新しい仕事の時代における人脈作り
人脈作り、それは多くの内向的な人の心を怯えさせる言葉です。その理由は、人脈作りという言葉の意味を型通りに捉えている人が多いからです。例えば特定の場所で作業しながら、時間が限定された状況で強烈でカリスマ的な第一印象を与えるといったことです。これは現代の世界では人脈作りに対する非常に狭く時代遅れの見方です。
コロナ渦中にある今、大勢の人々と居合わせる可能性が低いのは言うまでもありません。では、仕事の新時代において、効率的で個人の目標と性格に合ったやり方で人脈作りを成功させるにはどうしたらよいでしょうか。
2014年、当時世界で初めて人脈作りの分野で教授となったジュリア・ホブズボームは、今なお共感を呼び、現実の問題に直結する、興味深い定義を提示しました。
「人脈作りは個人レベルで起こらなければならず、横方向に組織を越えて広がり、知識の流れを作り、情報を共有して、信頼とつながりを築かなければならない」というものです。
人脈作りに関するこの考え方は開放され共有された知識の流れを重んじます。あなたの経歴を発展させるための人脈作りに最も強力な基盤となるのは多くのスタッフを知っていることではなく、あなたが持っている知識を新しく画期的なやり方で共有し応用する方法を知ることです。内容に関する知識はかつてないほど容易に入手できますが、そうした知識の実用的な組み合わせや知識を利用して新しく個人的な価値を他者へもたらす方法を見出し、再現することはそれほど簡単ではありません。
特に直接人と会う機会が少ない状況で、効果的な人脈の作り手になるにはプッシュと同じくらいプルが重要です。プッシュ戦略はあなたがどれほど素晴らしい人であるかを他者へ伝え、あなたと共に時間を過ごす必要性を主張することです。プル戦略は人々が探し求めたいと思っている情報や価値を生み出し、その入手方法を確保することで人脈を作ることです。
例えば誰かがLinkedInに投稿し、自分がどのような人間か、どのようなことができるのかを発表したときに、あなたは興味を持つかもしれませんが、「それがどうしたというのか、どうして私が気にする必要があるだろうか」と思うこともあるでしょう。それにひきかえ、あなたの仕事に関連したデータの新しい評価の入手方法を紹介する投稿があったら、内容を読む可能性が高くなります。
誰かが時間をかけてアクセスする価値のある情報をあなたが生み出すとしたら、新しいつながりのための一連の基盤を持っていることになります。ある意味で、プッシュ型の人脈作りは販売のようであり、プル型の人脈作りはマーケティングに似ています。販売が悪いというわけではありませんが、すぐにそれとわかる人脈作りに大抵の人は敏感に反応し、抵抗するでしょう。
他者とつながりを持ち、人脈を築こうとする人は大勢います。興味がある人に対して何か伝えようとするとき、あなたを差別化するものは何かを検討する必要があります。また、あなたにとって持続可能な人脈作りの方法を見つけることも重要です。対面する状況では社交的自信がないというのなら、今があなたの時代かもしれません。
仮想的に人脈を作る方法
仕事の新時代において、リモートで人脈作りをするために以下を提案します。
- つながりを持ちたい人にとって関心または価値があると思われ、ソーシャルメディア・プラットフォームを介して共有できるものが何かについて考える。例として関連性あるいは重要な影響を示した、あなたのコメント付きの論説または研究記事などがあります。
- つながりを持ちたい特定の人々に働き掛け、受け手にとってどのような価値を持つ可能性があるのかを示さない一括投稿を避ける。具体的なニーズを検討したことを相手に示します。機会があれば、相手が何に興味を持っているか、仕事上の付き合いで評価するものは何かを尋ねます。
- 人脈作りの目標を自分自身で設定する。人脈を広げる中で何を達成しようとするのか、どのような人々と最もつながりを持ちたいのかを検討します。有意義な新しいつながりの具体的な目標を自分自身で設定します。
- 単にソーシャルメディアに頼らない。既に知っている人々、そうした人々を介して新しい人とつながりを得る方法について考えます。
- 自分に興味を持ってもらえるオンラインコミュニティやグループを探し、その中の人々とフォーラムなどで対話を始める。
ゴードン・ティンライン
ティンラインは、ベテランの(公認)産業・組織心理学者で、フリーランス(GT Works Psychology社)として活躍中。さまざまな産業分野や職業階層に対する知見が豊富で、警察機関や防衛機関、NHS(国民保健サービス)、金融業、サイエンス・エンジニアリング企業など、サービスを提供してきた組織や企業は広範に渡ります。
主に管理職を対象とした、健康の維持や心理的アプローチ、チームのパフォーマンス最大化に関する支援を行っており、産業・組織心理学で修士号と同等の資格を有しているほか、ウォーリック・ビジネス・スクールでも取得、最近ではキャリー・クーパー教授との共著、「The Outstanding Middle Manager」で、中間管理職を取り巻くプレッシャーや能力開発についても提言をしています。