人員整理による退職をチャンスにするために~履歴書&面接での効果的な伝え方

 

  • もし、人員整理の対象となり会社から解雇されてしまったら…。決して後ろめたさを感じる必要はありません。履歴書や面接で、はっきりとそのことを伝えましょう。
  • 履歴書には背景となった事情(例えば、組織再編などによる合理化など)を記載しておきましょう。また、在職中の主な実績についても忘れずにアピールして下さい。
  • 面接では、解雇された事情について質問されることも想定されます。今回の記事を参考にしながら準備をしておきましょう。前職で自分が達成した実績や、退職後の時間を有意義に過ごしたことなどを説明すると良いでしょう。

キャリアは挽回できる

解雇を言い渡された直後は、目の前が真っ暗な状態かもしれません。気持ちが落ち着き、次の仕事を探そうとしても、解雇されたことを履歴書や面接でどのように伝えるべきかで頭を悩ますことになるでしょう。
 
まず理解していただきたいのは、今回の解雇であなたには何の非もないことです。他の記事でもお伝えしていますが、人員整理は会社が今後の事業展開を検討した上で判断したことであり、あなた個人の人格やスキルなどに原因があったわけではありません。ましてや、あなたの価値が否定されたわけでもないのです。同じような経験をした人たちは決して少なくありません。ひょっとしたら、次にあなたの上司になるマネージャーにも、こうした経験があるかもしれません。こうした解雇を理由に候補者に偏見を持つ企業は存在しないでしょう。ですから、解雇されたことに引け目を感じたりする必要は全くありません。また、「キャリアを取り戻すことができないのでは」などと、不安に思う必要もありません。
 
解雇に傷つき、悲観的になったとしても、ネガティブな気持ちは早めに振り切って将来に目を向けるようにしましょう。あなたは必要な存在であり、あなたのスキルは非常に重要なものなのです。
このように考えることができるようになったら、次のポイントを参考に転職活動をスタートしましょう。
 

履歴書での効果的な説明の仕方

前職の始業時期と終了時期を記載する
履歴書には、解雇されたことを正直に、簡潔に記入して下さい。始業時期と終了時期は、年と月まで正確に記入します。応募先企業に、人員整理の事実を隠しているという印象を与えないことが重要です。
 
理由やその背景となる事情を説明する
解雇の理由を簡潔に記入して下さい。組織再編など会社の事情や経済環境の変化などに関連付け、多くても2行程度にまとめると良いでしょう。「業界全体がコロナ禍の影響を受け、担当していた仕事が合理化の対象となりました」位の長さと内容が適切であると思います。解雇に関する情報を簡潔に示すことで、応募先企業の担当者は、あなたが退職した事情を幅広く理解することができます。また、簡潔にまとめておけば、残ったスペースであなたのスキルや経験を十分にアピールすることもできるでしょう。
 
実績をアピールする
解雇について詳しく言及する必要はありません。むしろ、前職での実績など、キャリアにおけるプラスな点をアピールした方が得策です。また、重要なプロジェクトに参加していた場合は、退職前に完了できたか否かにかかわらず、しっかりと伝えておきましょう。ヘイズでは、スキルや能力、実績を証明することで履歴書の信頼性を高める方法もご案内しています。こちらもぜひご参考にご覧下さい。
 
退職後の過ごし方について伝える
退職後の活動や過ごし方について簡潔に説明して下さい。目標とする仕事に就くために、退職後の時間を使ってどのように努力しましたか?スキルアップのためのトレーニングや勉強、 SNSなどを使った人脈づくりなどパーソナルブラディングに関する活動があれば、記入しておきましょう。また、ボランティア活動であっても、有給休暇中に参加したものであれば、職歴欄に追記しても良いでしょう。自分の価値が転職先に伝わるよう、履歴書は自分の実績にフォーカスして作成することをお勧めします。
 

面接での説明の仕方

合理化などによる解雇であれば、あなたに落ち度はありません。面接で聞かれても堂々と対応して下さい。不安が拭い切れないときは、面接で想定される質問と回答を用意して、十分な対策をしておきましょう。以下のポイントが参考になるはずです。
 
状況によっては詳しく説明を
面接では、履歴書よりも踏み込んだ説明が求められるケースも想定されます。対策は十分しておきましょう。「コロナ禍の影響で、私の部門では他にも解雇された同僚がいます」など、具体的な説明ができることが望ましいです。
 
退職前の実績をアピールする
解雇によってあなたの実績に傷がつくわけではありません。解雇の理由は、あなたの能力や仕事への姿勢とは一切関係がないのです。これまでの実績、将来の成長プランを説明できるように、事前にまとめておきましょう。あなたが、応募した仕事に適材であることが効果的に伝わるでしょう。また、履歴書の書き方にも当てはまることですが、実績を説明する場合は売上額や稼得利益など、数字で表される結果を加えておくと良いでしょう。あなたの能力やスキルが、より具体的に伝わります。
 
前向きな言葉を選ぶ
解雇された勤務先や、以前の上司を悪く言うのは控えましょう。これらに言及するときは、その会社や上司から学んだこと、共に有意義な時間を過ごしたこと、一緒に達成できたことなどについて、感謝していることを伝えて下さい。また、退職は本意ではなかったものの、すぐに気持ちを切り替えて目標をみつめ直し、 現在は次のステップに向けて歩み出していることも話しておきましょう。
 
退職後に力を入れたことをアピールする
スキルアップやトレーニング、業界関連の専門書や論文の読破、ボランティア活動など、退職後に実行したことや力を入れたことを伝えましょう。伝える時は、あなたが多才で、応募した仕事にマッチした人材であるという印象を与えることができるよう工夫してみて下さい。退職後に時間を有効に使ったことで研鑽に励むことができ、応募したポジションに相応しい人材に一段と近づいたことをアピールしましょう。
 
自分が適材であると思う理由を説明する
その仕事になぜ興味を持ったのかを説明し、今回の募集は、自分にとって大切なチャンスであると考えていることを伝えて下さい。仕事が欲しくて見境なく応募していると誤解されるのは、あなたにとっても心外でしょう。このポジションが、自分のキャリアアップのための重要なステップであると建設的に説明し、自分こそが適材であるとの印象を持ってもらうのです。前職や退職後に培ったスキルや経験で、応募した企業の目標達成に貢献できるものがあれば、アピールしておきましょう。
 

「なぜ、人員整理の対象となったのですか」と聞かれたら

では、面接官から解雇の理由を直接問われたら、どのように回答すればよいのでしょうか。ヘイズ・ポーランドのディレクター、マーク・ブラジは、リクルートメント業界で培った経験を元に、こちらの記事でアドバイスしています。その中で、ブラジは以下の回答例を紹介していますので、ぜひ参考にして下さい。
 
「以前の勤務先は、長期に渡って予算の削減を進めていました。私が担当していたクレジットコントローラーの仕事も、その一環で合理化の対象となりました。残念なことではありましたが、クレジットコントローラーという職業には誇りを持っています。前職では、お客様の与信調査にかかる時間を短縮するために、これまでのプロセスを合理化することを思いつきました。私が提案したこのモデルは、その後他の部署や仕事にも採用されるに至りました」
 
「退職後は仕事を離れ、自分自身が次の仕事に何を求めるのかを真剣に考えました。また、この業界の最新情報やトレンドについて、意欲的にリサーチしてきました」
 
「その結果、私の希望は、これまでのキャリアで培ったスキルを活かし、管理職としてチームをマネジメントし、自分が携わるビジネスの発展に貢献することであると気が付きました。今回応募したのは、この希望を実現できるチャンスであると考えたためです」
 

人員整理での退職を新しいキャリアのためのチャンスと考える

あなたは今、キャリアの中で重大な岐路に差し掛かっていることでしょう。しかし、今回の経験を自分の成長のためのチャンスであると捉えてみて下さい。
 
今は新しいスキルの習得に励んだり、前職よりも夢中になれる仕事や理想的な企業に転職活動をすることもできます。もしかしたら、これまでのキャリアを振り返り、今後のキャリアプランをリセットするチャンスかもしれません。
 
転職先の企業や上司は、あなたの状況に理解を示してくれるでしょう。ですから、履歴書や面接では、現状を隠さずに伝え、転職活動を前向きに進めて下さい。すぐに働くことができる人材を歓迎する企業は少なくありません。これは、あなたの現状における一つの強みになるでしょう。
 
 
ジェーン・マクニール
ヘイズオーストラリア、ディレクター
エディンバラ大学で心理学の修士号を取得。1987年の卒業後は、ヘイズのロンドン本社に研修員として就任。会計・金融産業のリクルーターとして、11年に渡りロンドンの銀行・金融企業向けの正社員上級職の紹介に従事しました。この間に管理職へと早期の昇進を果たし、景気後退に陥ったロンドン・シティのビジネスを目覚しい業績回復に導くと、1992年にはディレクターに就任。
 
2001年には、オーストラリア西部のパースに移り、現地の拠点を15名から250名の規模に拡大、銀行・金融産業へのリクルーティング部門を立ち上げ、マネジメントに携わりました。
 
2007年には、ヘイズ・オーストラリア&ニュージーランドのマネジメント・ボードに就任。現在はシドニーに拠点を置き、ニュー・サウス・ウェールズ州と西オーストラリア州を統括しています。