【トップ対談】ビジネスの成長を促す人材戦略:キューネ・アンド・ナーゲルの人材採用やダイバーシティ、デジタル化への取り組み
キューネ・アンド・ナーゲル株式会社 日本法人 代表取締役社長 セドリック・デュロン ヘイズ・ジャパン マネージング・ディレクター グラント・トレンズ

世界の物流をリードするキューネ・アンド・ナーゲル。海上・航空・陸上貨物の輸送やコントラクトロジスティクスなど幅広いサービスを提供し、革新的かつ持続可能な物流ソリューションを通じて、人とモノをつなぐという強い決意をもって物流の世界を切り拓いています。キューネ・アンド・ナーゲル(日本法人)の代表取締役を務めるセドリック・デュロン氏に、ヘイズ・ジャパンでマネージング・ディレクターを務めるグラント・トレンズが、採用戦略やダイバーシティの重要性、デジタル化の取り組みについてお話を伺いました。
 
 
 

 

市場で優位に立つための採用戦略

グラント: キューネ・アンド・ナーゲルは、世界の物流市場をリードする存在として知られていますよね。
 
セドリック: 航空・海上貨物の輸送では、確かに世界第1位です。また、陸上輸送やコントラクトロジスティクスの分野でも、市場で確固たる地位を築いています。日本では40年以上前から拠点を構えており、日本企業の国内および世界での事業拡大を支援すべく、事業・サービスの強化に努めています。
 
グラント: 重要なポジションの採用に取り組んでいるとお聞きしました。現在の状況はいかがですか?
 
セドリック: 社全体として、現在エキサイティングな局面を迎えています。2023年の初めに、ロードマップ2026とビジョン2030を発表し、大きな節目を迎えました。特に日本での事業については、サステナブルな未来を育むことに注力しつつ、サプライチェーン市場での存在感を増し最も信頼されるパートナーになるための戦略的方針を策定しました。“Living ESG(ESGの実践)”は、ロードマップ2026における4つのマイルストーンの1つです。このマイルストーンは、お客様の環境目標の達成や経済的に実行可能かつ拡大縮小可能な脱炭素ソリューションの導入の支援に加え、DE&I(ダイバーシティ、エクエティ、インクルージョン)の推進によって社会を発展させるという当社の取り組みを示したものです。このコミットメントは、私たちを魅力ある企業へと押し上げると信じています。
 
2023年8月現在、キューネ・アンド・ナーゲルの日本法人で働く従業員は、25か国以上の国籍やさまざまな業界経験を有しています。20年以上にわたり物流分野でリーダーを務めてきた経験から、人材採用においては、業界に特化した経験よりも適切なマインドセットや姿勢がより重要であると学びました。業界経験の有無にかかわらず、優秀な人材を探すように積極的にチームに働きかけています。このようなアプローチを取ることで、人材不足下においても優秀な人材を獲得できると考えています。
 
キューネ・アンド・ナーゲルで働くことは、素晴らしい体験です。グローバルな環境と国際的な仕事をする機会に加え、有意義な影響を促進する当社のコミットメントは、従業員が働くやりがいを得るうえで重要な役割を果たしています。私自身、自分の仕事に大きなやりがいを感じており、共に働く人にもきっと同じように感じてもらえると思っています。業界の最前線に立ち続けるために、私たちは一貫してダイバーシティを支持し、能力に基づいて昇進させるというコミットメントを堅持しています。この戦略は、活気に満ちた包括的な職場環境をつくる証となっています。
 
グラント: コロナ禍には、多くの企業が採用を停止しました。しかし状況は変わり、現在の採用状況は好転しています。日本では“仕事は一生もの”というような終身雇用に根差した風潮が根強いため中途採用が難しいという現状がありますが、セドリックさんがおっしゃったように実績に基づいて評価する企業も増えており、転職に後ろ向きな考え方も変わりつつあります。
 
セドリック: そうですね。キャリアにおけるやりがいや成功のために、明確なビジョンと目的に基づいて新しい視点を取り入れる人が増えています。終身雇用を手にするだけでなく、キャリアの満足や成功を得ることが目的となりつつあります。さらに、ワークライフバランスや個人的な充実感、ウェルビーイングを重視しているため、仕事のやりがいを優先することも多いといえます。金銭的な報酬や雇用の安定性よりも、自分の興味や価値観、希望に合ったキャリアを求めているのです。新型コロナウイルスの感染拡大は、人命を救ううえでロジスティクスの役割が非常に重要であることを示しました。これは採用活動にも良い影響をもたらしました。この1年半、人材市場では、社会にポジティブな影響を与えることができるロジスティクス分野への関心が高まっています。
 
グラント: ヘイズのコンサルタントは、特定の業界や職種に特化したチームに分かれています。確かな専門性が優れた人材プールの構築につながり、人材不足に直面している分野において、転職検討者やクライアントに最高のサービスを提供することができます。ヘイズの最大の強みは、日本に250人いるコンサルタントが築き上げたネットワークです。
 

あらゆるダイバーシティが重要

セドリック: ダイバーシティは、キューネ・アンド・ナーゲルの成長の柱の1つ。先ほども話したように、当社では25か国の国籍の従業員が働いており、まさに国際的な企業です。国籍だけでなく、性別のダイバーシティについても大切にしています。文化的背景や年齢、性的指向、そのほかさまざまな要素における多様性と包括性を受け入れることで、より強くより賢くなり、間違いなく職場がより楽しいものになると信じています。
 
グラント: ダイバーシティについては、社内のすべてのレベルで実現されていすか?管理職に日本人はいますか?
 
セドリック: はい、あらゆるレベルでダイバーシティを確保しています。マネジメントチームにおける日本人の割合は53%、残りの47%が外国人です。私の目標の1つは、外国人のマネージャーも残しつつ、マネジメントチームに次世代の日本人を(大多数として)入れていくことです。
 
グラント: 管理職レベルでダイバーシティが確保されているのはすばらしいことですね。
 
セドリック: 性別のダイバーシティは、もちろん私たちが常に念頭に置いていることですが、それだけで選考するわけではありません。最も優秀な人材を採用します。現在の日本のトップマネジメントチームの男女比は半数ずつです。
 
グラント: 最も優秀な人を採用すべきというのは賛成です。経歴、文化、年齢、性別などあらゆる側面でダイバーシティをもつべきであり、それも非常に重要なことです。また、使う言葉も大切です。日本語や英語といった言語のみならず、求人で用いる言葉や表現もまた、応募者の性別に影響します。心理学的に、使用する言葉によって特定の要素をもつ人材を引き寄せてしまう可能性があります。
 
セドリック: 採用活動やマーケティング、コミュニケーションの際には、インクルーシブなアプローチを徹底しています。日本にいると「すみません、ここは日本なので」という言葉をいまだに耳にします。日本にいるからといって変化に抵抗する理由はありません。私たちは、組織を徐々に変革しており、すでに良い結果を目にしています。性別は最も認識しやすい多様性ですが、年齢や国籍、障がいなどさまざまな側面があります。これらの多様な側面において、ポジティブな従業員体験を促進することで、当社の成長を真に促進することができます。
 

デジタル化の取り組み

グラント: オフィスに素晴らしいテクノロジーを導入しているのですね。固定電話が見当たらないのですが、クラウド電話を使っているのですか?
 
セドリック: 2021年の初めに着任した際、同僚に書類にサインするように頼まれました。私が最初に決めたことは、紙の使用をできるだけ減らすことです。サインが必要な文書もありますが、社内文書はすべてデジタル化する方針を決めました。そのほか、紙の封筒も廃止しました。2021年3月に開始した電子請求書のプロジェクトでは指揮を執りましたが、当時は請求書のわずか12%しか電子化されていませんでした。これは大きな課題でした。私は社長としてこの移行を顧客に伝え、12月までに電子請求書の導入率は96%に増加。同様に、固定電話の廃止も決定しました。
 
グラント: 非常に素晴らしい取り組みですね!ヘイズでも、同じような取り組みを行っています。先日、ついに固定電話を撤去する指示を出したところです。2年にわたるプロジェクトでした。
 
セドリック: 私たちはDXを進めています。固定電話の廃止に加え、オフィスにデジタル受付システムを導入しました。来訪者は情報を簡単に入力でき、従業員にも迅速に通知され、従業員は受付エリアをビデオで確認することができます。また最近では、FAXやプリンターに関する決定をしました。これらの機器の使用を70%削減し、長期的に紙の消費量を削減する方法について膨大な知見を提供するプリンター管理ソリューションを導入しています。この方法により、いつでも文章を印刷し、回収できるようになりました。
 
グラント: それはとても良いアプローチですね。ヘイズでは毎年、人材や企業の動向を調べる調査をしています。転職先を選ぶ理由として、新しいテクノロジーを取り入れることができるかを挙げている人材もいます。デジタルやサステナビリティの観点から、将来に向けて準備をしている企業は転職検討者にとって非常に魅力的です。
 

キューネ・アンド・ナーゲルの差別化戦略

グラント: デジタル化やタイバーシティのほかに、採用の際に重視する点は何ですか?
 
セドリック: 先ほど述べたように、起業家精神のようなメンタリティとマインドセットをもつことが非常に重要です。キューネ・アンド・ナーゲルはマトリクス組織であり、縦割り的な考え方を防ぎ、上手く連携できるように設計されています。人事部部長の坂本は、キューネ・アンド・ナーゲルで働くことについて「数か月前に入社するまで、部門を超え、事業部を超え、地域を超えて学ぶ機会がこれほど豊富な会社に出会ったことはありませんでした。ミーティングのためにさまざまな国を訪れ、貴重な知識を吸収し、専門的なネットワークを広げる機会に恵まれました。本当にすばらしいのは、このような学びの機会がバックオフィスにまで広がっていることです」と語っています。
 
キューネ・アンド・ナーゲルでは、キャリア開発のためにグローバルな社内異動を積極的に推進しています。日本人でも複数名が他のアジア太平洋の拠点に異動し、違う職種に就いています。これは優秀な人材にとって非常に魅力的な点だと思います。従業員はグローバルな環境で、自分が世界的なネットワークの一員であることを実感しながら働くことができるのです。
 
セドリック: 最近ある面接で、社長を連れて顧客訪問したことがあるかを尋ねたところ、「一度もない」という答えが返ってきました。キューネ・アンド・ナーゲルではしばしば行っていることであり、社長でさえ、社内のあらゆるレベルの業務に積極的に携わっています。
 
グラント: 一部では、外資系企業は成果主義でそのなかでやっていける自信がないと考える人もいます。そのような人たちにどのような言葉をかけますか?
 
セドリック: 1人の力では成功できません。成功は個々の力の結集によりもたらされるものです。私たちの使命は、社内のすべての人がこの会社で成功できるようにすることです。以前はトップダウンだった業績評価のプロセスも変更しました。今年初めて、従業員1人ひとりが自分の目標を決め、トレーニングを通じてマネージャーが導くようにしました。適切な従業員体験がなければ、企業は成長することができません。全員が共通の目標に向かいながら共に喜びを分かち合えるインクルーシブな職場文化の醸成に努めています。
 

求めるスキル・能力

グラント: ビジネスの成功のために、今後の人材に求めるスキル・能力は何ですか?
 
セドリック: キューネ・アンド・ナーゲルは、より国際的な環境になっています。そのため、グローバルな視点をもちながら、日本文化に精通している人材を高く評価しています。面接では、その人の考え方をよく見極め、明確なビジョンや人生の目標をもっているか見ています。
 
グラント: 非常に重要なポイントですね。
 
セドリック: 同時に、デジタル化の流れはますます加速しています。私たちが日本で成功するには、チャレンジやDXを受け入れるマインドをもった人材が必要です。専門的な経験もさることながら、デジタルの世界を理解し、さまざまなデジタルツールを受け入れることを求めています。繰り返しにはなりますが、私たちが求めるマインドセットをもっていることが重要です。
 

イノベーションと成長を促進するトレーニングとオンボーディング戦略

グラント: 先ほど、必要なスキルをもちあわせていなくてもポテンシャルがある人材との面接には前向きであるとおっしゃっていましたね。そのような人材に対する具体的な社内トレーニングプログラムはありますか?
 
セドリック: すべての新入社員にはバディがつきます。ポジションによっては、メンターや日本以外からのサポートを提供することもあります。もちろん、1人ひとりのニーズに合わせて、さまざまなトレーニングプログラムや教材を提供しています。
 
新しいメンバーを迎え入れる際には、オンボーディングの一環で歓迎のメールを送っています。そこには私や新チームからのメッセージ、会社の戦略などが掲載されています。また、入社前に会社について理解を深めてもらえるように楽しいクイズも用意し、新入社員が会社に早くなじめるように最大限のサポートをしています。
 

積極採用中

採用に関するお問い合わせはYuta Ozawaまでご連絡ください。
 
 

 

キューネ・アンド・ナーゲル株式会社

代表取締役社長
アジアで28年以上のキャリアをもつ。香港で物流の営業としてキャリアをスタート。すぐに管理職に昇進し、ワインとスピリッツの物流に精通。2005年、キューネ・アンド・ナーゲルの日本法人にリージョナル・マネージャーとして入社。その後、中国およびシンガポールに異動し、セールス・マーケティングのシニアバイスプレジデントに。2021年1月、日本法人の代表取締役社長に就任。
 
 
 

ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパン株式会社

マネージング・ディレクター
2006年ヘイズの英国本社にてキャリアをスタートし、会計と金融業界を担当。2010年、ヘイズ・シンガポールに異動。2019年1月、リージョナル・ディレクターに就任。シンガポール支社のマネジメントレベルとして2年間勤務。2021年2月、ヘイズ・ジャパンのマネージング・ディレクターに就任。