レポート
DNA シリーズ
Xiaoguang Sun
中国アリババエンターテインメントグループ、
Youku HR担当バイスプレジデント
"The best way for HRDs to continue to develop is to observe, study and ask questions from those around you."
これまでの経歴
Xiaoguangは大学で人事を専攻したものの、この分野で仕事をするようになったのは、ほんの偶然からでした。1990年半ばの時点で人事はまだ比較的新しい専攻科目で、彼も同級生も、後に人事の仕事が中国でここまで注目されるようになるとは思いもしませんでした。そのため、この時期に人事を専攻した学生の多くは、卒業後、人事とは全く関係ないジャンルの仕事に就いていたのです。
大学卒業後、初めて得た肩書は国際貿易オフィサーでした。しかし中国では2001年前後に貿易業界の業績が悪化し、これをきっかけに大手の多国籍企業への転職を考え始めました。Epson Chinaから研修&人材育成担当スーパーバイザーのオファーを受け、条件の良さからたまたまこの仕事に就くことになったのですが、結局、その後長年にわたって人事の分野でキャリアと積んでいくことになったのです。
Xiaoguangが初めてHRDという地位に魅力を感じるようになったのはEpsonで働いていた時でした。人事部門での彼の担当は、人事部門が組織の中でどのような役割を担い、各事業部門にどのように付加価値を提供しているのかを理解するために必要な場面に遭遇する機会を与えてくれました。すぐに、自分が会社に付加価値をもたらすことのできる絶好のポジションに置かれていることに気付き、人事担当者としてキャリアアップを目指したいという自分の気持ちを確認したのです。
Epsonの後、彼は有名多国籍企業で昇進して行きます。EricssonではシニアHRディレクター、HR戦略責任者、タレントアクィジション責任者、戦略的人材企画責任者と要職を歴任しました。
次にMars Inc.に移り、シニアHRディレクター、センターオブエクセレンス責任者と人事関連部門のトップの地位に就きました。人事の分野の経験が14年を過ぎた2015年4月、彼はさらに成長しつづけたいと考え、世界で最もエキサイティングで活力に満ちた多国籍企業の1つ、アリババグループに転職します。ここで激務をこなす傍ら、現在彼は四川外国語大学の客員教授まで務めています。
実践経験を積む
Xiaoguangは情報通信、FMCG、ITとさまざまな業界でキャリアを積んできました。業界をまたいだ転職が不利に働く職種も多い中、人事担当者に関してはそうではないと彼は思っています。
「異なる業界で働いた経験は、HR分野では間違いなくプラスになります。HR部門を率いていく上でカギになる専門知識や能力は、どの業界でも通用するからです。人事に携わるものにとっての障害と言えば、企業ごと、会社ごとに異なる文化やペースやパーソナリティの違いです」
HRDにとって、社内のさまざまな部署でどのようなことが起こっているのかということも含め、企業が実際にどのように運営されているのかを理解することが絶対に不可欠であるとXiaoguangは考え、その姿勢を貫いてきました。「組織の内側を十分に理解することによってHRDの仕事はやりやすくなり、会社の基盤を固めるリーダー育成プログラムなど、戦略的なプログラムの立案や制定などの質を高めることができます。さらに、社内の他部門の内情に精通していれば、企業戦略の立案にも加わることができます」
後輩たちへのアドバイスの言葉として、HRDを目指す人は若いうちに業界経験を積んでおくべきであり、後々、そのことが非常に重要な意味を持ってくると彼は言います。「そうした経験を積んだ年月が昇進していくための基盤となり、現場での仕事に携わることでキャリアアップのチャンスを見いだすことができます」
周囲の人たちから学ぶ
Xiaoguangは、自分自身を成長させるためには、常に好奇心を持ち、自分の周囲にいる人やネットワークから学ぶ姿勢を持ち続けるべきだと考えています。「HRDとして成長し続けるためには、周りの人達を良く観察してそうした人たちから学び、疑問があれば積極的に聞いてみることが最も良い方法です。」例えばAlibabaには多くの優れた人材がいて、そうした人たちは、かつて、新規チームを立ち上げた経験を持っています。このような人たちがどのようなきっかけで行動を起こしたのか、自分の目で直に確かめることができるのです。
彼はこれまで人事に関する講演を数えきれないほど行ってきました。講演には幅広い業界からの出席者がおり、人脈を広げる絶好の機会にもなりました。その結果、様々なバックグランドを持つエグゼクティブ達と出会いうことができました。そうした人たちの間で、成功するビジネスの創出方法について、意見は往々にして異なります。こうした交流を通じて、さまざまな考え方についての洞察を得たことで貴重な知識が身に付いたと感じています。
幅広い人脈を持っていることの大切さの例として、彼が最後に挙げたのは、業界に幻滅していたある時期のことでした。その時に同僚からアドバイスを受けたのです。具体的には、今から10年後、あるいは15年後に自分がいる場所について、計画を立ててみるべきだと言われたのです。「そのアドバイスに従ったことで、再びやる気が出て、物の見方が変わりました。この時を境に、HRの分野でのキャリアアップを追求するようになりました」
HRDとして成功するために必要なスキル
Xiaoguangは、HRDになりたいと思う人は誰でも、強力なリーダーとしての資質と卓越したビジネスマインドを持っていなければならないと考えます。「私の場合、これまでに在籍した企業において、それぞれの業界でどのような事業展開をおこなっているのか、しっかりと把握することができ、必要な資質を身に付けることができました」
さらにHRDは、例え評判が悪くても、社内で好意的に受け入れてもらえなくても、ぶれることなく決断できる勇気がなければなりません。もし周辺にいるすべての人の要求を満たしたいと考えるような性格なら、あくまで波風を立てないようにするでしょうが、そうなった時点でプロフェッショナルとしてのあなたのキャリアの成長に歯止めがかかってしまうでしょう」
XiaoguangがHRDとして成功するために必要なスキルとしてもう一つ挙げたのが、ものごとを大局的に捉える能力です。HRDは経営陣や取締役の利害と従業員の利害とのバランスを取る必要があります。彼の場合、長期的に見て、決定がこの先の会社の成長にどのような影響を与えるかという点に着目したアプローチを採ります。そうすることで、あらゆる方面の関係者の利害をもっとうまく調整できる体制が整います。
ワークライフバランス
Xiaoguangの労働時間は、時には週70時間~80時間にも達することがあり、家族と過ごせる時間があれば、できるだけ大切にするようにしています。しかし、実のところ、Alibabaのような多国籍企業で重要な地位を維持するためには、仕事の大変さはある程度、仕方がないことだと思っています。「HRDの魅力の1つが、人のキャリアを形作る力があることです。そしてHRDになって最も良かった点は、自分で自分の行く末を切り拓いていく力が得られることです」