パンデミック、不景気…困難な時期の転職活動で大切なこと
転職をお考え中の皆さん。新型コロナ発生前後で、皆さんのお気持ちに変化はありましたか?中には、パンデミックの影響で環境が変化し、転職を余儀なくされている方もいらっしゃることでしょう。
たとえ景気が不透明でも、経済状態が悪化していても、新しい仕事を見つけることは可能です。ヘイズのCEO、アリスター・コックスが言うように、「世界は絶えず優秀な人材を求め続けて」いるのです。
このコラムでは、転職活動する皆さんのために、昨今のような困難な時期の転職活動に必要なステップをご紹介しましょう。
1. キャリアに自信を持ちましょう
「キャリアアップに役立つ資格やスキルがない」、「オフィスで働いていた時のように好意的な評価が得られず自信が持てない」、などと感じてはいませんか?この大変な数か月間で、あなたが自信を喪失してしまったとしても無理はありません。しかし、冷静になって考えてみましょう。あなたの強みは何ですか?あなたが真価を発揮出来る分野は?自分の弱点や短所に囚われすぎずに、自分の長所を延ばすことを心がけましょう。
短所について考えるときは、常に成長を目指す気持ちを忘れないで下さい。短所だからといって引け目を感じることはありません。あなたが理想のプロフェッショナルになるために、成長の「伸びしろ」が残されているだけなのです。
では、私たちはスランプを感じたとき、どのようにすれば自信を回復することが出来るのでしょうか。ハーバード・ビジネス・レビュー誌のコラムにお勧めしたい記事があります。この記事は、キャリアに自信を無くした読者の質問に回答する形式で構成されており、皆さんにもきっと共感出来るケースがあると思います。例えば、ネガティブな評価を受けたときの立ち直り方、ミスをしたときの気持ちの切り替え方などが紹介されています。
今回のパンデミックで、私たちの働き方も新しい時代に突入しました。こうした時代の中で、キャリアへの自信を回復させるためには、さまざまな方法が考えられます。まずは自分が達成したことや成功したこと、困難な課題を克服したことなどを思い出しましょう。また、毎日仕事を終えて寝る前に、その日のうちに成長したことや進歩したこと思い出して、自分自身を褒めてあげる訓練をしても良いでしょう。注意しなければならないのは、決して他人と比べて評価しないことです。
自信が回復してくると、転職活動で自分を上手くアピール出来るようになり、転職先に対してどのように貢献出来るか効果的に説明出来るようになります。
2. キャリアアップ以外の選択肢も視野に入れましょう
昨今の環境下では、様々な視点から将来を考えることが大切です。転職をキャリアアップの手段と考えてきた人も、現在と同レベルの仕事に転職することを考えてみて下さい。不足しているスキルの習得など、今後のキャリアにメリットとなる成果が期待出来るかもしれません。
例えば、あるファイナンス・マネージャーは、会計の管理や損益計算について十分なスキルと経験があり、今後数回の転職を経てファイナンス・ディレクターのポジションに就くことを希望しています。しかし、職務経歴書などによると、このファイナンス・マネージャーにはバランスシートを作成するスキルが不足しているようです。この場合、このマネージャーにはバランスシートに関するスキルを身につけるため、同レベルの仕事に転職する選択肢も考えられます。こうした転職活動は、「horizontal move」と呼ばれています。すぐに自分が目指すゴールにたどり着けるわけではありませんが、将来の目標達成に必要なスキルを獲得することが可能になります。
また、他の業界への転職も一考の価値があります。テクノロジー、ライフサイエンス、イーコマースの分野は、今のところ人材採用に積極的です。転職活動は、多様な選択肢を視野に入れて、戦略的に行っていきましょう。また、必ずしも正社員が最良の選択であるとは限りません。派遣社員や契約社員の仕事を通して、他業種でのスキルや経験を積むことだって可能です。派遣社員や契約社員での経験が、のちに正社員の仕事を獲得するステップになることもあるのです。
3. まっすぐに進むだけがキャリアアップではありません
リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット両教授は、共著「The 100 Year Life(仮題:人生百年時代)」の中で、平均寿命の延伸により私たちの生涯労働期間が長期化し、キャリアの方向性も多様化している、と指摘しています。私たちが社会に出た頃には想像すら出来なかった大きな変化が、今起こっているのです。
多くの人々が70代、80代まで働き続ける時代が来るかもしれません。働き続きける期間が長期化すると、仕事や業種を変えたり、副業を持ったり、キャリアパスを刷新したりして自分自身に刺激を与え、仕事への関心を持ち続ける工夫をする必要が出てくるでしょう。
転職の目的をステップアップに限定する必要はないのです。新しい業界にチャレンジしたり、改めて教育を受け直すのも良いでしょう。ひょっとしたら現在の仕事の中にも、興味ややりがいを持てるようなステップがあるかもしれません。
次の仕事が最後の仕事になるとは限りません。これからのキャリアの中で、皆さんはもっと多くの経験を積むことでしょう。このブログを読んで、皆さんが少しでもプレッシャーから解放され、明るい見通しを持つことが出来れば幸いです。
4. キャリアの目標を振り返ってみましょう
正しくキャリアを歩むため、自分自身の最終目標を見つめ直すことも大切です。あなたが最後に将来のことを考え、スキルや経験などを振り返ったのはいつ頃ですか?将来の目標や現在の業界に満足していますか?今の仕事はあなたにとって有意義なものですか?本来の自分自身を生かし切れていますか?あなたのスキルを活かすチャンスはありますか?不足しているスキルがあるならば、勉強を続ける意思はありますか?
今までこうしたことを考えたことがなかったのならば、今すぐにこれらのことを振り返ってみましょう。パンデミック前にあなたがしていた仕事について、あなたはどのように考えていましたか?パンデミックは確かに私たちにとって大きな危機です。しかし、この危機がもたらした変化は、あなたが勇気を奮って今後の人生とキャリアを切り開いていくチャンスでもあるのです。
ヘイズのCEO、アリスター・コックスの言葉は、正に今のあなたに対するアドバイスとして相応しいのかもしれません。「立ち止まらずに、夢を追い続けて下さい。自分の可能性と向き合い、これを実現する方法を考えましょう。あなた自身が自分の人生やキャリアに望むことを大切にして下さい」。
将来達成したいことを、はっきりと思い描くことが出来ますか?思い描くことが出来れば、転職先も探しやすくなり、チャンスにも恵まれ、目標とするキャリアもぐっと近づいてくるのです。それだけではありません。自分を振り返ると新しい発見をすることがあります。これに気付けば、自分がその仕事に最も相応しい人材であることを効果的に伝えることが出来るようになるでしょう。
5. ソフトスキルのアピールを忘れずに
あなたのソフトスキルは、今だけでなく、将来の仕事にも役立つものですか?これからの時代に益々必要とされるスキルですか?そのスキルを面接で分かりやすくアピールすることは出来ますか?例えば、「適応性」、「学習意欲」、「EI(心の知能指数)」、「対人スキル」、「コミュニケーションスキル」、「問題解決能力」、「創造性」などは、新しい時代に益々必要とされるソフトスキルとされています。
皆さんは、これまでも数多くのスキルを身に着けてきたことでしょう。身についたスキルは、他の仕事にもきっと応用することが出来るはずです。これを面接でも十分にアピールしましょう。フォーブス誌の記事によると、失業中の労働者のうち、「(自分が持つスキルの中で)自信を持って他の仕事で使えるスキルが分からない」と回答した者は57%に上りました。58%は、「応用出来るスキルはあるが、履歴書にどのように書けばよいか分からない」と回答しています。このような悩みをお持ちであれば、ヘイズ・ポーランドのマネージング・ディレクター、マーク・ブラジのアドバイスが参考になるかもしれません。ブラジのブログでは、他の仕事でも使える、彼の言葉を借りるならば、「隠れた」スキルを見つける方法や、そのスキルを活用出来る仕事の見分け方について説明しています。
自分のスキルをもう一度詳しく見つめ直してみましょう。そして将来への変化に備え、他の候補者よりも有利に転職活動を進めましょう。
6. 積極的にスキルアップして、苦手分野を克服しましょう
スキル不足を感じたら、積極的に学習する習慣を身につけましょう。オンラインなど様々なリソースを活用して、目標達成のために努力して下さい。高いスキルを身に着ければ転職のチャンスも広がりますし、応募先の企業に「学び続ける意欲がある人材」であると印象付けることも出来ます。ヘイズのグループ・ヘッド・オブ・チェンジであるアレックス・フレイザーは、「今は誰もが自分の仕事の先行きに不安を覚える時代」と語り、「スキルの向上を図ることで、こうした不安を和らげることが出来る」とスキルアップの効用について説明しています。
スキルアップには様々な方法があります。自宅待機や在宅勤務中であれば、本やポドキャスト、オンラインイベントやウェビナー、インターネットの講座受講など、学ぶリソースは沢山あります。会社が用意しているトレーニングなどを活用しても良いでしょう。
アリスター・コックスは、「世界は絶えず優秀な人材を求め続けています。求められる人材の条件は変わるかもしれません。しかし、私たちには学び続ける力があります。今学ぶべきことを理解し、これからも学び続けて下さい」と皆さんにエールを送っています。
7. 履歴書には常に最新の情報を
私たちの働き方は大きく変化しましたが、転職活動で履歴書が果たす役割はパンデミック以前と変わりません。履歴書は、あなたを転職先にアピールする重要な書類です。作成の仕方については、ヘイズのサイトなどを参考にしても良いでしょう。履歴書の構成や志望動機の書き方、効果的なスキルのアピール法など重要なポイントがまとめられています。
また、AI審査に備えた準備も必要です。最近はAIが初期の審査を行うケースも多いので、履歴書をアルゴリズムに適した仕様で作成する必要があります。アルゴリズムが認識しやすいキーワードを調べて、履歴書に使用しましょう。目指す仕事のジョブ・ディスクリプション(職務記述書)を参考に、どのキーワードを、どの文脈で使用するかを決定するのもお勧めです。「プロジェクトマネジメント」、「ガバナンス」、「効率化」、「安全衛生」、「財務報告」、「予算管理」など、自分自身の職務に関連するものをキーワードに使用するのが一般的です。
志望動機の書き方にも注意しましょう。英国政府投資会社の最高執行責任者であるスージー・ティムリン氏は、「履歴書はエレベーターピッチ(簡潔で分かりやすい)」でなければならない、と述べています。詳しくは、同氏のブログをご確認下さい。
最後に、履歴書は、応募する仕事に合わせて書き換えることが大切です。その理由と方法については、ヘイズ・ベルギーのマネージング・ディレクター、ロビー・ヴァンクセムのブログをお読み下さい。
8. パーソナルブランドを大切にしましょう
「パーソナルブランド」とは、つまるところあなたの「セルフプロモーション」です。パーソナルブランドを効果的に活用すれば、昨今の厳しい状況下でも新しいチャンスを見つけることが出来るかもしれません。ソーシャルメディアを駆使して専門分野などをアピールし、ささやかでも良いからパーソナルブランドを新しくしていきましょう。特にLinkedInのプロフィールは定期的に更新し、新しいスキルを習得した場合には書き加えておくことが大切です。
ソーシャルメディアのネットワークを使って業界の最新ニュースや、これに対する自分の意見を発信しても良いでしょう。ネットワークの中で注目を集めるようになれば、リクルーターや他の企業の担当者の目に留まるかもしれません。
LinkedInのプロフィールを更新するときは、設定を「open to work」に切り替え、リクルーターが連絡を取りやすくなるよう工夫しましょう。求職中であれば、ソーシャルメディアを通して知り合った人たちに周知することも選択肢の一つです。パンデミックが終息の兆しを見せない今、実際に相手と対面出来るようになるまでにはまだまだ時間を要する地域もあるでしょう。このため、ソーシャルメディアを有効活用出来るか否かは極めて重要です。LinkedIn Groupsの中から自分のキャリアにとって有意義なグループを見つけ出して加入し、そこで自分の経験を伝えたり、目標とする仕事に就いている仲間のアドバイスを求めたりしてみても良いでしょう。
ヘイズでソーシャルメディア事業を統括するグローバル・ヘッド、キャサリン・ガッツェルは、オンラインを使ったパーソナルブランドの活用方法についてまとめています。パーソナルブランドは、確りと管理していくことが大切です。グーグル検索で自分の名前をサーチしたり、ソーシャルメディアのプロフィールを見直したり、Google Alertsなどを活用して、自分のブランドを大切にしましょう。ぜひ、前述のブログを参考にして下さい。
9. オンライン面接のスキルを身につけましょう
今後オンラインで面接を導入する企業は増加し、最終的には日常的に定着するものと思われます。オンライン面接に必要なスキルは、早めに身につけておきましょう。そして、ラップトップやタブレット、スマートフォンなど、どんなツールを使用しても自分自身を効果的にアピール出来るようにしておきましょう。
面接の受け答え自体は、対面式の面接とそれほど大きな違いはありません。準備や一般的な質問に対する答え方などは、ほぼ同じであると言っても良いでしょう。しかし、オンライン面接には特有の課題があります。
例えば、今あなたが過ごしている環境は、オンライン面接に適した環境ですか?ツールやテクノロジーを使いこなすことは出来ますか?ボディーランゲージの効果について把握していますか?オンライン面接が決まったら、指定されたソフトウェアを使って面接前に必ず「リハーサル」して下さい。声が小さすぎたり大きすぎたりしていないか、また、回答に時間差が生じていないかをチェックしておけば、本番で慌てることはないはずです。
ヘイズでは、オンライン面接を受ける皆さんのために、様々なアドバイスをご用意しています。面接を待ちながらポジティブな気持ちになれる方法や、新型コロナウィルスに関して想定される質問などもその一部です。
10. ポジティブな気持ちを忘れずに
誰にとっても今は大変な時期です。置かれた状況も、考えることもそれぞれ異なります。加えて求職活動が難航すれば、プレッシャーは何倍にも増幅するでしょう。それでもポジティブな姿勢を忘れずにいて下さい。あなたにしか発揮出来ない強みやこれまでのキャリアで築き上げた実績。これらを忘れずにいれば、きっとチャンスは巡ってきます。
今は我慢の時期です。転職活動で理想の仕事にすぐに巡り合える可能性は、残念ながら低いと言わざるを得ません。しかし、覚悟を決めて転職活動を続けていれば、きっとあなたに相応しい仕事が見つかるはずです。
自分を気遣うことも忘れないで下さい。現在のように厳しい状況下では、自分で自分の健康やメンタルに配慮することが重要です。また、転職活動は、自分が学び、成長するための機会であると考えて、成長への意欲を捨てずに取り組んで下さい。
11. リクルーターに相談しましょう
転職市場について、豊富な知識を持っているのがリクルーターです。また、あなたの可能性を実現するチャンスを提供してくれるのも彼らです。転職活動に勝ち抜くためのアドバイスをしてくれるかもしれません。ヘイズのCEO、アリスター・コックスは、次のようにリクルーターへの相談を奨励しています。「(困ったときは)リクルーターに相談してみましょう。クライアント企業が求める人材、競争が激化する転職市場で必要なスキル、求職者の成長。私たちは様々な角度からアドバイスをすることが出来ます」。
このブログの最初でお伝えした通り、厳しい時代であっても新しい仕事を見つけることは可能です。これまでご紹介したステップを参考に、あなた自身の長所を存分にアピールして、危機を契機に生まれた新しいチャンスを十分に活かして下さい。
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著者
ギャリー・ブレイク
ヘイズUK&I ディレクター・オブ・パーマネント・アポイントメンツ・アンド・コンストラクション・アンド・プロパティ
1999年にヘイズに入社し、ロンドンのヴィクトリアにある建設・不動産部門でキャリアをスタートしました。以降さまざまな業界のコンサルティング業務や事業運営に携わり、2009年にはHays Career Transitionsプロジェクトの立ち上げにも参加しました。2018年には、ヘイズUK&Iのディレクター・オブ・パーマネント・アポイントメンツに任命されています。Universities of Warwick(ウォーリック大学)と Universities of Bath(バース大学)を卒業。経営学で学士号(honours degree)と修士号を取得。