レポート
DNA シリーズ
Mohamed Hafeel
Vice President & CIO, Japan Regional Services, Asurion, Japan
スリランカ出身のMohamed Hafeel氏は日本在住15年。現在、デバイスプロテクションとプロアクティブなテクニカルサポートサービスのリーディングプロバイダーであるAsurion ジャパンリージョナルサービスのバイスプレジデント兼CIOを務めています。CIOになることなど考えてもみなかったというHafeel氏が現在の地位に就くまでの道のりは実にユニークなものです。
CIOへの道
スリランカの学校を出たHafeel氏は大型クルーザーの船員となり、アメリカにたどり着くまでに40カ国以上を訪れ、世界中の島々を巡りました。船上で働く間、初めてのパソコンを購入し、エレクトロニクス製品をいじることに情熱を傾け始めました。元々、機械類の分解や修理に興味を持っており、学生時代にはラジオや時計の修理に夢中になったり、家族や友人のために電気関係の修理を趣味で引き受けたりしていました。クルーザーでも自ら進んで船内のコンピュータシステムのサポートや保守作業を引き受け、やがてこの情熱を仕事として活かすチャンスがあることに気が付きました。
船員として各国を渡り歩いていた当時、拠点はフランスに置き、そこで日本人女性と結婚しました。その後2人は日本に移り、Mohamedはテクニカルサポートコンサルタントの職を得ます。小さな会社だったために、さまざまな分野のさまざまな場面に携わることになり、幅広い知識や技術を身に付け、会社経営についての洞察を得ることができました。さらに仕事先で修理を担当するコンピュータの問題を再現できるよう、給料の大半を注ぎ込んで機器類を揃え、自宅にコンピュータラボまで作ってしまいました。一家を大黒柱である彼のそうした行動は、彼の妻を大いに嘆かせました。
急展開
Mohamedは常に最新テクノロジーの動向に興味を持ち、新たなチャレンジに惹きつけられていました。「1995年に学んだことが今では役に立ちません。テクノロジーは常に進化し続けており、最先端の技術にチャレンジすることで一層意欲がわきます」
2003年、Mohamedはカナダ系保険会社に情報セキュリティコンサルタントとして入社します。飽くなき向学心でさらに勉強を進めて新たな資格を取得し、人材管理やリーダーシップを学び、知識を積み重ね続けたことで、CIOへの意欲を持つようになりました。2009年にアシスタントバイスプレジデント兼最高技術責任者(CTO)に昇格し、数百万ドルをかけて日本国内のデータセンターやアジア事業を変革するという、会社にとって重要なテクノロジーイノベーションの指揮を執ることになりました。
そして2011年、彼は日本事業担当のCIOに任命され、バイスプレジデントに昇格します。2013年、日本担当CIOに加え、アジア11カ国でのオペレーションを担当するアジア地域最高情報セキュリティ責任者(CISO)およびビジネス継続性統括責任者に任命されました。
2015年、Mohamedは日本地域担当バイスプレジデント兼CIOおよびCISOとしてAsurionに入社し現在に至ります。ここで彼は、ITおよびITセキュリティ、さらにビジネス継続性部門の統括にあたっています。
ITへの情熱
Mohamedはテクノロジーによって企業のオペレーションを最適化することに意欲を燃やしています。「テクノロジーの問題を解決するお手伝いをすることが大好きなのです。これは代々受け継がれたDNAの同一線上にあるものです。私の父は数学の教師でしたが、完璧などいないということを私に教えてくれました。父からは全てが分かったと思ったら、人間はそこで成長し、学ぶことをやめてしまうと言い聞かせられました。」 Mohamedには他人を尊重し、人から学ぶという信念があります。「何より大切なのはチームワークです。一人の人間だけですべてができるのであれば、組織など必要ありません。」
テクノロジーは昼夜を問わず機能し、常時休みなく稼働しなければなりません。このことがワークライフバランスの問題を生み、時に眠れない夜をもたらすことになりますが、MohamedはCIOがチームよりも楽をするべきではないと考えています。実際には、チームのためにCIOはその場にいる必要があるのです。「ワークライフバランスとは、自分の時間をどのように使い、家族のためにどれだけ時間を作れるかということです。例えば、朝5時半に家を出なければならない日は仕事を早目に切り上げて、その埋め合わせをするようにします。」こうした彼の努力はうまくいっているようで、週末にはしっかり休みを取り、さまざまな料理に腕を振るって、家族と楽しい時間を過ごしています。また、体を動かすことも好きで、エクササイズは頭の中をクリアにして、新たなアイデアを得るための貴重な時間になっています。
オペレーション
テクノロジー戦略の推進と実行以外に、Mohamedはプロダクト部門やオペレーション部門とも密接に連携し、戦略を徹底させてビジネスの成長を牽引するとともに、顧客エンゲージメントや戦略的提携関係の構築にあたっています。「オペレーション部門と協調することは非常に重要です。5,000万の顧客を抱え、1日2万件の電話がかかり、かつてない大量のデータポイントに対応しなければならない状況で、CIOとしては彼らが顧客のニーズに応え、業務効率化を実現できるよう効果的にテクノロジーを活用してオペレーション部門をサポートできるようにしなければなりません。」
チャンスと課題
現在、Mohamedには8人の直属の部下がおり、さらにその下に世界各国で300人が働いています。「従業員の管理はCIOの役割の中でも非常に重要です。今、私がこの地位にあるのは、これまで素晴らしい上司に恵まれ、リーダーのあるべき姿を示してもらったおかげです。上司と部下はギブアンドテイクの関係にあり、私は部下から常に学ばせてもらっています。上司と部下が一緒になって成果を上げることが大切なのです。会社の成長のためにはいろいろな人達の助けが必要であり、成功のための柱となるのがチームワークであり、部下にさまざまな権限を与えて、成長をサポートすることが肝心です。」 Mohamedにとってこの先1年の最大の課題は、厳しい事業環境と人材不足の状況が続く中で、適切な人材を見つけることです。「結局のところカギを握るのは人です。事業戦略に息を吹き込むために、適材適所の人材を確保しなければなりません」
MohamedはCIOにとっては専門技術のスキルと同様、ソフトスキルが重要だと考えています。「テクノロジーは急速に変化しており、CIOの責任は自社のニーズを見極めることです。ここで求められるのは専門スキルよりもビジネス感覚であり、自社が抱える課題の本質を理解し、目の前にある問題だけでなく、将来起こり得る問題までを見据えた手が打てなければなりません。」
ダイバーシティ
MohamedはIT業界により多くの女性が進出するようになるには、ダイバーシティの実現についてさらなる取り組みが必要だとも感じています。「異なる考え方をする人たちによって新たな課題解決方法を見つけることができます。これは会社が健全性を保ち、成長していくためには、本当に大切なことです。世界中を見渡しても、IT業界では女性の企業幹部が不足しており、優れた女性の人材をなかなか見つけられないでいます。もっと多くの女性にIT業界に入ってもらうためには、一層の努力が必要です」
CIOを目指す人へのアドバイス
これからCIOを目指したいと考える人への一言:「初めからトップの地位に就くことだけを目標にすべきではありません。1つ1つの課題に一生懸命取り組み、自分の仕事を完璧にこなすことに全力を尽くすべきです。常に学ぶ姿勢を持ち、常に人の言葉に耳を傾け、謙虚な気持ちを忘れないようにすることです」