求人広告で人気のワードを埋もれずにアピールするには?

テクノロジーの進化は、企業のPR方法も変化させました。オフィスのバーチャルツアーやスナップチャットによる「スナップリケーション」など、人材採用の分野では新しいアプローチが誕生しています。しかし、人材確保に重要な役割を果たしているのが、求人広告であることに変わりはありません。この活用方法や失敗例については、これまでにも何度かお伝えしていますが、今回は、求人広告で頻出する「キャッチフレーズ」を取り上げます。
 
キャッチフレーズにもさまざまなタイプがあります。個性の強いフレーズはわかりやすく即効性があるように見えるため、ついつい頼りがち。しかし、あまりに頻度高く登場しながらもその根拠となるデータなどを示せないならば、使い古された決まり文句として素通りされてしまいます。読み手の記憶に残るフレーズを目指すのであれば、インパクトだけではなく、内容にも注意を払う必要があります。
 
今回は、よく目にするありきたりのキャッチフレーズに説得力をもたせる方法を解説します。
 

1.  「社員の仲が良い職場」

まずは、当たり障りはないもののフレーズとしては弱い表現から。転職希望者は、さまざまな求人広告を目にしています。大抵の求人広告が「仲が良い」「コミュニケーションが活発」とアピールしています。大抵の求人広告が「仲が良い」「コミュニケーションが活発」とアピールしています。この点を強調したい場合は、他社との違いをアピールする工夫が必要です。例えば、会社として従業員の関係を良好に保つために、どのような施策をどのくらいの頻度で行っているかを具体的に考えてみます。具体性があるほど、人はイメージしやすくなります。
 
「業務内外を問わず交流の活発な6名のチームです。毎週金曜日はチームランチで交流を深め、3ヶ月に1度は一緒にレジャーに出かけて楽しんでいます。前回のイベントでは、ゴルフやピザパーティを開催しました」。
 
大切なのは、これから一緒に働く仲間について、具体的にイメージしてもらうことです。そのためには、「仲が良い」「コミュニケーションが活発」という雰囲気が実際にどのようなものかを具体的に説明することが最も効果的です。
 

2. 「風通しの良い社風」

このフレーズも上記同様、求人広告でよく見かけるフレーズです。しかし、「風通しが良い」と言葉で訴えるだけでは、なかなか実態が伝わりません。
 
風通しが良いと言えるポイントは何でしょうか?個人プレーよりもチームプレーの方が重視される仕事をしているからでしょうか?また、募集する仕事と「風通し」が、どのように関連しているのかを説明することも大切です。特定のチームと常に連携することが求められているのか、はたまた異なるキャリアレベルの人たちが専門分野を持ち合うものなのかなど、「風通しの良さ」がどのような場で活きているのかを説明すると理解しやすくなります。オープンな社風を維持するために、リバースメンター制度や社員間の意見交換会を設定している企業もあり、具体的な施策として紹介できます。
 
まずは、なぜ自分の企業が「風通しが良い」と言えるのか、その理由を書き出してその背景を考えてみることが重要です。
 

3. 「成長中の会社」

成長しているとアピールするときは、具体性が必要です。成長しているのは製品やサービスなのか、売上なのか従業員数なのか、それとも事業エリアや海外拠点なのかなど、ひとくちに「成長中」といってもさまざまな観点があるはずです。成長を支えている背景についても併せて説明すると◎。なにより最も大切なのは、今回募集する仕事が“成長”とどう関連しているかを明らかにすること。具体的な書き方の例を挙げてみます。
 
「わが社は25年前に創業して以来、売上や規模を拡大し続けています。ここ10年間はサービスの向上に力を入れるとともに、ヨーロッパ各地にビジネス拠点を拡大してきました。昨年は中央アメリカにも進出し、9つの拠点を開設。今回は、同地で多国籍企業のアカウントマネジメントを統括するマーケティングエグゼクティブの募集です」。
 
「成長中」だけでは、アピールポイントになりません。求人広告では、その会社ならではの特色を詳細に打ち出すことで、差別化にもつながります。
 

4. 「先進的な会社」

未来に目を向けている人材は、時代遅れの企業で働きたいとは思いません。将来のキャリアにマイナスになるからです。彼らが希望するのは革新的で、競争力のある企業です。「先進的」というワードで時代遅れではないと示せるかもしれませんが、ほかのフレーズ同様、そう語る根拠を示せなければ素通りされてしまいます。
 
では具体的にどのような取り組みが例として挙げられるのかというと、たとえば未来のトレンド予測など時代を先取りしたテーマに関する本やレポートの刊行、記者会見やメディアなどを通じた業界のエキスパートとしての知見や意見の発表、トレンドの変化に対応した新しい製品やサービスの開発などです。このような活動を示すことで、「先進的」というワードを使わずとも先進的であることを伝えられます。
 
これらの4つのフレーズが、転職希望者が重視するものであることは間違いありません。しかし、根拠を示さなければ、印象には残らず、応募につながりません。具体的なエピソードや施策は、応募や入社の決め手になる可能性を秘めています。どのフレーズも、職務内容や環境がイメージできる粒度で詳細を書くことが、採用という求人広告の目的達成への秘訣です。
 
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著者

スージー・ティムリン
英国政府投資会社(UKGI)、最高執行責任者(COO)
UKGIは、英国政府のコーポレートファイナンスおよびガバナンスの研究拠点となり、興味深く複雑な商業的課題に対処することをミッションとした英国財務省所管の政府機関。
COOとしてビジネスの効率的な運用管理や最適な組織設計および人材の採用・育成・管理等に取り組んでいる。
UKGIの前は、ヘイズ・タレント・ソリューションズ(HTS)の人材・文化部にてグローバル・ディレクターとして従事。