James Marsden

Managing Director Japan Global Technology & Operations Broadridge

一般に、社会でも職業でもトップに上り詰めるにはほとんどの場合、少しばかりの幸運と懸命な努力を続けることが必要であり、この2つがうまくかみ合うかどうかがカギを握っていると考えられています。Broadridgeで日本およびAPAC地域の戦略事業開発担当マネージングディレクターを務めるJames Marsdenにとって、最初の幸運は早い時期に訪れました。

Jamesは次のように当時を振り返ります。「1980年代、たまたま手にしたのがZX81プログラミングの本でした。実はこの本を買ったのは僕の兄だったのですが、彼自身はコンピュータにはまることはなかったのですから皮肉なものです。それはまったく知らなかった世界で、いくつかのコマンドをつなげることで思い通りの操作をさせることができるようになるという事実に、私は夢中になりました。すぐにITによってどれほど多くのものが作り出せるかが分かりました。最終的に問われるのは想像力だからです。問題の中味を理解し、それをソリューションという形にしていかなければならないのです。」

金融に対する興味もあり、こうして偶然見つかった情熱の対象と合わせて、Jamesはその後リバプール大学で経済学とコンピュータサイエンスを学び、学士号を取得した後、Broadridgeでジュニアプログラマーという初めての仕事に就きました。そしてわずか10年のうちにBroadridgeの成長と歩調を合わせて彼の能力も地位も上がり、若くして日本地域の事業統括責任者(ベンダーにおいてCIOに相当)というユニークな地位に就くことになったことには、彼自身も驚いています。

「元々CIOになろうとは考えていませんでした。しかしちょうど良いタイミングでチャンスが訪れたのです。それは運だとも、予定通りだとも言えます。若いうちにトップに立つことで何かを失う必要があるでしょうか? 思い切ってリスクを引き受けて、例えうまくいかなかったとしても、誰も悪くいう人はいないでしょう。」

しかし、彼が組織の中でここまでの地位に上り詰めることができたのは幸運のせいだけではありません。彼がどれほどの努力を重ね、技術的にどれほど優れたスキルを身に付けたのかを見逃すべきではありません。そしてそうした強みを最大限に活かすことができたのです。

Broadridgeは金融市場をリードするGlossというポストトレードプラットフォームを提供しており、これに関連してプログラマーからテクニカルアナリスト、ビジネスアナリスト、プロジェクトマネージャーに至るまで、さまざまな職務に携わるチャンスがあります。ここでJamesはソフトウェア開発のライフサイクル全般に渡る幅広い知識を得て、世界の一流クライアントにITサービスを提供する上で何が必要なのかを熟知することができたのです。中でも自分にとって最も重要な資質だと感じていたのが、クライアントに対していかに率直にコミュニケーションが取れるかという点でした。

「クライアントのニーズを理解し、ITの専門用語ではなく、クライアントが理解できる言葉を使って話をする能力があるかどうかで、単に良い技術担当者で終わるか、優れたマネージャーやエンジニアとなってクライアントとの橋渡しができるかが分かれます。Broadridgeのさまざまな部門に携わったことでそうしたスキルを磨く機会に恵まれ、そうした経験を積むことができたのです。」とJamesは指摘します。

クライアントと話をする能力は極めて高く評価されているとはいえ、Jamesはその2倍重要なのが、クライアントの話に耳を傾けることだと考えています。「人には耳が2つ、口が1つ付いています。皆、その割合通りに活用すべきなのです。」

「クライアントに対して自社のソリューションの話ばかり(『ソリューショナイズ』と称されることがあります)をしないよう気を付ける必要があり、ITの人間は特にそうした間違いを犯しがちです。そうではなく、クライアントの要件(ニーズ)に耳を傾け、クライアントの抱える問題を確実に理解することが大切です。自分自身が思うことだけに目を向けるのではなく、何がクライアントにとって重要なのかを理解することです」とJamesは忠告します。

テクノロジーが主な関心事項である分野に従事しているものの、Jamesはここで原動力となるのは、間違いなく人であると考えています。クライアントとのコミュニケーションに明確な重点を置く一方で、共に働く人たちとのコミュニケーションも同様に重要だと考えています。その意味で、CIOを目指すあらゆる人にとって、人とのネットワークづくりは重要な要素だと考えています。ただし、そこには注意するべき重要な点があります。

「ネットワーキングに時間をかけすぎないように注意しなければなりません」とJamesは言います。「もちろん、ネットワーキングは人間関係を育むうえで役に立ちます。ですが、問題は、何かをするためにかならずしも適切な関係が築かれるわけではないという点です。知り合いが多ければ多いほどいいというわけではありません。重要なのは、自分や組織の力になってくれる適切な知り合いを見つけることです。」

「仕事仲間を通じて人脈を作り、正しい行いにより信頼を築くことは、意識の啓発につながります。知り合いを作ることはたしかに重要です。しかし、そのための手段としては、あなたの仕事を評価してくれる人から紹介してもらうなど、ほかのやり方もあります」

言うまでもなく、ITはテクノロジーに大きな関心が寄せられる分野であり、JamesのようにITの創造性に惹かれてこの分野に入ったという人もいます。Jamesは何年もかけて技術に関する幅広い知識を身につけました。しかし、技術開発は目的ではなく1つのステップにすぎない、と彼は指摘します。

「ITは現代の仕事をこなすためのツールであり、企業の効率化と、イノベーション、新市場の獲得と成長を支援する促進要素です。Blockchainなど、自社のイノベーションにおいて極めて重要な役割を果たすことになるトレンドが進行中の場合は、特にそうだといえます。しかし、IT分野で働く私たちにも、現時点ではそれがどのように利用されることになるのかわかりません。ですが、ITにとって重要なのは技術の内容ではなく、お客様の問題を解決するためにどうやってそれを応用するかということです」とJamesは言います。

最終的に、テクノロジーがいかに革新的であったとしても、テクノロジーによってもたらされるソリューションを発見するのはあくまでも人である、とJamesは考えます。そしてそのためには、異なる視点から問題に取り組み、答を見つけ出す多様な人材を揃えることが重要になってきます。

「部屋の中にいる全員に、同じような思考により問題を解決させようとしても駄目です。なぜなら、それでは自分たちの解決策の弱点に気づくことができないからです」とJamesは主張します。「背景、学歴、生まれ育った国の違う、多様な思考プロセスと経験を持つ人材を揃えることで、多様な対話が生み出されます」

多様な人々の集団が組織内に存在する場合、彼らとのコミュニケーションが鍵となります。なかでも重要なのが、彼らを統率することです。Jamesがリーダーシップ・スキルの開発に重点を置き、模範を示して指導することにこだわるのはそのためです。

「IT業界は巨大かつ複雑で、絶えず変わり続けていることから、常に知識の拡大に努めることが重要です。IT職務において成功を収め、同僚よりも抜きんでたいと考えるのなら、努力が必要であり、また上級職であれば、ある程度の時間働くことを覚悟しなければなりません」とJamesはアドバイスします。

しかし、成功を手にするには時間がかかると語るとき、Jamesは決して自身の成功のことを言っているのではありません。企業目標を実現し、販売や財務といった他のグループと連携して組織の目標を理解すること、そして彼の統率力に信頼を置いているクライアントの目標を達成することを言っているのです。

「物事がうまくいかず、切羽詰まった状態で、人々に頼りにされているとします。そのような場合、あなたならどうやって問題に対処しますか? 正面から立ち向かいますか、それとも背を向けて逃げ出しますか? 困難な問題が生じた場合、どのように対応しますか?」とJamesは問いかけます。

Jamesの場合、たまたまの運のよさといったことはさておき、努力に裏打ちされていることから、どのような対応をとるかについてはほとんど疑いの余地はありません。

「かならず正面から立ち向かわなければなりません」と彼は言います。

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