつながる足がかりとなります。面接官と良い関係性を築くための綿密な準備やパネルインタビューは複数の面接官に圧倒される場ではなく、自分自身を評価してもらうまたとない機会。双方にとって有効な場にするためには、準備が肝心です。
 
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著者

トラヴィス・オールーク
ヘイズ・カナダ、プレジデント 
カナダの人材会社でリーダー職を歴任した後、9年前にヘイズに入社。入社後はカナダにおいて外部委託事業の確立や、人材派遣・契約社員紹介の部門立ち上げの支援に携わり、中心的な役割を果たす。テクノロジーへの造詣を生かし技術分野を担うほか、現在は金融サービス、エネルギー、鉱業、製造業、小売業、公共部門など幅広い業界に人材ソリューションを提供。
ACSESS(Association of Canadian Search, Employment, & Staffing Services)のトロント支部長、National Association of Canadian Consulting Businessesの理事。カナダのテレビ番組「On the Money」(CBC)「The Open」(BNN)「National News」(CTV)他、様々なニュースメディアにも出演。企業の社会的責任に対する関心が高く、Sick Kids Hospitalのトロントでの活躍を熱心に支援している。