在宅勤務中の働きすぎから自分を守る10のポイント
新型コロナウィルス流行による危機的な状況に対処するため、世界各国でロックダウンなどの外出規制策が実行されました。現在も世界の人口のおよそ20%がロックダウン下にあるとされています。私たちは特別な理由がない限り外出を許されず、家に閉じこもりきりの状態になっています。つまり、多くの人々が時間を持て余したり、自分自身や家族の今後に不安を抱えながら毎日を過ごしているのです。そして、こうした規制策の対象となる人たちの割合は、今後も増加するものと予想されています。
しかし、働く人たちにとっては、もう一つ看過できない影響があります。それは、オフィスに出勤していなくても、「自分は生産が高く、会社に役立つ存在だ」と認められなければならない、と切迫した気持ちになりつつあることです。
コロナ禍による在宅勤務で、労働時間が急増している
コロナ禍のように困難な状況下でこうした不安に囚われると、長時間労働や過重労働に陥りがちです。自宅で子供の世話をしながら働いている場合は、夜中に一段落してから仕事をしようとすることもあり、この傾向にさらに拍車がかかります。VPNなどインターネットセキュリティサービスを提供しているNordVPNは、最近のデータを検証し、新型コロナウィルス流行当初に比べ、労働者の残業時間が急増しているという結果を発表しています。例えば米国では1日3時間、イギリス、フランス、スペイン、カナダでは2時間程度残業時間が増加していることが確認されました。
過労が与える影響は軽視できません。新型コロナによる危機で、私たちはすでにさまざまな困難に直面していますが、過労はこうした私たちのメンタルに負の影響を与えるだけでなく、生産性低下の原因にもなるのです。ストレスがたまれば免疫性も後退します。これはコロナ禍が終息していない現在において、最も気をつけなければならない点でしょう。アメリカ心理学会(American Psychological Association:APA)が発表した研究を読めば、ストレスと免疫性の相関性が良くお分かりになると思います。また、APAが引用している2005年の研究でも、社会的な孤立が免疫の低下につながる可能性が指摘されています。これらの研究結果は、一人で在宅勤務しなければならない労働者にとって、不安材料となるかもしれません。
在宅勤務による残業や働きすぎを防止するための10のポイント
今回のブログでは、働きすぎから自分自身を守るためのコツをお伝えします。
- 仕事とプライベートをしっかりと区別する 自宅の敷地に余裕があるならば、仕事専用のスペースを設けましょう。デスクや背もたれ付きの椅子を置いて、照明も仕事がしやすい輝度に調整して下さい。そして家族など同居している人たちに、仕事をする時間を伝えておくのです。この場合、始業時間と就業時間を具体的に教えておく方が良いでしょう。また、会社の同僚たちに対しても、カレンダーに就業時間を書き込んで共有しておけば、健康的に仕事を進めていくことが出来るようになるかもしれません。このような対策は、「仕事」と「プライベート」の時間をしっかりと区切るためにも大切です。事前に周知しておくことで、仕事に集中しなければならない昼間に、仕事以外のことで煩わされ、モチベーションが低下することもなくなるでしょう。子供の世話をしながら在宅勤務をする人は、仕事に集中し続けることが特に難しいかもしれません。電話会議などで忙しい時は、他の家族に子供の世話を依頼したり、子供に自分一人で出来る活動を指示したり、テレビやインターネットなどの動画を見せておくのも良いでしょう。
- 仕事の優先順位を毎日確認し、重要な仕事を優先する 集中して片付けなければならない仕事と優先順位を明確にしておきましょう。仕事開始時に、その日のうちに終わらせなければならない重要な仕事を絞り込みます。次に、現実的な視点から、その日のうちにその仕事を本当に終了出来るか否かを検討します。問題がなければ、仕事の内容を他の同僚にも周知した上で、集中してその仕事に取り掛かりましょう。同僚にも自分たちの仕事を同じように周知するよう伝えて下さい。そうすれば、あなたのチームは、同じ目的に向かって力を合わせ、正しい方向で仕事に集中していくことが可能になります。そして、仕事の生産性も上がり、終業時には高い達成感を得ることが出来るでしょう。夜もゆっくり過ごすことが出来るに違いありません。
- 優先順位の低い仕事は丁重に断る 昨今のように変化の激しい時期には、仕事の優先順位や集中して対処しなければならない事案も絶えず変化します。つまり、仕事を依頼されたとしても、その時点で重要なものではないと考えられる場合は、きっぱりと断っても良いのです。ついつい仕事をしすぎてしまうのは、多くの場合、他人の頼みに「No」と言えない人です。業務量が多くて手が回らないとき、依頼された仕事の優先順位が高くない場合に、これらを上手に断るスキルを身に着けておきましょう。どうしても引き受けなければならないときは、業務時間内でどの程度の業務をこなすことが出来るのかを冷静に考えてから引き受けましょう。すべてに対処できないときは、その一部だけを引き受けても良いでしょう。
- 家族や同居人に仕事について説明しておく あなたには、一緒に暮らしている家族や同居人はいますか?その同居人は、あなたと異なる時間帯に働いているのでしょうか?外出規制中でも出勤しなければならない職業ですか?それとも、現在は休職中でしょうか?もし同居人が、あなたと異なる生活パターンで仕事をしている(いない)のであれば、あなたの仕事について誤解してしまう可能性があります。在宅勤務をしているからといって、日中にその同居人のために買い物をしたり、おしゃべりの相手をしたり、難しい交渉をしたり、荷物の受け取りをすることが自由に出来るわけではありません。誤解が生じないように、自分の仕事の事情や仕事に必要な時間などを事前に相手に知らせておきましょう。こうしておけば、相手もあなたの時間を尊重するようになりますし、あなたも責任を持って仕事に取り組むことが出来るようになります。
- 集中しやすい環境を整える 今回のコロナ禍で、初めて在宅勤務を経験する方もいらっしゃるかもしれません。また、9時から6時までといった定時勤務を過去に殆ど経験したことがなかった方もいらっしゃるでしょう。初めての在宅勤務では、ついついSNSやニュース配信などが気になってしまうものです。このような場合には、仕事場所となるスペースを思い切って整理整頓し、仕事だけに集中できる環境を整えてみてはいかがでしょうか。「意志の力」だけに頼るのではなく、携帯電話を目につきにくい場所に移動させたり、ニュースの配信音をオフにしたり、あるいは配信をしてくるアプリケーションを削除するなど、具体的な行動で仕事の環境を整えるのです。雑然とした環境で働くと、就業時間は8時間なのに、4、5時間しか仕事が出来ず、数日後に残業をして片付けなければならなくなることもあります。環境を整備すれば、こうした事態も防ぐことが出来るでしょう。
- ランチ時間を大切に 可能であれば、ランチは仕事場以外で取りましょう。デスクから離れた場所に移動したり、新鮮な空気を吸うために外出するのもお勧めです。ただし、政府や自治体が奨励するガイドラインに従い、ソーシャルディスタンスを確保するよう注意して下さい。ランチの時間を心から楽しめるようになれば、モチベーションを高めた状態で仕事に戻ることが出来ます。
- OnとOffを明確に 終業時間になったら仕事場から離れましょう。そして、離れたら翌日の始業時間までその場所に戻ってはいけません!プライベートと仕事のための時間を、きっぱりと区切るのです。夜遅くに「ちょっとだけ仕事をしよう」と思うこともあるかもしれません。しかし、仕事に手をつけてしまうと、就寝時間が乱れて翌日に疲れを残してしまう可能性もあります。こうなると生産性も低下し、後で追いつくこともままならなくなってしまいます。
- PCなど仕事用のデバイスの電源を切る 時には、就業時間後に仕事をしなければならない場合もあるでしょう。そんな時でも、「夜のメールチェックは1回から2回まで」など、一定の限度を設けることをお勧めします。Skypeや他のチャットツール、メッセージ機能が設定された機器を使っている場合は、これらもログオフしておきましょう。プライベートでオンラインショッピングなどを楽しみたい場合は、私用のパソコンやスマホなどを使って下さい。
- 自分のための行動を 気持ちの切り替えも大切です。業務が終了したら、仕事モードをオフにしましょう。散歩やジョギング(許可されている場合)をしたり、晩御飯の準備をするのも良いでしょう。つまり、仕事から離れて何か健康的なことに取り組んでみるのです。これらを習慣化することで、気持ちの中ではプライベートへの切替えが進み、私的な時間と仕事の時間を切り離すことが出来るようになります。
- 健康的で、生産的なことに力を入れる ひょっとしたら、あなたの働きすぎは、危機的な現実から目を逸らすためなのかもしれません。そんな時はぜひ、仕事以外の楽しいことや感謝すべきことに目を向けて下さい。手つかずのままだった家事を片付けたり、(規制に抵触しない範囲で)家族と過ごすのも良いかもしれません。気を紛らわすものは仕事以外にも沢山あります。大切な時間は、健康的で生産的なことに使いましょう。SNSばかり見ていたり、新聞の見出しを見て不安に駆られたり、仕事漬けの生活を送ってしまうのは逆効果です。
働きすぎから身を守り、コロナ禍の今を健康的に過ごすために
コロナ禍のように危機的な状況で在宅勤務をしていると、「平時よりもたくさん仕事をしないと」という焦りが生じてきます。通勤時間が無くなり、需要が一時的に落ち込んで空き時間が出来ると、その時間を他の仕事に充てなければ、と考えてしまうのです。逆に業務量が増加している場合には、「仕事の時間が増えても仕方がない」と諦めがちになります。また、今の仕事を続けていくことに不安を感じると、「自分の雇用を守るためにたくさん働かなければ」というプレッシャーもかかります。
しかし、「もっと働かなければ」と感じ始めると、働きすぎが常態化してしまい、健康などを悪化させる恐れがあります。コロナ禍がまだ終息していない中、こうした事態は回避しなければなりません。また、先行き不透明な時期には、雇用主である会社が何を考えているのか、つい不安になるものですが、こうした不安は取り越し苦労であることが多々あります。今は、こうした非現実的な考え方は止めて、冷静になることを心がけましょう。
今回ご紹介した方法は、非常にシンプルなものですが、これを徹底して実行して下さい。これらを実行することで、昨今の困難な状況において過労で体を壊したり、パフォーマンスを悪化させることはなくなるでしょう。
ロビー・ヴァヌクサム
ヘイズ・ベルギー/マネージングディレクター
Robby Vanuxemは、ヘイズ・ベルギーのマネージング・ディレクターである。
ロビー・ヴァナクセムは20年以上の業界経験を持ち、そのうち15年以上はヘイズでの経験である。2000年に人事の世界に入り、コンサルタント、ビジネス・ディレクター、リージョナル・ディレクターとキャリアを重ね、2015年にマネージング・ディレクターに就任。