インサイドストーリー : 自動車産業編(2019年)
日本の自動車産業が世界屈指の技術力を有していることは、長期にわたり周知の事実です。
日本の自動車ブランドといえば、トヨタ、日産、ホンダ、スバル、スズキなどがすぐに思い浮かぶでしょう。これらのブランドは世界中に浸透し、多くのユーザーに愛されてきました。一般社団法人日本自動車工業会がまとめた「THE MOTOR INDUSTRY OF JAPAN 2018」によると、自動車の生産台数は過去最高を達成していますが、これも各メーカーのブランド力によるものです。
この結果、自動車製造およびその関連産業の総就業者数は539万人に上り、日本の総就業人口およそ6,530万人のうち8.3%を占める割合となりました。
自動車産業は、生産技術の急激な発達により、必要となる人材も変化しています。ユーザーは、自動運転技術のほかに費用対効果の向上や省エネの推進も求めており、メーカー間での次世代技術をめぐる競争は激化しています。
これを背景に、自動車産業では製造とオペレーションを担うことができる人材への需要が急増しています。特に採用需要が伸びている職種には、乗用車向けDAS Validation Engineers (バリデーションエンジニア)、System Engineers (システムエンジニア)、Mechanical Engineers (メカニカルエンジニア)などがあげられます。
人材不足により、自動車関連の製造・オペレーション経験のないエンジニアの採用も増加
技術的スキルや経験、関連資格を持つ候補者への需要が高止まりしている一方で、採用担当者が理想的と考えている人材は、ハードスキルとソフトスキルの双方をバランスよく備えた人物です。これには高い論理的思考力、問題解決能力、前向きな姿勢による意欲の高さはもちろん、優れた分析能力やコミュニケーションスキルも含まれます。
また、外国人材の採用も積極化しており、こうした人材の日本語能力の評価対応も進んでいます。日常業務の中で日本の顧客と接することが頻繁に求められるため、製造・オペレーション部門の人材も日本の職場特有の文化的な背景や習慣に精通することが求められています。世界中のステークホルダーとの密接な協力が求められる製造・オペレーション部門での実力発揮を望む人材にとって、語学力は非常に重要なスキルと言えます。
スキル不足への対応に向けてD&Iに注目
国内での人材不足は、国内の自動車メーカーにとって課題の一つになりつつあります。ブルームバーグの報道によると、高齢化が進む日本の就業人口は800万人の減少が見込まれており、このため新卒者やエントリーレベルのプロフェッショナルの不足は更なる深刻化が予想されています。
これに加えて、大学生は卒業後の進路として金融やソフトウェア設計など自動車産業以外の専門性分野を目指す傾向が強まり、自動車産業の製造・オペレーション業務への関心は著しく低下しています。こうした趨勢を受けて、自動車メーカーは女性の採用を推進しています。これは従来の採用慣習には見られなかった動きです。
日本の自動車産業のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に対する取り組みは、他の国内産業に比べて先進的です。D&I推進の必要性に対する理解は進んでいるものの、実際に行動に踏み切った企業は多いとは言えず、これが雇用者と求職者間の機会逸失につながっています。こうした趨勢は最新のヘイズ給与ガイド にも反映されており、従来から低迷していた女性管理職の割合(2018年は22%)は、2019年になると19%まで低下しています。
自動車産業の製造・オペレーション分野の人材に有利な現在の雇用市場
現在、同分野の採用活動は売り手市場にあり、求職者には有利な状況であると言えるでしょう。有能な製造・オペレーション人材には、自動車産業での経験の有無に関わらず、多数の好条件が提示される時代である、とヘイズのエキスパートは伝えています。こうした優秀な人材は、高額な給与の他にフレックス労働やヘルスケア・医療関連サービス、年金、住宅手当など福利厚生条件についても有利に交渉を進めることができます。
自動車産業の人材は、機械学習など産業内での技術発展に常に目を向け、競争力の維持に努めることが必要です。CNNが報じたように 、「自動車設計は今後20年間で一段と進化していくことでしょう。それは過去50年間に遂げた進歩を凌駕するものになります。日本は、コネクテッドカー、燃費、自動運転など新たな需要を開拓できる絶好のポジションにあると言えます。」
本レポートに関する詳しい情報や、求職活動、採用ニーズについてのご相談は、ヘイズ・ジャパン、製造・オペレーション担当マネージャーHiroaki Takahashi (hiroaki.Takahashi@hays.co.jp)まで。