転職先が期待外れだったら…次に取るべきステップは?

 

新しい仕事が期待外れだった…と感じたことはありませんか?役職も上がり、参加しているプロジェクトのやりがいも高まっています。以前の仕事よりも高い報酬を手にし、経済的にも報われています。あなたは期待通りのものを手に入れているはずです。それなのに、なぜ新しい仕事を楽しむことが出来ないのでしょうか。

「転職自体が間違いだったのでは」と悩むこともあるかもしれません。お気持ちはお察ししますが、あなたが今どのような状況に置かれていようとも、思い付きで退職することはお勧めしません。後で後悔することは目に見えているからです。今の仕事を辞める前に、次を参考に積極的に行動してみて下さい。

1. 忍耐強く、そして自分に優しく 変化への適応は、実はそれほど容易なことではありません。適応にかかる時間は人それぞれで、自分自身の人生が大きく変化した時に、他の人たちよりも 長く時間を要する人もいます。そして転職は、人生最大の変化の一つと言えます。転職先での仕事の仕方や過ごし方は、その多くが以前の職場とは異なるでしょう。ですから、あなたが今の環境に気後れしているとしても無理はありません。そんなときは自分に優しくしてみましょう。慌てて周囲に馴染もうとしなくても良いのです。時間をかけて新しい同僚や仕事、スケジュールの決め方、さまざまな社内手続き、システムや社内ツールに慣れて行きましょう。あなたが現在抱いている感情は、決して異常なものではありません。時間が経てば解消されていく一時的なものです。事実、あなたはこれまでの転職を経験し、こうした変化に上手く適応してきた実績があるのです。今回もきっとこれまで同様に対応出来るでしょう。

2. 根本的な原因を理解する 新しい職場で心地よく過ごすために必要なのは、ネガティブな感情を引き起こしている根本的な原因を突き止め、積極的に対処していくことです。あなたは新しい職場に不安を感じているだけなのでしょうか?それとも、新しい仕事が自分の希望にマッチしていなかったのでしょうか?あるいは、仕事自体には問題がないけれど、通勤時間や上司との関係に支障があるのでしょうか?ひょっとしたら、自分が果たすべき役割を本来のスピードで即決出来ない、またはミスが続いて悩んでいる、などといった事情はありませんか?自分の役割が曖昧なことや、新しい同僚との関係に悩んでいるのかもしれません。このように、問題の所在に気付いた時は、解決に向けて積極的に取り組みましょう。上司に相談しても良いでしょうし、仕事以外でつながっている人たちに支援を求めたり、リクルーターに打ち明けてみても良いでしょう。リクルーターは、こうした困難な時期に適切にあなたを導いてくれるはずです。

3. プラスの面に目を向ける 転職して良かったと思うことをすべて書き出してみましょう。例えば、やりがいのあるプロジェクトを任されたこと、自由に決定できる裁量権を与えられたことなど、思いついたことを書いてみるのです。プラスの側面を探し出すことで、気持ちが引き締まり、新しい仕事に対するネガティブな感情が改まることがあります。転職した動機、つまり新しい挑戦やチャレンジを求めていた気持ちを思い出しましょう。視野を広げれば、人生とキャリアに新しい扉が開いていることに気が付くのではないでしょうか。ただし、このように視点を変えても今の仕事にやりがいを見い出すことは出来ないかもしれません。それでも短期的にはその仕事への満足度も高まるでしょうし、自分が何を仕事に求めるものも改めて明確になり、今後の転職活動の一助になると思われます。

4. 現実を見る 完全に自分の希望を満たしてくれるような仕事は存在しません。しかし、あなた自身が現在の仕事に対し、他の仕事よりも気に入った点があることは事実でしょう。時間が経てば、徐々に自分が希望していた通り、または自分の強みを生かせるように現在の職務をアレンジしていくことも出来るかもしれません。新しい上司や仲間と共に仕事を進めているうちに、当初は悩みの種であったことも、最終的にはそれほど気にならなくなるかもしれません。しかし、ブラック企業のような社風やパワハラ上司といった、時間をかけても解決の見込みが立たない問題に悩んでいるのであれば、これらから目を背けないことも重要です。

5. グロース・マインドセットで仕事に臨む 入社後の数日間、数週間、数か月間は覚えなければならないことが沢山あります。だからといって及び腰になったり、自信を無くしたりすることはありません。あなたの視野を広げ、新しいスキルを身に着けるチャンスと捉えれば良いのです。また、履歴書やLinkedInのプロフィールを更新し、身に着けたスキルなどを具体的に記載しておきましょう。次の転職時に非常に役立ちます。最終的に現在の仕事に満足出来なかったとしても、あなたの市場価値を高めて他の企業にアピールする貴重な「足がかり」となるのです。現在の仕事から、可能な限り多くのことを学び、身に着けて下さい。

6. 新しい同僚との関係を築く 一部の研究によると、同僚と強い関係を維持すれば、仕事への満足感や貢献度、生産性が向上することが分かっています。あなたの同僚は、あなたが当初考えていたよりも親切で親しみやすい人たちかも知れません。彼らは、心が通じないロボットや機械ではないのですから。新しい仕事で悩みが生じたら、思い切って相談したりランチに誘ってみるのはいかがでしょうか。あなたが現在不安に感じたり、ためらって質問出来ずにいることは、ひょっとしたら彼らも転職時に経験したことなのかもしれません。

7. 以前の仕事と比較しない かつての職場と現在の職場を比較しすぎるのは良くありません。例えば現在の同僚に向かって、「以前の職場では、こうしていたのに…」など愚痴をこぼすことは極力控えましょう。あなた自身の気持ちが後ろ向きになるばかりか、同僚の気分を害することにもなりかねません。以前の会社で一緒に働いた仲間を懐かしんだり、自分がリーダーをしていたプロジェクトの進捗具合を心配しすぎるよりも、転職先で得た新しいチャンスにもっと目を向けましょう。自分が転職した動機をもう一度思い出し、新しい仕事を長期的な視点から見つめ直してみるのです。少なくとも、あなたは自分のキャリア目標に一歩近づいています。この転職をしなければ、あなたは今でも以前の職場で燻っていたはずなのですから。

8. 決断のタイムリミットを決める 仕事を続けるか、退職するか-決断にはタイムリミットを設けましょう。事態の好転を待ちすぎて、結論を先延ばしするのは良くありません。但し、結論が出るまでの間は、可能な限り同僚のことを知り、仕事に貢献するよう一生懸命努力して下さい。メンターを紹介してもらったり、上司と毎週ミーティングを行いこれまでの経緯を相談しても良いでしょう。それでも状況が改善されず、また改善の見込みも立たないときに退職を考えれば良いのです。

このような努力をして数ヶ月、1年たってもあなたの気持ちに変化がなければ、改めて転職を検討すべきなのかもしれません。また、こうした努力をしておけば、あなたは少なくともこの機会に最善を尽くした、状況打開のために可能な限りのことをした、と達成感を得ることが出来ます。

転職活動を再開するならば、あなたがこれまでに学んだことをじっくりと振り返り、新しい仕事に何を求めているのかを確りと把握するよう努めましょう。キャリアは、人生における「旅」のようなものです。目的地に到達出来ないこともあるでしょう。しかし、大切なのは、それぞれの経験から学び、ベストを尽くして次のステップに踏み出すことなのです。

 

クリス・ドッティ

マネージング・ディレクター

ドッティは英国のリバプール出身で、1996年にヘイズに就任。ヘイズUKとヘイズ・ポルトガルde後、2002年にヘイズ・スペインに異動。ドッティはヘイズ・スペインの全4拠点(マドリード、バルセロナ、バレンシア、ビルバオ、セビリア)を統括するマネージング・ディレクターを勤めている。

ドッティは、アストン大学で国際ビジネスと現代語を専攻し、l’École Superieur de Sciences Commerciales d’Angersで1年間研究していた。大学卒業後は、アッシュブリッジ・ビジネススクールとIMDの社会人教育コースを卒業し、現在はビジネスや国際取引に関するパブリック・コメンテーターとして活躍している。