ChatGPTが仕事を楽に?仕事での活用方法を解説

ChatGPTはさまざまな質問に対し、わずか数秒で文章を書きあげ、答えを提供してくれます。プログラマーのためにコードを作成したり、見出しのアイデアを考えてくれたり、曲の歌詞や短い物語を書くのに使ったりして楽しんでいる人もいます。
 
その評判や成功、精度の高さから、ロボットが人間の仕事を奪うのではないかという古くから議論を再燃させています。しかし、これほど簡単に素早く使えるのであれば、企業がロボットに頼らない理由はどこにあるのでしょうか?
 
生成AIの進歩は、2022年11月のChatGPT公開を皮切りに、わずか数か月間で多くの人の働き方を変えたのは間違いありません。2023年3月に発表されたGPT-4は、物事の理解力が向上しており、状況はさらに進むことが予想されます。2023年1月にヘイズがLinkedIn上で実施したグローバル調査では、ChatGPTに仕事を奪われることを心配している回答者は、33,000人のうち23%にとどまりました。調査の際に寄せられたコメントでは「ChatGPTは学習したデータに基づいてサポートし、情報を提供することを目的としたものです。その能力をどう使うかは、最終的には人間次第です」と述べる人もいました。
 
他の77%の回答者が正しいということではありません。GPT-4が生まれた今、今後の調査では人々のとらえ方に変化が見られる可能性は高いでしょう。ChatGPTがなくなるわけではありませんし、人間を追い抜くことはないかもしれませんが仕事で役に立つことは間違いありません。
 
今回は、生成AIの能力や限界、ビジネスへの活用方法を紹介します。
 

ChatGPTがすべての仕事を奪うわけではない

生成AIは確かに感銘を受けるもので、人間が求める仕事をしっかりとこなすことができます。しかし、すべての人間のスキルをすべて代替することはできません。ChatGPTが代替できないものが以下のスキルです。
 

・創造的・戦略的思考

ヘイズの最近のインタビューで、AIの第一人者で倫理学者のシェンリン・マシューは次のように語っています。「ChatGPTは、昨年のノートを見て教授を出し抜こうとしている熱心な学生のようです。しかし、教授のように賢くなることも、クリエイティブになることも、次のステップを考えることもできないでしょう」。
 

・常識

言語と心理学の専門家であるスティーブン・ピンカーが指摘するように、チャットボットはあらかじめ解決策が明確に示されていない場合には、論理的な結論へ人間のように導くことはできません。そのため、タスク管理への影響は限定的です。しかし、GPTを開発したOpenAIは「GPT-4は高度な推論能力においてChatGPTを上回る」と主張しており、常識を備えているかどうかが問題ではなくなる可能性があります。
 

・事実関係のチェック

ChatGPTのリサーチ能力に対抗して、Googleは2023年2月に独自のAIチャットボットを発表しました。しかし、このツールに誤った情報を生成して企業価値を1,000億ドル以上失うという失敗を犯してしまいました。
 

・人間味

初めて3D映画を観たときやタッチスクリーンのデバイスを使ったときの驚きを覚えていますか?多くの人が今、ChatGPTの能力の目新しさに興奮していますが、すぐにその性能に圧倒されなくなるかもしれません。ピンカーは、AIが作ったコンテンツに対して、人々が疑心暗鬼になったり、飽きてしまったりする可能性があると警鐘を鳴らしています。ヘイズが行った調査のコメント欄には、次のような意見がありました。「AIが人間らしいテキストや交流を実現するには道のりは長いでしょう。AIが生成したテキストから受ける違和感をなくすには、まだそれなりの人の手が必要です」
 
ヘイズのインテリジェント・オートメーション・ディレクターを務めるティム・オルセンは、最近の記事で次のように語っています。「AIが人間の仕事をすべて代替するようになるのかというと、そういうわけではないようです。ChatGPTのようなツールを適切に活用し管理するためにはまだ人間の手が必要であり、技術はまだ成熟していません」。GPT-4が出たばかりですが、OpenAIのツールがどのような進歩を遂げたのか、これまで同様の問題がまだ起きているのか、見ていきます。
 

ChatGPTのビジネスへの活用方法

確かに言えるのは、ChatGPTをはじめとする生成AIは、特に反復作業やテンプレート的な作業をサポートする能力をもっているということです。2023年2月にヘイズがLinkedIn上で実施した調査では、14,000人の回答者のうち、23%がChatGPTを仕事で使用した経験があり、30%が使用を検討するとしています。生成AIの歴史が浅いことを考えるとかなり高い数字であり、ChatGPTを使用する人が増えていることがわかります。
 
ChatGPTを活用できる職種は主にどのようなものがあるか、その一例を紹介します。
 

・コピーライター

ChatGPTの主な使用例として注目されているのは、文章の生成です。特定のテーマやストーリーに沿った文章をリクエストすると、数秒後には大量の文章を生成します。GPT-4は25,000字以上の文章も処理し、ウェブページのコンテンツにも活用できます。
 
しかしながら、事実関係や整合性の確認のために人間の手は必要です。また、特定の形式の文章の生成も可能ではありますが、表現の一貫性の確保も問題の1つです。コピーライターにとって、同じ言葉を何度も使うことは効果的ではない限り避けるべきことであり、ChatGPTはそれを理解できません。生成AIは書き手ではなく、あくまでペンに過ぎないことを理解する必要があります。
 

・マーケティングエグゼクティブ

生成AIはクリエイティブになることは難しいですが、すでに存在するクリエイティブなものを模倣することはできます。短い文章やイベントの説明文を書く必要がある場合は、ChatGPTが役立ちます。
 

・法務

ある英国の法律事務所では、すでに契約書の作成にChatGPTをベースとしたチャットボットを活用しています。法律事務所は、人間の代わりに導入したのではなく、むしろ人が時間を節約してより重要で高度な仕事に集中できるようにするためだと強調しています。
 
適切なパラメータや指示を与えれば、特に文章作成は人間と遜色ない作業ができます。しかし、十分な確認が必要です。
 

・ソフトウェア開発者/エンジニア

ChatGPTはコードの作成にも活用可能。OpenAIはその機能を向上させるためにプログラマーを集めていると言われています。経験豊富なプログラマーの間では、経験の浅い人でも簡単な指示でコードを書けるようになるのではないかと懸念されています。しかし、しっかりと訓練と経験を積んだ専門家より効果的なコードを書けるわけではありません。
 
一方で、バグの修正には有用であることは証明されています。エラーの原因を特定する労力を考えると、ChatGPTは問題解決にかかる時間を短縮できる可能性があります。
 

・リサーチャー

ChatGPTは、Googleや他の検索エンジンに比べて簡潔でわかりやすい形で情報を提供し、質問に対する直接的な回答が得られます。必要な情報を見つけるために、無関係なリンクを訪ねてまわる必要はありません。
 
デメリットとして、前述の通り、生成AIの検索結果に誤りがある可能性は否定できず、必ずしも情報の出典を示せるとは限りません。
 

ChatGPTを使用する際に覚えておきたいこと

ChatGPTや他の生成AIに適応し、活用方法を学び、日常的な業務にどう活かすことができるか理解する必要があります。生成AIは常に進歩を続けており、その有用性を理解するのに時間はかからないでしょう。
 
しかし、人間のもつクリエイティビティやイノベーション、戦略的思考は代替することはできません。人間のもつ強みを活かすことで、ChatGPTをはじめとする生成AIに取って代わられることなく、役立つツールとして活用し、時代の先端を行くことができます。現在、生成AIが人間の仕事をいかにして奪うかという話題が中心ですが、生成AIが生み出すポジティブな側面にも目を向けられます。
 
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著者

トラヴィス・オールーク
ヘイズ・カナダ、プレジデント 
トラヴィス・オールークは、カナダの人材会社でリーダー職を歴任した後、9年前にヘイズに入社。入社後はカナダにおいて外部委託事業の確立や、人材派遣・契約社員紹介の部門立ち上げの支援に携わる。当初はテクノロジーへの造詣を生かし技術分野での活躍が目立ちましたが、現在は金融サービス、エネルギー、鉱業、製造業、小売業、公共部門など幅広い業界に人材ソリューションを提供している。
オールークは、ACSESS(Association of Canadian Search, Employment, & Staffing Services)のトロント支部長、National Association of Canadian Consulting Businessesの理事にも就任。カナダのテレビ番組、「On the Money」(CBC)や「The Open」(BNN)、「National News」(CTV)他、様々なニュースメディアにも出演しており、企業の社会的責任に対する関心が高く、Sick Kids Hospitalのトロントでの活躍を熱心に支援している。