仕事を選ぶ基準は報酬だけ?
乗り気であるか否かに関わらず、転職のオファーを受けたとします。その仕事の内容は、現在の仕事とほぼ同様なのに、転職先の報酬は現在の報酬よりもはるかに高額です。報酬だけを見れば、どちらを選ぶかは一目瞭然です。しかし・・・
その選択に疑問の余地はないのでしょうか?決して「Yes」とは言い切れないと思います。報酬以外にも検討しなければならない重要な点が沢山あるからです。それらには、以下のポイントも含まれるでしょう。
この転職によってあなたが希望し、必要としているキャリアアップは実現出来そうですか?
キャリアアップにつながる機会は何かを冷静に考えてみましょう。現在の職場と転職先の職場の双方について検討して下さい。現時点では転職先の給与の方が高額かもしれません。しかし、あなたは今後数年間、同じ仕事をして同額の報酬をもらって、新しいスキルを身に着けないまま過ごすことに違和感を感じませんか?
重要なのは、最後のポイント、つまりスキルについて考えることです。ニーズが高い仕事は、技術の進歩にあわせて変化しています。キャリアアップを目指すのならば、常に新しいスキルを身に着けておく必要があります。「第4次産業革命」と呼ばれる昨今にあって、継続的にスキルアップを図ることは非常に重要です。継続的に学ぶことを上層部が奨励し、文化として根付いている職場で働くことは、確実にあなたの糧になります。これは、当初の提示報酬が高額か否かに関わらず重要なことです。
転職先をリサーチしたり面接を受けていたときのことを思い出してみましょう。あなたは、そのとき、転職したらその職場で自分は何が出来るかを考えていたのではありませんか。それを思い出してみましょう。新しいスキルを習得するチャンスはありそうですか?上司は、あなたをサポートしてくれそうですか?LinkedInや転職先のホームページで在職中の社員の談話などを読んだとき、どのように感じましたか?彼らはその企業でプロとして成長し、キャリアを向上させていたでしょうか?
あなたをプロとして成長させてくれるのは、どちらの仕事ですか?それに基づいて考えると、あなたのキャリアを長期的に考えた場合に、どちらを選択すれば有効なのかが分かってきます。
会社の価値観や目的に強く共感することが出来ますか?
忘れられがちですが、これは非常に重要なポイントです。当初は高い報酬を魅力的だと感じるかもしれません。しかし、長期的な視点で考えると、自分が働く会社のビジョンや目的に共感し、自分の仕事がそのビジョンや目的にどのように関与するのかを十分に納得しておく必要があります。
素直な気持ちで考えてみましょう。あなたが惹かれたのは、転職先の活動ですか?それとも、報酬だけですか?転職先をリサーチした結果、興味が湧いてきて、仕事に俄然やる気になっているのであれば、問題はありません。これに条件のよい報酬が加われば、転職しない理由はないでしょう。
本当に幸せになれそうですか?
最後に、最も重要な質問です。転職したら幸せになれると思いますか?もちろん、将来を予測することは出来ませんし、実際に仕事をしてみなければ幸せになれるかどうかは分かりません。しかし、事前に良い兆候や悪い兆候を感じていたのなら、良い判断が出来るかもしれません。
面接中に、上司になるかもしれない人に対して不安を感じたり、オフィスに入ったときに張り詰めたような空気や不快な雰囲気を感じたりはしませんでしたか?心の中では不採用になることを望んでいたものの、オファーを受けたら予想以上の報酬が提示されて断れなくなった、ということはありませんか?
逆に、面接前からその職場に対して良い印象を抱いていましたか?事前に調べた結果、その企業文化がオープンで心地よいものであることが分かり、面接日に訪問したところ社員や上司になる人たちにも同様の雰囲気を感じたのかもしれません。面接自体もあなたにとって楽しいもので、そこで働く自分の姿を想像して幸せになったのではありませんか?
いずれにせよ、あなたは職場で大部分の時間を過ごすことになります。ですから、もしその職場に満足出来ないのであれば、仕事のパフォーマンスだけでなくあなたの生活全般にも大きく影響することになります。
どのような決断をしようと、それはあなた次第です。しかし、高額の報酬が魅力的に映るのは、比較的短い間だけです。冷静に考えてみましょう。その仕事で、昇進のチャンスはありそうですか?目的意識を持つことができそうですか?希望する生活を手に入れることは出来そうですか?魅力的に見える条件は、すぐに色褪せていきます。報酬のための転職が、自分のキャリアにとって最適な選択なのか、改めて確認する必要があるでしょう。
著者
ニック・デリギアニスは1993年にヘイズに就任。ヘイズの運営を担当するディレクターをはじめ、ビジネスの様々なコンサルティングやマネジメントを担当してきた。2004年にはヘイズの取締役に任命され、2012年にはオーストラリア・ニュージーランド担当のマネージング・ディレクターに就任。ヘイズに入社する前は、人事管理とマーケティングの経験があり、心理学の正式な資格も持っている。