「あなたを採用するメリットは?」厳しい質問こそ売り込むチャンス
面接で聞かれる質問の1つが、「あなたを採用するメリットは?」。あなたなら、この質問にどのように答えますか?この質問に上手く答えることができれば、面接全体がスムーズに進み、面接官もあなたの話に耳を傾けるようになるでしょう。あなたが最適な候補者であることを面接官に印象付けるためにも、こうした質問に対する心構えをしておくことが大切です。
では、シンプルで鋭く、かつインパクトの強い回答をするためには、どのような準備が必要なのでしょうか。今回のブログでは、対策方法を紹介します。辻褄が合わず、まとまりに欠けた返答をすると、面接官は早々にあなたに対する興味を失ってしまうかもしれません。そして、一度このような失敗をしてしまうと、後で取り戻すことは非常に困難です。
「エレベーターピッチ」のつもりで練習を
冒頭でもご案内しましたが、この質問をされたら、「自分自身を売り込むチャンス」と考えましょう。面接官に、あなたが最適の候補者であるという印象を抱いてもらうことに集中するのです。このとき最も効果を発揮するのが「エレベーターピッチ(エレベーターに乗っている短い時間でプレゼンすること)」の原則です。
バックグラウンドや経験、あなた自身についてアピールしたいことを「エレベーターピッチ」の要領で、簡潔にまとめておきましょう。ちなみに、「エレベーターピッチ」という言葉は、シリコンバレーのビジネスマンが、忙しい相手に対して、エレベーター内にいる30秒から60秒の間に効果的にプレゼンすることが求められたことに由来しています。あなたは、彼ら同様に短い時間で効果的に必要な情報を提供出来るよう準備しておく必要があります。
なぜあなたが最適の候補者であるのかーこれを明確に、自信を持って説明出来るよう、早い段階から「エレベーターピッチ」スタイルを取り入れて準備を進めましょう。
面接官を説得するために「3つの柱」を設定しましょう
「エレベーターピッチ」スタイルを成功させるためには、応募先企業にあなたを採用するべき理由を3点に絞って伝えることが大切です。一方、これらの理由には、強い説得力がなければなりません。面接官は、「3点だけでは物足りない」と思うかもしれませんが、冒頭で強力かつインパクトの強い理由を3つ伝えることが出来れば、面接官はあなたに興味を持ち、残りの時間で詳しく説明を求め、あなたのことをより深く知ろうとするようになります。面接の雰囲気も活気付くでしょう。
この「3つの柱」は、聞き手を惹き付けるために非常に効果的な方法として知られています。
- 面接官を説得し、印象付ける 上記の「3つの柱」の効用については、過去の研究事例でも裏付けられています。2013年に発表された、マーケティング・行動科学分野の大学教授2名による研究では、広告や街頭演説など、他者の意見を動かすことを目的としたメッセージなどでは、強く訴求するポイントを3点に絞ることで、説得力が特に上昇したことが分かりました。これが4点以上になると、聞き手はその内容を素直に受け入れなくなったり、当初好印象を抱いていてもこれが低下したりしてしまう傾向があることも明らかになっています。
- 面接官の記憶に残る また、他の研究では、聞き手にあなたのことを覚えてもらい、話した内容を記憶に止めてもらうためにも、「3つの柱」が有効であると判明しています。短期記憶について調査を行ったある科学者グループは、人間が短期間に記憶できる事柄は3つか4つ程度であり、5つ以上の記憶は難しいと語っています。フォーブス誌は、これについて次のように述べています。「会話やプレゼン、メールの中で人間が記憶できるのは、わずかに3つだけです。話のポイントを盛り込みすぎると、内容が複雑になり、聞き手は混乱してしまいます。聞き手を圧倒するつもりで多くのことを語りすぎると、却って逆効果になってしまいます」。
「3つの柱」は、数多くの政治家や著名人にも使用され、その力を発揮しています。2008年の就任演説で「Yes We Can」の3語を繰り返して使用したバラク・オバマ元米国大統領は、この手法を多用したことで知られています。 この他にも、英国のトニー・ブレア元首相の「education, education, education」(英国政府の喫緊の課題を訴えた公約演説)や、エイブラハム・リンカーン元米国大統領の「government of the people, by the people, for the people(人民の、人民による、人民のための政治)」の宣言などが有名です。
「エレベーター・ピッチ」と「3つの柱」を存分に活用しましょう
これまでの説明で、「エレベーターピッチ」や「3つの柱」のメリットについてはご理解いただけたと思います。次に、面接の準備に向けて必要なポイントをご案内しますので、ご参考までにお読み下さい。
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あなたがこの仕事に惹かれた理由は? あなたはなぜこの仕事や企業に惹かれたのですか?最初に応募を考えた理由を思い出してみて下さい。あなたのやる気やキャリア目標は、今回の応募にどのように繋がっているのですか?面接では、あなたの熱意をはっきりと伝えることが大切です。「Why should I hire you?(あなたを採用するメリットは?)」と聞かれたら、上記の質問に対する答えから切り出してみましょう。きっと、上手く行きます。
- アピールしたいスキルや経験を3点に絞りましょう あなたが今回の応募で採用担当者に伝えたいスキルや経験、成果を全てリストアップしてみましょう。このリストには、募集要項に記載されていた「ハードスキル」(コンピュータープログラミングや語学力)の他、コミュニケーションスキルやチームワークなどの「ソフトスキル」についても書き出して下さい。全て書き出したら、今回の面接でアピールする必要がないスキルを削除していきます。面接では、あなたのスキルや経験を全て答えるのではなく、あなたが自信を持って面接官の関心を惹くことが出来る3つのポイント(あなたの「3つの柱」)を訴えましょう。
- 有益な情報を、簡潔に まとまりのない話をだらだらと続けると、面接官の興味も失われていきます。曖昧な言葉を使ったり目的のない会話をしたり、分かりにくい理由を答えるのは止めましょう。重要なポイントを3つに絞る、という基本を忘れないで下さい。この効果は絶大です。
- 自分が話したいことよりも、相手が聞きたいことを意識する 面接官が聞きたいのは、あなたが応募先企業にどのように貢献できるのか、です。面接では、この説明に集中しましょう。あなたの未来の上司は、あなたの経験や資格、スキルを使うことでどのように会社の課題を解決出来ますか?
- 練習のしすぎに気をつけて 自信を持って本番に臨めるよう、ロールプレイなどで十分な準備をしておくことは大切です。しかし、練習のしすぎには気をつけましょう。質問への答えが、まるで機械の自動応対のように不自然な形になってしまっては逆効果です。面接官とのコミュニケーションでは、人間性を感じてもらうことが大切なのです。
「エレベーターピッチ」を取り入れると、以下のような回答になります
次に、「エレベーターピッチ」を使った模範解答例を紹介しますので、次回の面接の参考にしてみて下さい。以下の例では、「3つの柱」を分かりやすく覚えて頂くために、(1)から(3)の番号をつけてあります。
「私は、御社がこの業界のパイオニアとして、長期にわたって革新的なビジネスを展開していることに魅力を感じていました。ですから、今回の募集を知ったときは、大きなチャンスだ、と思いました。今回募集されているポジションは、私がキャリアの目標としている仕事ですし、御社で働くということは、市場をリードする企業で働くことでもあります。これが、今回の応募を決心した理由です」。
御社が私を採用するメリットは、次の3点です。
(1)まず、私には、チーム・マネジメントや、コーチングのスキルがあります。これらのスキルは、募集要項で御社が求めていたものでもあります。部下を励ましながら、業績の良いチームに育て上げた実績もあります。また、こうしたチームを育てることは、私のやりがいでもあると考えています。
(2)次に、私にはビジネスを先読みする力があり、御社の業績に貢献することが出来ます。過去には、私のチームが、主要製品の売り出し方を戦略的に変更したことで、わずか2週間の間に25%の売り上げ増につなげたこともありました。
(3)最後に、私は革新的でクリエイティブな考え方をするタイプです。現在は、変化への対応を急速に迫られる時代となり、誤った対応をすると会社が破綻してしまう恐れもあります。私のイノベーティブでクリエイティブな姿勢は、御社をこうした状況から守ることも出来るでしょう。
「あなたを採用するメリットは?」-こんな質問をされたらどうしよう、などと怯んではいけません。準備をすれば良いのです!この質問が飛んで来たら、あなた自身のスキルや経験をアピールする絶好のチャンスです。正しく答えることが出来れば、あなたは面接官の記憶に残る候補者になれるのです。
執筆者
Marcは2012年の初めに香港のリージョナルディレクターとしてヘイズに入社しました。2014年にはアジアにおけるヘイズ・タレント・ソリューション事業の責任者を任され、その後2015年にヘイズ・ジャパンのマネージング・ディレクターに就任しました。2015年にヘイズ・ジャパンのマネージング・ディレクターに任命された後は、あらゆる専門分野における日本事業の日々の運営と成長を担当し、正社員、エグゼクティブ・サーチ、派遣、契約、オンサイトのソリューションを提供しています。
マークは、継続的な成功の実績を持ち、英国、オーストラリア、ニュージーランド、アジアでのビジネスを率いて成長させてきました。リクルート業界で働く前は、マークは自動車業界で様々な営業およびマーケティング管理職を務めていました。彼はビジネス変革と変更管理の経験が豊富で、クロスファンクショナルチームの構築、開発、指導に長けています。マークは、ニュージーランドのリーダーシップ・インスティテュートの役員を務め、アシュリッジ・インターナショナル・ビジネス・スクールで戦略を学びました。