ヘイズ、2022年の転職市場における求人トレンドを発表
外資系人材紹介会社ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパン株式会社(本社:港区、マネージング・ディレクター:グラント・トレンズ、以下ヘイズ)はこの度、転職実績動向の分析を行い、2022年の国内転職市場における10大トレンドを発表しました。
日本は経済活動を徐々に再開させ、回復と成長を見据えた取り組みを強化しています。
その結果、全ての業界ではありませんが、多くの企業で採用者数の大幅な増加が予想されています。
2022年の日本国内転職市場における求人トレンドトップ10予測
1.サイバーセキュリティ人材に需要が集中
新型コロナウイルス感染拡大に伴うサイバー攻撃の増加により、あらゆる企業がセキュリティ問題について真剣に取り組まなければならなくなりました。多くの企業がコンプライアンスの基準を満たすことや、顧客の信頼維持のために、セキュリティ対策強化や情報セキュリティポリシーの見直しを進めています。来年には、ベンダーやサービスプロバイダーへの需要が高まるとともに、セキュリティエンジニアや、セキュリティ事故対応を専門とするインシデントレスポンスエンジニア、セキュリティリーダー、情報セキュリティマネージャーといった既存職種の需要も増加していくことが考えられます。一方で、セキュリティ脅威について情報を収集・分析をする脅威インテリジェンスアナリストや、電子機器から犯罪行為の証拠となるデータを収集・分析するデジタルフォレンジックアナリスト、開発者や運用担当者と緊密に連携しながらセキュリティを維持するDevSecOpsエンジニアといった新しい職種も、より一般的なものとなるでしょう。この分野での転職には、セキュリティ情報イベント管理(SIEM)の経験や、技術的な職種以外では公認情報システム監査人(CISA)、セキュリティプロフェッショナル認定資格制度(CISSP)、公認情報セキュリティマネージャー(CISM)などの資格を持っていると有利になります。
2.データセンター市場の成長は続く
日本でデジタル化が進み、さらに多くの企業がクラウドサービスを利用するようになったことから、データセンターの需要も増加しています。また、多くの主要企業が日本で強力な存在感を確立しており、その需要は留まることを知りません。そのため、データセンターの建設・管理を行うコンストラクションエンジニアやファシリティエンジニアとしての経験を持つ人材が求められています。しかし、国内市場では、この分野で高いスキルを持つ人材が不足しており、採用レベルを上げるためには外国人人材の就労ビザの規制緩和を待つ必要があるでしょう。
3.金融・保険業は回復から成長へ
ポストコロナ時代の金融サービス企業は、2022年には回復から成長へと向かうでしょう。金融機関や銀行ではデジタル・モバイルプラットフォームへの投資が増加し、フィンテック分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速が期待されます。これにより、DXスペシャリストやITビジネスアナリスト、アプリケーションプロジェクトマネージャー、WEBディベロッパー/アーキテクト、ビックデータ、クラウドスペシャリストなどの役割を担う人材が求められるようになるでしょう。
他にも、監査やカバナンス、コンプライアンス、サイバーセキュリティの採用が活発になると期待されています。また、経済の見通しが明るくなってきていることから、ブロックチェーンや仮想通貨の専門家の需要が高まり、投資銀行におけるフロントおよびミドルオフィスの求人も増加するでしょう。保険業界では、契約内容や保険料を審査するアンダーライターや、損害保険に関わる損害等の査定を行う損害鑑定人、営業職の採用も増えると考えられます。
4.あらゆる業界で営業職への需要が増加
新型コロナウイルス感染拡大が落ち着き、国境が徐々に再開されていくことは、今後一年間、営業の分野において大きな後押しになるでしょう。複数の業界で営業機能の回復が見られ、多くの企業が営業チームの強化のために人員補充や新規採用を行っています。小売店やレストランの再開も増えていることから、小売やラグジュアリー、食品・飲料業での営業職の採用も増加するでしょう。
また、企業は顧客基盤を急速に拡大・強化を続けており、事業開発やアカウントマネジメントのスキルを持つ人材の需要も高まることが予想されます。ITやオンラインサービス業界では、経験や交渉力、クラウド、SaaS、IaaS、PaaSなど新しい技術の知識を持つ人材は、高い給料を得ることができるようになるでしょう。さらに、スタートアップでは、ストックオプションや大幅な昇給が期待できます。
5.ライフサイエンス業界での応募要件緩和
ライフサイエンス業界は、大規模な感染拡大にも対応できることを証明しましたが、人材に対する需要は市場が供給できる量をはるかに超えています。人材不足の背景には、伝統的に学歴のハードルが高いことがあります。しかし、人材プールが縮小していることから、必須要件を一部緩和する動きが見られます。
特に、メディカルサイエンスリエゾン(MSL)の場合は、医者とともに、科学的根拠を共有し、満たされていない医療ニーズを探すような業務に携わることが多いため、生命科学の博士号を取得している必要がありました。しかし、現在では、MSLの求人でも、医薬情報担当者(MR)やコマーシャルセールスの経験を持つ求職者であれば、応募できる求人も徐々に増えています。MSLの需要が高まるにつれ、このようなケースは増えてくることが予想されます。
6.多くの企業がコーポレートサービスの採用を強化
来年への見通しが楽観的なことから、会計士や財務計画・分析のマネージャー、法務スペシャリストの採用が増えるでしょう。これまで法務業務を外部に委託していたり、法務チームを日本以外のオフィスに置いていた企業が、現地人材の採用や社内法務チームの設置を進めています。移動制限が緩和された後もこの傾向は続くでしょう。また、需要増加が見込まれる金融やIT業界では、コーポレート部門や業界経験を持つ人材が求められるようになります。
また、企業が予想されるニーズに対応するために、専門的な役割を持つチームを拡大しており、マーケティング分野も成長を続けています。インターネット上で商品やサービスを売買するEコマースや、見込み客を獲得するリードジェネレーションのスキルを持つ人材が求められるようになるでしょう。デジタルマーケターは、コンテンツ制作やデジタルメディアのプランニングから、リードジェネレーションやSEO、Google広告キャンペーン戦略を行う役割に変わっていくことが予想されますが、重要な人材であることは変わりません。また、広報/コミュニケーションの分野では、デジタルPRやESG(環境・社会・ガバナンス)、コーポレートコミュニケーション、危機管理広報に重点が置かれるようになるでしょう。
7.顧客対応のない職種で在宅勤務の採用が増加
新型コロナウイルスの影響に伴う国境閉鎖により、多くの業界で国内競争が強まっていますが、特に会計・財務の分野で競争が激化しています。求職者からは15%以上の昇給が報告されており、国境が再開されるまでこのような傾向は続くでしょう。そのため、適切な人材を探すことも難しくなってきています。直接顧客と顔を合わせる必要がないバックオフィスのポジションを持つ企業は、事業を展開している都市部以外の場所でも人材を探し始めています。そのような人材に対しては、まずはリモートで仕事を始め、最終的には引っ越しを検討してもらうようにしているそうです。給料よりも、都市部以外からでも働くことができるなど柔軟な働き方を優先する人が増えてきており、このような方針は求職者にとって魅力的なものとなるでしょう。
8.オフィスの分散化とシェアサービスの台頭
求職者にとって柔軟な勤務体系が最優先事項となってきていることから、企業は勤務方針の調整を余儀なくされています。実際に、経理・財務や法務関連の企業では、競争力を高めるために柔軟な勤務形態に提供することに力を入れている企業が増えています。ライフサイエンス業界のMSLのような現場で働く職種でも、オンラインやリモートでの勤務が推奨されています。しかし、エンジニアリングなどの一部の分野では、ビジネスの性質上、毎日オフィスで働くことが奨励されており、中には週に数日はオフィスで働くことを義務付ける企業もあります。
とはいえ、企業がオフィスの有効活用を考え、中心地からの移転やオフィススペースの縮小を行っているのは明らかです。オフィス勤務に戻るよう促すため、新年にはオフィス環境を刷新し、よりオープンで従業員に優しいデザインにすることで、従業員の体験を向上させることができるかもしれません。また、サービスオフィスやシェアオフィスの利用が復活する可能性もあります。これが実現すれば、建設やオフィススペースの計画、移転などを行うプロジェクトマネージャーの需要が高まる可能性があります。また、ファシリティマネージャーは、ビル管理システムや持続可能性への理解を深め、現場とリモートの両方で施設を管理することが求められるようになるでしょう。
9.ジュニアレベルの需要は増加しているが、依然として経験が重要
エンジニアリングやサプライチェーンの業界全体で、企業が組織に新しい風を吹き込むために、多くのジュニアレベルの人材を採用し始めています。また、日本語と英語が堪能であることも、これまで以上に重要な要素になっています。優れた外国語能力を持つエンジニアや購買・調達担当者は、必要な経験を持っていれば、他の求職者より優位に立つことができるでしょう。
ジュニアレベルの需要が高まってきてはいるものの、企業は経験が少なく現場での研修が必要な人材を採用することに躊躇しているのが現状です。製薬や食品・飲料、日用消費財(FMCG)などの各業界では、新型コロナウイルスの影響で業務や収益に大きな支障が出ています。そのため、生鮮食品や医薬品など低温管理が必要な商品を所定の温度に保ったまま配送するコールドチェーン・マネジメントの分野で即戦力となる人材が求められています。
10.再生可能エネルギー分野での求人が増加
これまで日本は、2030年までに電力供給に占める再生可能エネルギーの割合を2倍に増やすことや、2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロを実現することなど、意欲的な目標を発表してきました。これを受けて、ESG(環境・社会・ガバナンス)分野への投資が活発化しており、さらなる成長への期待と人材需要が高まっています。特に、需要が増加しているのは、再生可能エネルギー事業を行う企業のエンジニアリングや建設プロジェクトマネジメントです。
再生可能エネルギー分野以外では、金融業界がESGデータアナリストやプロダクトスペシャリストの採用を進めています。また、ESGの計画を戦略的に実行していきたいという顧客を持つ企業では、コンサルティング業務が増加しています。需要が急速に高まっていることから、ESGに関連するスキルを持つ人材が不足することは避けられないでしょう。しかし、ESGに必要なスキルは他の分野でも役に立つものが多く、この新しい分野でキャリアを積みたいと考えている方はすぐに行動をするべきです。