在宅勤務で生産性を飛躍的に高める方法
居心地の良い自宅でいかに生産性を維持するか、という在宅勤務ならではの問題にどのように向き合えばよいでしょうか?
私自身はかなり昔からリモートワーカーで、月・火・木など多忙な曜日は在宅で仕事をすることが多いです。
現下の状況では、役職、さらに言えば在籍企業の規模を問わず、リモートワークにおける高レベルの生産性維持は世界中の多くの人々にとって非常に現実的な問題となっています。しかし幸いなことに、その解決策を見出そうと努力し成果を出している人は多数存在しており、今回はそのための方法を紹介します。
在宅勤務/テレワーク時に生産性を維持するための4つの方法
在宅勤務がトレンドとして普及しているように思われる現在、少なくとも当面は、テレワークにおける生産性維持は私たちの大半が身に付けておくべきスキルといえます。そのため、ここではEmpact Venturesでの私の体験、そして破壊的な創業者、企業トップ、さらには非営利セクターの人々といった、私が共に仕事をした他者の体験を基に、生産性を飛躍的に高めるための幾つかのヒントを紹介したいと思います。
1. 自宅用の生産的な業務ルーティンを開発する
多くの在宅勤務者にとって「就業時間」という習慣的構造から離れることは、仕事と私生活の線引きを明確にしようとする努力している中でも、モチベーションだけでなくオーバーワークの問題を引き起こすおそれがあります。早い時間から仕事を開始するのも至極簡単なため、結果的に勤務時間が数時間増えたということもよくあります。同様に、寝坊してパソコンへのログインが数分遅れても眉をひそめる者はいません。
さらに、テレワーカーには通勤から休憩、昼食、予定されたミーティングといった、一日の中で仕事の区切りとなるオフィス勤務ならではの各種イベントもありません。そこで、在宅勤務でのルーティンを確立し、その中で生産性を高めるための幾つかの方法を以下に紹介します。
- オフィスで毎日行っていたルーティンを自宅で再現する必要はありませんが、仕事と私生活の線引きは必要です。ですから、毎朝仕事着に着替えてからその日の準備をし、その日にすべき重要な仕事をリストアップしましょう。そうすれば、今日は何をすべきか明確になり、優先順位を意識しながらその日の仕事に取り組むことができます。さらに、リストアップしたタスクにチェックを入れる毎に達成感を味わうことができ、モチベーション維持にもつながります。
- 朝晩の通勤の代わりに短時間のウォーキングをすれば、今後のことを集中的に考えるための時間となります。各種調査では、短時間のウォーキングによる屋外での息抜きは生産性向上やストレスの影響軽減につながることが判明しています。瞑想も室内の気を散らすものをすべてシャットアウトして仕事に対する気持ちを高めるのに有効です。
- バッファーが発表しているState of Remote Work 2019レポートによれば、テレワーカーの22%はオンとオフの切替えに苦心しています。ですから、仕事の開始・終了や休憩を毎日ほぼ同じ時間に取るよう心掛けましょう。在宅勤務においても良好なワークライフバランスの維持に積極的に取り組むことは、生産性の維持に不可欠です。
無論、人間は十人十色であり、すべての在宅勤務者は最終的には自分自身のルーティンを確立・維持していくことになります。在宅勤務の時間が増えてきたら、自分の気を散らすもの、集中力や生産性に悪影響を与えるものを意識するようにしましょう。例えば、昼下がりに持続力や集中力が落ちる傾向にある人は、机のそばに体に良いスナック食品を用意しておいたり、短時間のウォーキングをしたりすると良いでしょう。オフィスでのルーティンと同等の、あるいは自分にとってそれ以上の効果を発揮するシステムはすぐに見つかるでしょう。
2. より生産的なコラボレーション&コミュニケーションのためにテクノロジーを活用する
上述のバッファーが発表したState of Remote Work 2019レポートによれば、テレワーカーの17%は、生産性を維持する能力に多大な影響を及ぼす同僚とのコラボレーションに苦心しています。しかし、実際に席を並べていなくても同僚とのつながりやコラボレーションを向上させる(ひいては生産性を高める)方法は沢山あります。SlackなどチャットチャネルやAsanaなどワークマネジメントツールを利用して、同僚と絶えず連絡を取り合うようにしましょう。また、SkypeやGoToMeeting、HipChatなどオンライン会議ツールを利用すればオンライン会議やプロジェクトのアップデートも互いの顔を見ながら可能で、全員の作業場所が異なる場合でもチームの一体感を維持することができます。
しかし、ここで1点忠告があります。それは、あらゆるテクノロジーが在宅勤務者にメリットをもたらすわけではないということです。ソーシャルメディアやゲームアプリ、テレビはいずれも、皆さんの気を散らし業務フローを邪魔することで生産性に影響を及ぼすおそれがあります。こうした問題に直面している人は、就業時間中は不可欠ではないあらゆるテクノロジー製品の電源を切っておきましょう。
Empact Venturesは昔から勤務時間の約半分を各自の自宅または英国内のどこかからのテレワークでこなしており、テクノロジーがチームのコラボレーションに大きな役割を果たしています。ドキュメントに絡む共同作業はGoogleアプリ、ビデオ会議/電話会議および会議を必要としない情報回覧のための音声記録の共有にはGoogle ハングアウト、スケジュールやタスクの管理にはTrelloなどその他のツールをそれぞれ活用しています。
さらに心に留めておくべき重要なことは、テレワーク時の生産的なコラボレーションに関しては、効果を発揮するアプローチやツールは企業、さらに言えば個々の従業員によって異なることです。しかし、どのケースにも共通するのは、定義されたプロセスの必要性です。Zasteo共同創業者兼CEOのグナー・ブレスは、自身の考えを次のように語っています。「テレワークという状況下で高レベルの生産性を実現させることは非常に重要です。そのためにはまず、従業員間のコミュニケーションや連携を促進させる各種ツールを用意する必要があります。しかし、そのためにはチームミーティング経由であれ、ソフトウェア側の統合プロセス経由であれ、その他のチェックインポイント経由であれ、コミュニケーションが確実に行われるようにすることも必要です。無論、特に現在のような困難な時代にはモチベーションを維持することは重要ですので、互いの顔を見ながらの定期的なバーチャルミーティングや皆で取り組む社会活動も私たちにとって重要な部分を占めています。」
3. テレワーク時に抱く疎外感に向き合う
多くの人は、集中や潜在的な生産性向上を可能にする在宅勤務時の平穏と静けさを好みます。しかし、バッファーの調査によれば、リモートワーカーの19%は孤独に苦しんでいると語っています。さらにOWL Labsが先日行った調査によれば、在宅勤務者が無くなって寂しく感じるものとして48%はオフィスでの会話、40%は職場での各種お祝い、34%はオフィスの文化をそれぞれ挙げています。
孤独感や疎外感は、私たちの生産性に連鎖反応を起こす可能性があります。つまり、このヘイズジャーナルの記事で説明されているように、帰属意識は人間のもっとも基本的かつ根本的なニーズの1つであり、同僚との交流も無く来る日も来る日も1人で働いているとより広義のチームの一部として感じることが困難になり、疎外感や孤独感に襲われる可能性があります。
そのため、自分の労働生活に占める重要な部分が失われないようにするために、在宅勤務の場合は電話や互いの顔を見ながらのビデオ会議から1日の仕事を始めるようにしましょう。可能な場合は、同僚との関係性発展をサポートするビデオ会議を行いましょう。同僚の誕生日を把握しておき、自分が相手のことを気に掛けていることを理解してもらうために忘れずにメッセージや電話で気持ちを伝えるようにしましょう。こうした行いは必ず目に留まり、生産性の向上や孤独の排除といった職業的交友関係における心理学的および専門的メリットを享受しつつチームとのつながりを維持するうえで役立ちます。
さらに、Ugenie共同創業者兼CEOのスーザン・カバニが語っているように、会社の同僚やより広義のネットワーク両方で、互いの顔を見ながらのバーチャルコミュニケーションを積極的に行うことも重要です。「特にスタートアップ創業者としてのテレワークは、かなりの孤独を伴う可能性があります。しかし幸いにして、デジタルテクノロジーにより他者とのつながりを維持することはかなり容易になりました。目下のコロナ禍前でも、私たちはZoomやUgenie、Slackを活用してチームやクライアント、パートナーとのコミュニケーションを行っていました。ここ数週間でも、これらのテクノロジーは前代未聞の時代において様々な企業が互いにつながりサポートを受けるうえで役立ってきました。私は現実世界で誰かと会うことが大好きですが、こうしたオンラインでのミーティングやイベントは他者とのつながりを維持するうえで実に有益かつ非常に効率的な方法といえます。」
4. 自宅の労働環境を最適化する
最近のオフィスは、人間工学に基づくデザインの椅子や心を和ませる色使い、専用の休憩エリアなど仕事のし易さを追求したデザインとなっています。これらの多くを自宅で再現するには限界があるかもしれませんが、生産的な作業空間作りには幾つかの近道があります。
自宅内に自分専用の簡易オフィスを作ってみましょう。自分専用といっても、他者を入れさせない個室でもディナーテーブルを置いた場所でも構いません。ソファやベッドで過ごしているとオフィスにいる時のような集中力が失われるおそれがありますので、仕事中はこれらの場所にいないようにすることが重要です。
往来の激しい通りの傍に住んでいる場合は、高性能のノイズキャンセリングヘッドフォンの購入を検討してみましょう。私も最近購入したのですが、これを使えば耳障りなクラクションやエンジン音に悩まされずに済みます。あるいは、「静かすぎる」環境に悩んでいる場合は、ボリュームを低くしてBGMのように音楽を掛けてみましょう。集中したい時にはバロック音楽や環境音楽が特に有効といわれています。
最新式のオフィスのゆったりとした感覚を再現するには、家具や不要なものを最小限にしましょう。自宅オフィスの壁を気分の高揚をもたらす青や白、集中力を高めると言われている緑といった色調でペイントするのも良いアイデアかもしれません。また、観葉植物を置くことは室内の空気の改善や気分の高揚、生産性の向上につながります。こうしたちょっとした工夫は、自宅オフィスを快適かつ生産的な場所とする上で有効です。
座り心地の良い椅子やジェル製のリストレスト、目の高さに合わせた2台目のモニター、高さのあるキーボードは、生産性を高める快適な作業空間を生み出しつつ反復運動損傷(RSI)などデスク周りの問題に関するリスク軽減に有効です。
仕事は自宅のオフィススペース以外ではしないようにしましょう。これは自宅全部を自由に使える場合は思ったより難しい話になりますが、リビングや寝室で仕事をしていると、すぐに仕事と私生活の区別がつかなくなるでしょう。これでは夜に仕事を終えて朝に仕事を始めるようモチベーションを維持するのが困難になり、生産性に悪影響を及ぼすばかりです。
最後に、最適な作業環境は人によって異なると理解しておくことが重要です。カバニが語っているように「生産的なオフィスを構築するうえで重要なのが、自分に最適なものは何か理解することです。私の共同創業者は、私生活と仕事を区別する独立したスペースを必要としています。彼は祝日であっても、無論コロナ禍前から、生産性を最大化させるためには自宅内の静かな部屋が必要と語っています。私の場合は、もっとも居心地の良い環境にいる時が一番生産性が高いです。良好なWi-Fi接続に高性能のPowerPoint、ノートパソコンとコーヒーがあれば大満足です。」
在宅勤務やテレワークは、無数の気を散らすものや家族からのプレッシャーにさらされながら同僚やより広義の労働力からの孤立を余儀なくされ、生産性の減少を招くことを意味するのではありません。それどころか、実践的な作業環境を作り、ルーティンを守り、同僚との関係性を維持し、最新のテクノロジーを活用することで、在宅勤務時の生産性向上を確かなものとすることができるのです。
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