サステナビリティの青写真~具体的な描き方~
人材サービスのスペシャリストが答えるQ&A

 

企業や経済が回復傾向にあるなか、ここ数年停滞していたサステナビリティ(持続可能性)への取り組みが再び勢いを増し、その優先順位を上げています。ヘイズ・ジャパンにて、ESG(環境・社会およびガバナンス)人材を専門とするシニアビジネスマネージャーのジェームズ・ナイトが、日本におけるサステナビリティとESGに対する意識の高まりや具体的な取り組みについて解説します。
 

Q最近、日本ではESGやサステナビリティへの取り組みが顕著になってきています。その背景にある要因とは?

サステナビリティへの取り組みが加速している背景には、いくつかの要因があります。第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)やパリ協定などの国際的な会合や協定により、世界各国の政府がトップダウンでサステナビリティに取り組むようになりました。日本では、2050年にカーボンニュートラルを実現するという目標以外に、環境・気候問題、インフラ投資、ジェンダー平等などの優先課題に基づいて策定された持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、社会全体での幅広いアプローチを実施しています。
 
このような公的なコミットメントが、民間の取り組みにさらなる勢いと支援をもたらしています。日本の企業は、サステナビリティとESGへの取り組みがもたらす長期的な事業価値と競争力をますます認識するようになり、結果としてESG分野への投資が増加。欧米と比較すると投資額は小さいですが、非常に早いスピードが見てとれます。
 

Q サステナビリティとESGへの取り組みをリードしている業界は?

これまでのところ、最も力強い成長を見せているのは、コンサルティング、製造業、金融分野です。ESGとサステナビリティは、日本では比較的新しい分野のため、ESG主導の戦略を検討し始めたばかりの企業は、コンサルティング会社の知見やサポートが必要かもしれません。グリーン・再生可能エネルギーに力を入れている企業も、公的なサステナビリティへのコミットメントや民間投資の増加に伴い、存在感を強めています。同時に、建物のエネルギー消費量の削減や効率性の向上の機運が高まるなか、製造業・建設業の企業も注目を集めています。
 

Q. ESGの目標を達成しようとする際に、企業が直面するであろう課題とは?

適切な経験やスキルを持つ人材の確保が大きな課題です。日本のESG分野は、ここ6~12ヶ月で急速に成長しており、国内での人材不足は避けられない状況に。その結果、一部の企業は海外からの人材採用に目を向けるようになりましたが、ほとんどのポジションで日本語のスキルが不足しているなど、別の課題が発生しています。
 

Q. ESG・サステナビリティ人材に投資するメリットは?

ESGに対する意識や議論が一般的になり、投資家がサステナブル投資の生み出す魅力的なリターンを認識するにつれて、資本を集める上でESG分野での採用がより重要になります。さらに、若い投資家はサステナビリティに関連した金融商品への投資意欲が高く、自分の価値観と合った企業へ投資をする傾向があります。戦略をリードし、サステナビリティの機運を活用すべく事業の足並みを揃え、絶え間なく変化する規制環境のなかでリスクを管理できる人材を確保することは、企業にもたらす収益の底上げにつながる革新的な契機となるでしょう。
 

Q. 日本におけるESGとサステナビリティについて、企業が今後期待できることは?

政府・経済・社会による強力な支援を受け、ESG分野の成長は続いていくことが予想されます。国内外の移動制限が緩和され、人材の流動性が高まれば、さらに成長が加速するでしょう。ESGの取り組みの多くは、これまで「環境」の側面に集中してきましたが、移動規制の緩和など明るい材料は「社会」や「ガバナンス」の推進に拍車をかけています。

ESGへの取り組みと価値の生成には、否定できない相関関係があります。その恩恵は、成長、評判、従業員の生産性の向上だけにとどまりません。市場の動きを考えると、ESGの取り組みの強化は、企業の長期的なサステナビリティの達成に大きく貢献することは間違いありません。
 
 
ESG分野の分析や、需要が高まっている職種やスキルについては、「インサイドストーリー:ESGとサステナビリティ」にて詳細をまとめています。
 
ESG関連の人材紹介やキャリアに関するご相談は、LinkedInまたはJames.Knight@hays.co.jpまでご連絡ください。