「お客様の声」をこれまで以上に大切にすべき理由とは
新型コロナウィルス流行に端を発する危機的状況は、これまでの日常を一変させ、公私にわたる私たちの生活に大きな影響を与えました。かつての習慣や日課、行事などの在り方は、恒久的に変化してしまったと言っても過言ではありません。
この1年間に私たちはさまざまなことを経験し、これまで当然に享受してきたあらゆることの大切さを改めて実感するに至りました。私たちを取り巻く人間関係などもその一つです。
コロナ禍が浮き彫りにしたお客様との関係の大切さ
同僚やステークホルダー、そしてお客様-ビジネスで築いた他者との関係も例外ではありません。今回のブログでは、その中でも特に大切な、お客様との関係にについてお話ししたいと思います。
今回のコロナ危機の中で、お客様が私たちに期待することや求めるものは、十中八九変化しています。お客様はそれぞれが多様な課題を抱え、公私ともに著しい影響を受けるであろう変化に晒されました。今でもこうした課題や変化に向けて、対応を進めている最中かも知れません。コロナ禍収束後も、私たちはお客様を支援していく必要があります。そのためにも、お客様との関係の在り方を改めて見つめ直す時期なのではないでしょうか。
言を俟たないことですが、お客様と長く、深く付き合っていくことは常に重要です。お客様無くして私たちのビジネスが成立しないことに鑑みると、それは今後も変わらないでしょう。ですから、お客様が自社との間でどのような「顧客体験」をお持ちになったのかには、特に留意する必要があります。実際にある調査によると、80%のお客様が製品やサービスと同様に、その取引先との間にどのような体験を享受したかが重要であると回答しています。
周知のとおり、コロナ禍による変化や混乱が進行する中で、顧客体験の重要性は一段と増しています。しかし、新しい時代の突入と共に、お客様の期待や要求は著しく変動しており、適度な顧客体験を提供することは、さまざまな面で難化しています。
顧客体験を適切に提供していくためには、お客様との間に信頼とロイヤリティに基づいた良好な関係を育むことが大切です。お客様は、困難な時期に自分たちの味方になり、支援の手を差し伸べてくれた企業のことをよく覚えているものなのです。
新しい時代にお客様との関係を強化するために心掛けるべき4つのポイントとは
私はアジアを拠点に活動していますので、いち早く新型コロナウィルスの発生や、その後の経緯を体験することが出来ました。このため、その後ウィルスによる影響が世界各地で広がる中で、この体験で培った知見やアドバイスを他国の同僚に伝えていくことが出来たのです。危機発生時の早期段階でチームとしてどのように対応すれば良いか、また、お客様との関係を構築するために何が最善の方法なのかを今回の危機で見直すことが出来ました。
これから到来する新しい時代の中で、私たちはどのようにお客様との関係を改善していけば良いのでしょうか。これについて、私の考え方をいくつかご紹介したいと思います。
1. あなたの企業がお客様に提供している、独自のバリューを把握する
今回のコロナ危機は、今後もあらゆる業界に何らかの影響を与え続けていくでしょう。こうした潮目の中で、私たちの既存のビジネスは、その変革を余儀なくされる可能性があります。例えば、お客様の便宜向上に向けたサービスの全面オンライン化や、既存製品・サービスの刷新、新製品・サービスの導入などが考えられます。
ここで改めて直近数か月間の自社の動向を振り返ってみましょう。皆さんの企業は、お客様に独自の価値を提供することが出来ましたか?重要な目的を達成することが出来ましたか?お客様が抱える具体的な課題の解決を支援することが出来たでしょうか?皆さんが果たした仕事は、コロナ禍前の平時のものと何か違いはありましたか?また、お客様の経験に大きなメリットを与えることが出来たでしょうか?
一部の企業にとっては、何の変哲もない質問かも知れません。しかし、人生で最も困難な局面とも言えるコロナ禍の中で、自分自身の企業がお客様にとってどの程度重要な存在であったかを理解するためには、こうした問いかけが不可欠なのです。
また、これらの質問は、これまでの企業戦略を正しく評価するためにも役立つでしょう。今後、あなたの企業は重点分野を修正した方が良いと思いますか?お客様のパートナーとして、あなたの企業の価値は新時代において向上しましたか?製品やサービスの見直しや刷新は必要ですか?これまでは一つの製品やサービスを多数のお客様に展開することが出来ました。しかし今後はお客様個々の課題に合せた展開が必要になるでしょう。これを実現するためには、どのような取り組みをすべきでしょうか?
ヘイズは、ワークスタイルが変わり、オンラインへのシフトが進むにつれて、労働者が貴重なスキルを習得する機会を失いつつあることに気付きました。そこで、無償で利用出来るオンラインポータルサイト、「Hays Thrive 」を立ち上げ、新たな働き方が求められる時代に、労働者のスキル向上や新スキルの習得を支援するサービスをスタートしたのです。当サービスは、お客様が人材採用をするにあたり、あらゆるステージで役に立つものであると自負しています。採用・転職活動を休止中の皆さまにも、有効にご活用いただけるソリューションです。付言すると、こうした活動は、正にヘイズが実行の機会を伺っていたビジネスでもありました。
2. 企業としての価値観や目的を見失わない
危機の時代には、企業の目的に忠実であることが大切です。この目的に立ち返ることで、会社の存在意義や、自分自身の仕事の意義を見失わずにいられるからです。
皆さんの仕事には、それぞれ社会的な意義があります。お客様の支援や関係の強化、そして危機下で士気を維持するためには、自分自身が果たしている社会的意義を忘れずにいることが大切です。この時に真価を発揮するのが、企業がそれぞれ掲げている目的なのです。
また、お客様は、企業の価値観についても関心を寄せています。独立系リサーチ会社、Forresterによると、ミレニアル世代の70%、団塊世代の52%が商品やサービスの購入に際し、その企業が持つ価値観も考慮している、と答えています。つまり、企業の価値観は、お客様のブランド経験のみならず企業イメージにも影響を与える可能性があるのです。
ヘイズでは、過去数ヶ月に渡り十分な時間をかけて、企業としての価値観を見直しました。その中で、今回のコロナ禍において一際効果を発揮したのは、「Do the right thing(正しいことをする)」でした。これは、ヘイズのあらゆる価値観の基礎となるものです。何らかの決断を迫られたときは、北極星のように私たちを導き、私たちの良心が向かうべきところを教えてくれるのです。
ヘイズはあらゆる人々の成功と企業の繁栄を支援し、チャンスを創り出すことで生活の向上に貢献します。新型コロナウィルス流行当初、企業の採用活動は停滞し、転職活動も消極化していました。 そこで私たちは、その時点で出来るあらゆる支援を通してお客様やその社員の力になろうと決意したのです。当時は、従来型の働き方が変更を余儀なくされ、新たなワークスタイルの推進が求められていました。ヘイズは、自社が抱える専門知識を駆使して、お客様やその社員がこうした時代を乗り切るための支援を展開しました。まず、お客様が直面している課題の洗い出しです。想定されたのは、テレワークで働く従業員のマネジメント、テレワーク中のワークライフバランスのとり方、および心身の健康の維持などです。課題を特定した後は、このソリューションとなる話題を中心に、ブログやポッドキャスト、レポートや動画を配信し、お客様をサポートしました。
今回のコロナ禍において、皆さんの会社の目的や価値観は、皆さんを正しい方向に導くことが出来ましたか?従業員を力づけ、世の中やお客様のために何が出来るのかを思い出させてくれるものでしたか?改めて振り返ってみましょう。
3. お客様の話に耳を傾け、手を差し伸べる
お客様と対話するときは、終始ビジネスの話題にするのではなく、懐に飛び込む会話をしてみましょう。例えばお客様がどのような状況にあるか、また現在どのような課題を抱えているのかを電話で確認するだけで、皆さんの企業に対するイメージは大きく変わります。お客様が希望するならば、LINEなどのアプリや、電子メールを使用しても良いでしょう。お客様の話を傾聴し、今回の危機でお客様が経験した個々事情を把握しておくことは、非常に有効です。お客様のサポートやケアは適宜に行いましょう。
私自身の経験をお話しします。今回のコロナ危機でヘイズが切望したのは、お客様がどのような経験をしたのかを把握すること、そしてお客様に役立つ支援や助言を提供することでした。これに向けて私たちが取り組んだのは、お客様の現状確認だけではありません。市場の動きや他の顧客企業の考え方、それぞれの課題やハイブリッドな勤務体系に向けて各社がどのように対処しているかなど、お客様に役立つ最新情報を随時提供出来るような態勢を整えていたのです。ヘイズは、お客様との関係を築くにあたり、常に透明性を保ち、有益な知見を提供することで信頼関係を育んで来ました。これは、お客様との盤石な関係を構築するにあたりとても重要なことです。
また、数多くのお客様と対話を重ねるうちに、私たちの知見も広がり、広範な知識を共有することが出来るようになりました。結果的にこれはお客様にもプラスになりました。お客様はヘイズと接触するだけで、他社の動向を幅広くキャッチすることが可能になったのです。しかし、私たちの取り組みは、これで終わりではありません。コロナ禍がさらに進行すれば、お客様とのコミュニケーションは一段と重要性を増すでしょう。
製品やサービスが売れないことを理由に、お客様との定期的な対話を疎かにしてはいませんか?適切な知見や助言を提供していますか?お客様の課題を積極的に理解しようと努め、自分自身に何が出来るかを理解しようとしていますか?これらを見つめ直すことが大切です。
4. 心からの共感を伝える
今回のコロナ危機で、お客様は想像すら出来なかった難局への対処を迫られたことでしょう。また、難しい決断を余儀なくされたたり、大きく動揺する出来事もあったでしょう。お客様と接するときは、これらを念頭に置き、思いやりと真心を持ってコミュニケーションして下さい。マニュアル通りの対応や、誠意が欠如したコミュニケーションは、平時でも不愉快なものです。まして大きな課題や不安に苛まれている時期には、一層の注意が必要です。
お客様との関係強化を望むならば、共感と思いやりを示すことが大切です。前述したお客様への傾聴や現状理解の大切さは、この共感の土台となるものです。同じ人間としてお客様に共感し、お客様の個々の事情を理解し、真摯に気遣う姿勢でお客様に話しかけて下さい。ヘイズのCEO、アリスター・コックスは、自身のブログの中で、人間味のあるコミュニケーションが如何に大切であるかを訴えています。
皆さんは、お客様に誠実な関心を寄せていらっしゃることと思います。では、お客様との対話の中で、その姿勢を伝えるようにしていますか?お客様の現状理解に、時間や労力を惜しんだりはしていませんか?偏見や決めつけをしたりせずに、共感や思いやりのある人間的なコミュニケーションを心掛けていますか?これまでの経験を思い返してみましょう。
今回は、お客様とのコミュニケーションに大切な4つのポイントをご紹介しました。これらを参考に、コロナ禍でご自身の企業がどのような対応をしてきたか、大切なお客様との関係をどのようにマネジメントしてきたか、また、新しい時代にお客様との関係をどのように強化していくべきかを、ぜひ検討してみて下さい。
座して待っていても、世界やお客様がコロナ危機以前の姿を取り戻すわけではありません。世界は常に変化しており、お客様も進歩し続けています。私たちも共に変化していかなければなりません。今回の危機をきっかけに、お客様の声を尊重した経営判断にシフトし、もう一度自身の企業を立て直してみませんか。
ヘイズ・アジア、マネージング・ディレクター・アジア、
リチャード・アードリー
現在の職務に就く前は、2007年6月からヘイズ・アイルランドのマネージング・ディレクターに就任。アイルランドでの役割に加えて、リチャードは2013年から2017年まで英国&アイルランドのマーケティング・ディレクターを務め、直近ではヘイズUKのITとデジタルの専門性の開発の指揮を執っていた。また、ヘイズ・タレント・ソリューション事業にも幅広く携わっている。