円滑なコミュニケーションとは?即効性のある10のポイント

コミュニケーション能力は、仕事を円滑に進め、キャリアップを図るうえで、欠かせない要素のひとつ。今回は、イギリス出身で、ニュージーランドやオーストラリア、香港、日本など、大陸や言語を超えてキャリアを築いてきたマーク・ブラジが、自身の経験をもとに、円滑なコミュニケーションの秘訣を語ります。
 
1998年、個人として、またビジネスパーソンとして成長するために故郷のイギリスを離れ、地球の裏側のニュージーランドに移住しました。その後12年間、ニュージーランドやオーストラリアで勤務。そして、慣れ親しんだ南半球を離れ、香港のビジネスの牽引・拡大を担当することになりました。
 
アジアでのまったく新しいライフスタイルに適応できるか、最初は確かに少し不安でしたが、得られるものは多いと考えていました。
 
直面するだろうと考えていた問題のほとんどは、一般的なコミュニケーションに関連するものです。母国で上手くいったアイデアが異国の地で通用するのか、現地のクライアントとのコミュニケーションは上手くいくのか、自分のリーダーシップを見直す必要があるのかなどを想定していました。
 
その異動をきっかけに、コミュニケーション能力を高めるためにどうすればいいのかを考えるように。私が実践したポイントを10項目に整理しました。
 

まずは現地に溶け込む

 
「コミュニケーション能力の向上は、長期的にキャリアを成功させるための鍵」
 
東京で働き、暮らしていたとき、コミュニケーションの問題は、日常生活をするうえで大きな悩みでした。上述の通り、生まれ育った国を離れて海外で働いたことが多くありますが、日本に来たときに初めて、効果的なコミュニケーションがいかに重要であるかを実感しました。
 
日本は、他の国のように西洋の影響を大きく受けていないため、文化面での適応が必要です。仕事では外国人や英語が堪能な日本人に会うことが多かったのですが、一般的な日本人は英語をほとんどあるいはまったく話せません。そのため、日常生活で今まで経験したことのないやりとりも多く発生しました。
 
西洋以外の国で生活することの難しさは、言葉以外にもあります。他人に不快感を与えたり、恥をかかせないたりしないように、守るべき習慣が存在します。たとえば、人前で鼻をかむのは失礼なだけでなく、不快に受け取られる可能性があります。
 

自分の潜在能力を引き出す

優れたコミュニケーション能力を身に着けることは、長期的にキャリアを成功させる鍵となります。アイデアを出し合うことや対立を避けること、交渉、相手のモチベーションを引き出すことに苦労しているようでは、業界のトップまで上り詰めることはできません。
 
コミュニケーションには、さまざまな側面があります。パーソナルコミュニケーションには、言語によるものと非言語によるもの(ボディランゲージ)、第3者を通じたものの3つがあると考えており、その3つのコミュニケーション方法を使いこなすヒントを以下に10項目、挙げていきます。
 

1. 聞く

当たり前のことですが、周りにはこの基本さえも注意する必要のある人が1~2人はいませんか?人の意見を聞かない同僚との会話ほど、嫌な気持ちになるものはありません。
 
コミュニケーションは、対等である必要があります。それぞれの人が平等にコミュニケーションすることで、対立を避けることができるだけでなく、リスペクトを得ることができます。人の話を聞いてこそ、何かを学ぶことができるのであって、話すことはすでに知っていることを明確に伝える手段でしかないのです。
 

2. ボディランゲージに気を配る

非言語コミュニケーションは、コミュニケーション全体の大きな割合を占めています。ある有名な研究は、コミュニケーションの55%がボディランゲージであると示しています(38%が声のトーン、7%が話す内容)。
 
どのような割合であろうと、ボディランゲージは、相手に与える印象に大きく影響します。話す内容とボディランゲージが矛盾しないようにすることが大切です。たとえば、チームに新しいスタッフを迎え入れるとき、腕や足を組まないように注意する必要があります。
 
「コミュニケーションの55%は、ボディランゲージ」
 
よく実践しているのは、電話をしているときに机の上に鏡を置き、自分のボディランゲージを確認することです。誰かに見てもらわなくても、自分が笑顔で話しているか確認できます。
 

3.文化の違いに敏感になる

グローバル化が進み、世界中のビジネスパーソンと頻繁に連絡を取るようになった今、他の文化圏で不適切とされるエチケットを常に確認しておくことが大切。
 
アラブ首長国連邦では、女性が手を差し出す前に握手をするのは失礼にあたり、私が住んでいた中国や日本では、あいさつでキスをすると現地の人はびっくりします。しっかりと下調べをし、社会的なモラルに反さないように注意して行動する必要があります。
 

4. 冷静さを保つ

ストレスや不満が溜まっているときは、難しい問題や状況を解決しようとしないことが重要。相手を誤解したり、後悔することを言ってしまったりする可能性があるからです。
 
冷静さを意識するこのアプローチは、メールにも応用できます。特に、怒りや拒絶など感情的なメールを書いてしまったときは、下書きとして保存しておき、冷静になってから見直すことにしています。結果、下書きを削除してしまうこともしばしば。
 
緊張する状況で話をしなければならない場合は、状況から感情を取り除き、自分がどう感じるではなく、何を言われるかに集中します。個人的な判断は、いったん脇に置いておくことが大切。そのときは相手を好きになれないかもしれませんが、プロフェショナルであり続ける必要があります。
 

5.できる限り対面で話す

ヘイズのグローバルCEOであるアリスター・コックスは、ブログ「Why I Think Face-To-Face Is Best」(英語)にて、ベストなコミュニケーション方法は対面だと述べています。隣の席の同僚にはメールではなく、しっかりと会話して業務を行うことが大切。
 
メールでは誤った解釈をされてしまう可能性がありますが、直接会って話すことで、声のトーンやボディランゲージによって誤解を防ぐことができます。
 
「コミュニケーションは、対面が最も効果的」
 
 

6.フィードバックを提供し、意見を素直に受け止める

フィードバックを提供することはチームリーダーにとって重要な役割の1つですが、リーダーでなくてもそれは有効な手段になりえます。同僚が良い仕事をしたことを周囲に伝えるのは、職場のコミュニティ意識を高めることに役立つからです。
 
オープンで透明性の高い職場が理想であり、批判を受けたとしても、素直に受け止めることが大切。相手は、自分を助けようとしてくれているのです。
 

7.タイミングに気をつける

気が散っているときは、適切にコミュニケーションを取ることができません。コミュニケーション能力を最大限に発揮するには、集中した状態である必要があります。たとえば、上司に昇給をお願いしたいなら、立ち話をしているときに声をかけても望んだ結果を得ることはできません。
 
適切な場面やタイミングを選ぶ必要があります。対面、グループミーティング、Eメールのどれが一番適しているか、状況を把握することが大切です。
 

8.相手を知る

相手は、口頭での説明より視覚的な情報を好むかもしれません。たとえば、前四半期の業績について報告する場合、一度に理解できる数字には限界があるため、集中力が切れてしまわないようにできるだけ視覚的かつ双方向なプレゼンテーションにします。
 
これはリーダーにとって重要なポイントであり、結果的に優れたマネジメントにつながります。チーム全員を同じように扱うのではなく、モチベーションを高めるために必要なアプローチは、それぞれ異なります。
 
「チーム全員を同じように扱うことがベストだとは限らない」
 
加えて、相手がどのようなテーマやシチュエーションに精通しているか把握することも大切です。話すテーマについてあまり知らない人に対しては、背景となる情報を説明することが配慮です。
 

9.自信をもって話す

威圧的にならないように注意しながら、自信をもって話すようにします。ぼそぼそと話すと、相手に不快感を与えてしまう可能性があります。特に、面接のときははっきり話すように意識することが大切です。
 
自信をもって話す方法はさまざまですが、「自信を高め、周囲をポジティブにする7つの方法とは」で詳細を説明しています。自信をもって話すことは想像しているほど難しいことではありません。自信のなさや自己肯定感の低さを克服するには、自信があり社交的であるかのように振る舞うだけでもいいのです。
 
「自信のなさを克服するには、自信があるかのように振る舞う」
 

10.ユーモアを使う

ユーモアは、緊張した状況を和らげたり、相手と打ち解けたりするのに非常に有効。退屈なやり取りになりかねない状況でも、相手の関心を引くことができます。.
 
しかし、時と場合には要注意。プレゼンテーションで面白いエピソードを披露すれば、聞き手の関心を引くことができますが、クライアントとのミーティングで何度も冗談を言うのは不適切です。
 

10のポイントがもたらす効果

適切なコミュニケーション方法について正しく理解していなければ、これほどキャリアを積み上げることができなかったと思います。最初の面接に合格することから、年次財務報告書を会社に提出するまで、コミュニケーションはキャリアの成功に欠かせません。円滑なコミュニケーションのために技術的に意識できることが多数あり、実践するだけで面接やチームマネジメント、キャリアップにつながっていくのです。日々の会話ややり取りを意識して改善していくことで、日々の業務からキャリアアップまで良い結果を得られる助けとなります。
 
 
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著者

マーク・ブラジ
リージョナル・マネージング・ディレクター
 
2022年にアジアのリージョナル・マネージング・ディレクターに就任。
2012年に香港のリージョナルディレクターとしてヘイズに入社。2014年には、ヘイズ・タレント・ソリューション事業の責任者を担当し、2015年にヘイズ・ジャパンのマネージング・ディレクターに就任。正社員や役員、派遣社員、契約社員の紹介、オンサイトソリューションなど、あらゆる専門分野における日本事業のオペレーションと成長の責任を担った。
イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、アジアでビジネスをリードし、成長させてきた実績があり、幅広い業界と職種に関する専門知識を有している。人材業界の前は、自動車業界にてさまざまな営業やマーケティングのマネジメントを務めていた。ビジネス改革とチェンジマネジメントの経験が豊富で、機能横断的なチームの構築、育成、指導に長けている。また、ニュージーランドリーダーシップ研究所の理事を務め、アッシュブリッジビジネススクールで戦略を学んでいた。