年収アップを叶える交渉術-交渉の専門家が説く準備のポイント

仕事でもプライベートでも、成功するためにモノを言うのが交渉力です。しかし、交渉は非常に骨の折れる仕事で、どんなに好調なときでも上手くいくとは限りません。
 
私はビジネスでの交渉に関するトレーニングを世界中の企業に提供する会社を経営しており、交渉が誰にとっても避けたい事柄であると知っています。交渉は気まずく、難しく、決して心地よいものではないからです。できる限り交渉を避けようとするか、最小限の時間で済ませようとするのも理解できます。
 
また、交渉は、自分のためにしようとすればするほど、ストレスが大きくなります。複数の研究によると、チームのメンバーやクライアント、上司など他人のために交渉するときに比べ、自分自身に関することを話し合うときの方が、自信もパフォーマンスも下がる傾向があるとわかりました。
 
昇給の交渉は、自分自身のために行う交渉の最たる例。「交渉しなければ」と考えるだけで、神経質になったり、尻込みしてしまったりする人が多いのです。
 
自著「We Have a Deal: How to negotiate with Intelligence, Flexibility and Power」(英語のみ)のなかでは、人間の行動や習慣について詳しく説明し、希望どおりの結果を得るためのさまざまな対応や方法を伝えています。
 
この記事では、昇給の交渉につきものの緊張感や不安感をコントロールしながら、年収アップを実現するための交渉術を解説します。
 

1. 「REAP」アプローチで段階的に

コーチングの際にも勧めている交渉への準備方法として「REAP(Research:調査、Establish:決定、Ask:訴求、Persevere:忍耐)」アプローチがあります。以下が各ステップです。
 
  • Research: まずは十分にリサーチ。業界の給与事情を調べた上で、自分が会社にどのように貢献したか、会社にとってどのくらい価値がある存在なのかをまとめると同時に、会社の未来にとって何が重要かを理解する必要があります。
 
  • Establish: 自分にとって本当に重要なものが何かを整理・確立します。給与額なのか、フレックス制や在宅勤務、福利厚生なのか、優先順位を明らかに。
 
  • Ask: 事前に提案の選択肢を複数用意し、最も重視するものから提示していきます。年収は、会社側はできるだけ低く、こちらは最大限に高くしたいもの。そもそものスタートからして目指すゴールが異なるのです。それを念頭においたうえで、幅をもたせた曖昧な表現は避け、具体的な金額を明示します。申し訳なさそうにしたり、気まずそうにしたりするのは禁物。毅然とした態度で臨むこと。
 
  • Persevere: 断られても簡単にあきらめてはいけません。条件を変えて、次の提案に切り替えます。「どの条件を変更すれば、私の希望に近づけそうでしょうか」などと質問をしたり、次のミーティングを設定したりして、自分の貢献をさらに証明できる場を設けます。これは、交渉が途切れないようにするためのテクニックのひとつ。
 

2. 多少の緊張や疲れは覚悟しておく

交渉は、多少緊張していた方が集中力が高まり、良い結果につながる傾向があります。しかし、自分が特に消耗しやすいタイプだとわかっているときは、緊張感を和らげるような行動がリラックスに効果的。交渉へ向かう前の深呼吸や、頭のなかでゆっくり10数えるなどは、気持ちを落ち着けてくれます。自信を持って交渉しているように見えるよう、身振りや手ぶりなどのボディランゲージを研究しておくのも有効です。
 

3. 欲深さや利己心、不寛容は禁物

交渉は決して楽なものではありません。しかし人間は、何かを手に入れるために交渉を避けて通ることはできません。交渉は、何世代にもわたって続けられてきた営みでもあります。自分には年収アップの権利があると思ったのであれば、その思いを信じるのみ。「なぜそう思えるのか」をたどっていけば、交渉の根拠が浮かび上がり、自信をもって積極的に集中して交渉の席につくことができるはずです。自分の望みを叶えることができるのは、自分自身だけ。年収アップ交渉には、これらのポイントを踏まえた綿密な準備をして臨むことが大切です。
(この記事は、advantageSPRING社のCEO、ナタリー・レイノルズ氏と、同社北米支部責任者のデボン・スマイリー氏が共同で執筆したものです。)
 
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著者

ナタリー・レイノルズ
創業者兼CEO
世界中の企業に交渉に関するトレーニングを提供するadvantageSPRINGの創設者兼 CEO。法廷弁護士の資格を持つナタリーは、12年間、公共部門と中央政府の職務に従事した後、FTSE100企業のコマーシャルディレクターに。advantageSPRING創業前は、欧米と北米の経営者にビジネス交渉のトレーニングを提供。「交渉」に関するトピックを主導するリーダーとして、ガーディアン、ハフィントンポスト、フィナンシャルタイムズに取り上げられ、国際的にセミナーを開催している。