「ダイバーシティはIT企業のDNA」
シトリックス、パートナーセールス担当バイスプレジデント、キャシー・チェン氏

シトリックスのアジア太平洋地域・日本パートナーセールス担当バイスプレジデント、キャシー・チェン氏が、ITの世界に入ったきっかけ、女性リーダーとしての歩みと挑戦、そしてIT企業にとってダイバーシティ(多様性)が重要である理由について語ります。

この記事は、ヘイズ・テクノロジーのポッドキャスト「How Did You Get That Job?」エピソード8の抜粋です。ポッドキャストの全編は、こちらからご確認ください(英語のみ)。
 
 
ITやテクノロジーというと、暗い部屋でパーカーを着た男たちが作業をしているというイメージがあるかもしれません。しかし、今日のIT業界ではそうではありません。特に、東南アジアでは、以前よりはるかに多様化が進んでいます。ボストンコンサルティンググループの調査によると(英語のみ)、シンガポールやタイでは、女性の割合が50%近くあることが分かりました。
 
今回の「How Did You Get That Job?」では、ヘイズ・テクノロジーのチーフセールスオフィサーであるショーン・チーサムが、シトリックスのアジア太平洋地域・日本パートナーセールス担当バイスプレジデントのキャシー・チェン氏にお話を伺いました。以下、ポッドキャストからの抜粋です。
 
ショーン:これまでのキャリアについてお聞かせください。
 
キャシー氏:最初は、プログラマーとしてコードを書いていました。しかし、私は人と接することがとても好きで、IT技術そのものだけでなく、IT技術によって人々をどのように変化させ、業界や社会、組織に貢献できるかということに興味があると気づきました。
 
そこで、PCメーカーのコンパックに入社し、セールスアソシエイトを経て、セールスマネジャー、パートナーマネジャー、ディストリビューターになりました。コンパックの後は、Streetcomというネットワーク会社に転職し、ネットワークソリューションの営業を担当。次に、ソフトウェア会社のComputer Associatesでセキュリティソフトを売りました。
 
その後、マイクロソフトに入社。当時、マイクロソフトはクラウドを始めていなかったこともあり、データセンターを検討し始めていたシスコに転職しました。シスコで経験を積んだ後、その知識を買われ、マイクロソフトに再び入社しました。
 
そして、Twitterに転職しストーリーの伝え方を学び、何か面白いことをしようと思い、映画会社に一年ほど勤めたのですが、これは失敗でした。現在はIT業界に戻り、リモートワークのソリューションを販売するシトリックスで、パートナーセールスとエコシステムのマネジメントをしています。
 
私たちは、リモートワークやデジタルワークスペースのソリューションを販売していますが、お客様はさらに多くのソリューションを統合する必要があり、それにはインフラ投資や導入サービス、導入後の運用・保守サービスも含まれます。これらは、すべてパートナー企業を介して行われます。お客様のご要望やクラウドに関する政府の規制は、市場ごとに大きく異なるため、サービスを提供する際には現地のパートナー企業に大きく依存しているのです。
 
私の役割は、パートナー企業が弊社のソリューションを販売できるように、各社のお客様に合わせたソリューションを提供し、ウィンウィンの関係を実現することです。
 
 
ショーン:先ほど映画会社のお話が出ましたが、率直に言って失敗だったとおっしゃっていましたね。人生で成功を収めた後、失敗を経験するというのはどのようなものなのでしょうか。また、そこからどのようにして前に進むことができましたか。
 
キャシー氏:本当に残念な気持ちでした。間違った決断をした自分を責め、何が間違っていたのか、もう一度やり直すチャンスがあったらどうすべきか考えていました。
 
しかし、自分のキャリアに役立つことも多く学びました。映画制作のための資金集めは、まるでスタートアップのようです。アイデアを出す、必要なIT機器やシステムを見つける。そして、市場投入のために資金を調達する。多くのことが似ています。私は、エンドツーエンドのプロセスにも関わり、そこから多くのことを学びましたし、金融会社とのつながりも作ることができました。
 
失敗をしたときは、何がいけなかったのか、どうすればより良くできるのか考えるようにしています。成功よりも失敗から多くを学ぶことができるからです。
 
 
ショーン:これまでのIT業界のキャリアで直面した課題はどのようなものでしたか。また、それをどのように克服しましたか?
 
キャシー氏:継続的に学ぶことです。普通は、いくつかスキルを身に着けるだけで終わってしまいますが、IT業界では、その考え方を捨てなければなりません。例えば、メインフレームの専門性を身に着けたからといって、他の新しい技術を学ぶ必要がないというわけではありません。
 
もう一つは、IT技術の進化が非常に速く、求められることも常に大きいということです。私は、営業とマーケティングをマネジメントしている立場にあるので、常に大きな目標が目の前にあります。どのような会社でも、毎年二桁の成長を期待されています。それが、一般的に求められる成長のラインですから、時にはとてもストレスを感じることがあります。
 
ショーン:IT業界の女性リーダーとして、さまざまな困難を経験されてきたと思いますが、その困難とはどのようなものでしたか。また、それをどのように克服してきましたか。
 
キャシー氏:女性のリーダーとしてではなく、女性として自分に自信が持てず、それが原因で感情的になってしまうことがありました。これを乗り越えて自分を信じられるようになるまで、本当に長い時間がかかりました。今でも、時々感情的になってしまうこともありますが、かなり少なくなったと思います。本当につらいときは、誰もいない場所を探して1時間か2時間くらいひとりで泣いていました。そして現実に戻り、その問題を解決していました。
 
ショーン:少しお話を聞かせてください。メンタルヘルスや幸福は、このポッドキャストのテーマです。先ほどご自身の幸福と困難についていくつかお話を伺いましたが、ご自身のウェルビーイング(精神的・身体的にも健康的であること)のために注力されていることはありますか。
 
キャシー氏:ワークライフバランスを大切にしています。週末には、アートやファッション、デザイン関連の活動を楽しみ、自分を大切にしていますが、仕事の日には仕事に集中しています。私は、論理的に物事を考えるタイプです。これまで学んだことをすべて活用して問題を解決し、創造性を高め、チームと関わり、それまでの過程を楽しんでいるのです。
 
また、PCゲームをするのが好きなのですが、それが私にとって瞑想のようになっています。「Interior Design」というゲームでは、何かを完成させ、仮想のお金を稼いでクライアントのために装飾の材料を買います。
 
 
ショーン:初めてお会いしたとき、あなたはハワイから戻ってきたばかりでテレワークをしていましたね。「テレワーク支持派」だとおっしゃっていましたが、テレワークが定着してきた社会で、今後企業はどのようなことが必要になってきますか。
 
キャシー氏:その質問に答える前に、テレワークの定義についてお話しする必要があります。多くの人は、テレワークを単なるWEB会議だけのものだと思っています。リモートワークの次のレベルは、自宅で基幹業務などに用いられる重要なアプリケーションにアクセスできるようにすることです。私が言うリモートワークとは、「基幹業務などに関わる重要なアプリケーションにアクセスできる」、「必要なデータをすべて取得し、必要な人とつながることができる」ものです。そうすれば、どこからでも仕事ができるようになります。
 
そこで、私はテレワークを試すためにどこかへ出かけようと考え、ハワイに行きました。一か月以上、ハワイで仕事をしましたが、必要なデータはすべてそろっていましたし、すべてのアプリにアクセスでき、世界中のチームともつながることができました。
 
ショーン:現在、企業は多様な背景を持つ人々に機会を提供することを重視しています。このようなことは、IT業界の将来にどのような影響を与えるとお考えでしょうか?
 
キャシー氏:私がソフトウェア会社で働き始めたときに学んだことは、ソフトウェアとは人のためのデザインであり、ハードウェアとは違うということです。例えば、「これは帽子です」と見せれば、この帽子がどのようなものかを知ってもらうことはできます。しかし、ソフトウェアは、人によって使い方やそれまでの体験が異なるため、ユーザーエクスペリエンスがより大切なのです。さまざまな人が使いやすいソフトウェアを作るためには、ダイバーシティ(多様性)が非常に重要です。
 
ですから、設計段階からさまざまな人にフィードバックをしてもらわなければなりません。ダイバーシティは、IT企業のDNAなのです。
 
 
ショーン:IT業界を目指している女性や、あなたのようなリーダーになりたいと考えている女性たちに何かアドバイスはありますか?
 
キャシー氏: 女性がIT業界で働くことをあきらめてしまうのは、サポート不足や、女性の成功体験があまり知られていないということが背景にあると思います。また、ITの仕事はつまらない、ストレスがたまるに違いない、プライベートがない、というイメージを持っている人が多いということもあるでしょう。しかし、そんなことはありません。私は言いたいのは、IT技術そのものに注目するのではなく、IT技術が社会に何をもたらすのか、個人と組織をどう変えるのか、そして今お話ししたように、ビジネスの未来をどう変えるかに注目してください、ということです。
 
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