多様な世代を擁するチームのマネジメントにおける3つのポイント

オフィス(オンラインミーティングでも)を見渡せば、「沈黙の世代」や「ベビーブーム世代」が「Z世代」と一緒に働いているのが目に入ります。
 
OECDのデータによると、2050年までに20~64歳の人口に対する65歳以上の人口は2人に1人になる見込みです。同調査では、高年齢労働者の雇用が増えれば、世界中の生活水準が「大幅に改善する」とも述べられています。
 
企業にとっても大きなメリットがあります。調査では、50歳以上の従業員割合が10%高い企業は生産性が1.1%高いことが示されています。年齢の多様性は知識の維持や人材パイプラインの強化につながり、オペレーションの継続性を改善します。
 
人材戦略に年齢の多様性を上手く組み込むことができているでしょうか?今回は、各世代のスキルや経験を活かす3つのポイントを紹介します。
 

世代分類

現在企業では5つの世代が働いており、働く人々の年齢はこれまでにないほど多様化しています。
 
世代は現在、大きく以下の5つに分類されています。
 
  • 沈黙の世代:1928~1945年生まれ
  • ベビーブーム世代:1946~1964年生まれ
  • X世代:1965~1980年生まれ
  • ミレニアル世代:1981~1996年生まれ
  • Z世代:1997~2012年生まれ

多世代で構成されるチームのメリット

幅広い年齢や人生経験など多様性のあるチームが企業にもたらすメリットは明らかです。蓄積された知識とエネルギーが交わる環境を作り出すことができれば、クリエイティビティやイノベーションが生まれるのです。
 
ある調査によると、多様な年齢層から成るチームでは知識が積極的に共有され、その結果、問題解決や意思決定も促されることがわかりました。しかし「根本的に共感し合えない」場合、ネガティブなステレオタイプに頼ってしまうことになり、世代間の対立も増加します。
 
上記の世代分類は「ビジネスの世界で広く知られており、社会的に誤解されやすい概念」です。
 
企業は従業員間を隔てる世代の違いをどのように克服できるでしょうか?多様な世代を擁するチームのマネジメントにおけるヒントをまとめました。
 

1. 世代間の隔たりを忘れ、ライフステージに集中する

まず重要なのが、各世代に対する既存のステレオタイプを捨てることです。人生のあり方はこれまでにないほど多様化していますが、「世代のタグ」はその多様さと逆行し年代別に画一的なグループ分けをしようとするものです。
 
平均寿命が延びたことにより、働く人はキャリアを通じてより多くのライフサイクルステージを経験するようになりました。それゆえ企業は、より多様な個人的・職業的なニーズを認識し、支援する文化を形成していくことに注力する必要があります。
 
ヘイズ・EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)にてエンタープライズソリューションのマネージング・ディレクターを務めるジョン・マナルは、下記のように付け加えています。「世代構造に伴う凝り固まった固定観念や偏見を打破することには、非常に価値があります。異なる世代から成るグループや企業は、すべての行動や意思決定の中心に“人”を据える必要があります」
 
「もちろんこの取り組みには労力を要します。長年頼ってきた指標はニーズや課題の特定を容易にはするものの、もはや目的に合っていないのが現実です」
 
企業にとって朗報なのが、世代間の垣根の払拭は、分断よりも共通点の方が多いということです。マッキンゼーの調査によると、すべての年齢層の従業員が仕事に対して求めるものが同じであり、退職や転職の理由も似ていることがわかりました。たとえば退職理由として、Z世代とヘビーブーム世代の両方がキャリアアップやキャリア開発を望めないことをいちばんに挙げています。
 
企業は、すべての世代や従業員にとって重要な要素に焦点を当て、価値提案をする必要があります。実際にある調査では、人材獲得戦略において最も重要なのは、給与に代表される基本的要素および意義のある仕事かどうかといった動機づけ要素だと結論付けられています。
 
報酬やキャリア開発、柔軟性、働く目的・意義は、今日の人材獲得・開発・定着戦略において不可欠なものとなっています。
 
 
 
 

2. チーム内の心理的安全性を高める

敬意と信頼は、チームの原動力となります。年齢だけでなく性別や人種、宗教、雇用形態が多様化していくなかで、心理的安全性を高めることが今まで以上に重要になってきています。
 
チームの多様性はイノベーションの強化やパフォーマンスの向上と相関関係にあると言われています。しかしある調査では、多様なチームは同質的なチームと比べてパフォーマンスが低い場合があります。同じバックグラウンドをもつ人々は、どのように行動するか、何を優先するか、どのようなペースで仕事をするかという規範や前提を共有しているからです。
 
チームメンバーのバックグラウンドが異なる場合、当たり前の習慣が崩壊することがあります。信頼関係を築くためには、以下の3つのポイントが重要です。
 

異なる視点を大切にする

メンタルウェルビーイングや女性の健康など、タブーとされてきた話題が頻繁に議論されるようになりました。しかし、ごく自然に自分の経験を話せる人がいる一方で、職場で自分をさらけだすことに慣れていない人がいることも忘れてはなりません。
 
異なる視点への理解は、上記のような話題について職場で気兼ねなく話すことができるかに影響します。無意識の偏見を打破し、異なる考え方を受け入れることができるように、チームを促す必要があります。
 

より良く、頻繁なコミュニケーションを

オンボーディングを活用して新入社員にアンケートを行い、どのようなコミュニケーション方法を好むかチームの期待を把握し、意向を尊重します。
 
データを活用して、無意識の偏見がないかも確認します。たとえば、若いメンバーはインスタントメッセージングアプリやメールといったデジタル主体のコミュニケーションを好むと考えがちです。しかし情報過多の時代には、協業や知見の共有を求めて電話や対面での交流を大切にする人も存在します。
 

成果を祝う

チームの成功を祝う時間をつくることも大切です。事業目標を達成に導く部門横断的な協力について評価する際には、多様性がもたらしたメリットに注目します。
 
異なる人生経験が、顧客が直面している課題を理解するのに役立った瞬間はありませんでしたか?また、既存のやり方が新しいチームメンバーの新鮮な考え方によって改善されたことはありませんでしたか?これらを振り返り、チームの成功を称え合う機会を設けることが、信頼関係を築くうえで重要です。
 

3. あらゆる段階でトレーニングを提供する

高い成果を出すチームでは、知見はさまざまな方向に行き交っています。組織のリーダーは、年代を超えて従業員全体で知見が共有されるよう機会をつくりだす必要があります。
 
知見の共有にはメンター制度やリバースメンタリング制度も効果的です。メンター制度やリバースメンタリング制度とは、異なるライフサイクルにある人たちがペアを組み、専門知識や経験を共有することを目的としたプログラムのことです。この制度には、新しい技術を使いこなす技術的なスキルや、ステークホルダーの期待値を管理するなどのキャリア目標の達成に必要なソフトスキルも含まれます。
 
また、ライフサイクルのどの段階でも学習が必要であることを、組織のリーダーは忘れてはなりません。テクノロジーは目まぐるしく進化し続け、スキルの寿命は大幅に短くなりました。人材不足に対処するために、働く人々はリスキリングやスキルアップに今まで以上に取り組む必要が出てきています。
 
ある調査によると、年齢は従業員のリスキリングのためのトレーニングを受ける意欲には影響しないことがわかりました。しかし、トレーニングにどのように取り組み、実施するかは、学習意欲に影響を与える可能性があります。
 
それに伴い「採用 – トレーニング – 配置モデル」(HTD)を含むより形式的な学習・開発プログラムを採用する企業が増えています。
 
HTDモデルでは、候補者を職歴ではなくスキルに基づいて採用します。あらかじめ定められた契約期間で入社する前に、給与を受け取りながら体系的なトレーニングと評価プログラムを受けられます。
 
HTDモデルは主に若いメンバーのポテンシャルを引き出すために用いられてきましたが、経験のある人材に対しても活用できます。
 
「まずは教育を受けてから」ではなく企業側からのトップダウンで実施することにより、働く人はキャリアが不安定な時期の雇用の安定性を守りながら、決められた職務に合わせたトレーニングを受けられることを意味します。
 

世代間の隔たりを埋める

世界中で人材不足が叫ばれ、生産性が低下するなか、リーダーはチームの能力を最大限に引き出すという大きなプレッシャーに直面しています。その中心になる人材戦略が、従業員がもつ学習経験の活用です。
 
ヘイズでエンタープライズソリューションのCEOを務めるナイジェル・カークハムは、下記のように述べています。「働く人々は、参加可能なプロジェクトやそれらの経験から得られる知識に関心をもっています。企業はブランド力だけに頼るのではなく、優秀な人材に対して付加価値を示す必要があります。」
 
年齢の多様性は、他社にはない強みになります。ヘイズのエンタープライズソリューションは、正社員や派遣・契約社員の採用アウトソーシングやオーダーメイドのアドバイザリーサービスなどさまざまなニーズにお応えできます。ご相談は下記よりお問い合わせください。
 
 
 
 
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