フルタイムでテレワーク?その前に考えるべき9つのポイント
今回のコロナ禍をきっかけに、私たちの働く環境は大きく変化し、テレワークも瞬く間に普及しました。これから迎える新しい時代では、「9時から18時まで」のオフィス出勤よりも、テレワークの方が主流になるでしょう。経営者も労働者も、この数ヶ月の間に、従来オフィスで行ってきた仕事の多くが社外でも実行可能であることに気付いたのです。
テレワークは、コロナ危機の数ヶ月間で世界的に普及しました。しかし実は、今回の危機が本格化する前からテレワークの導入率は上昇しており、米国では2005年から2017年の間に15%増となっています。直近の調査では、今年の6月に在宅勤務をしていた英国の労働者が49%に達したことが明らかになりました。
オフィス勤務とテレワーク、仕事をしやすいのはどっち?
今回のコロナ禍で、テレワークを初めて経験した方もいらっしゃるのではないでしょうか。テレワークを楽しんでいますか?楽しんでいるみなさん、それはオフィスよりも生産的に仕事が出来るからでしょうか。それとも、ワークライフバランスが充実するからでしょうか?テレワークを働き方の選択肢として導入する企業は、増加傾向にあります。
新しい働き方が求められる時代の到来で、多くの企業がテレワークの恒久的な導入を検討しています。みなさんの勤務先も、テレワークの継続を積極的に考えていらっしゃいますか?勤務先の意向が分からず確認したい場合は、上司と協力して対処する方法も考えられます。これについて、ヘイズ・オーストラリア&ニュージーランドのマネージング・ディレクター、ニック・デリギアニスは自身のブログの中で、テレワークによる成功事例をまとめ、その証拠と一緒に提示してアピールするよう助言しています。もしあなたの勤務先が、こうしたフレキシブルな働き方の制度に無関心ならば、転職を考えるのも一考に値します。
テレワークに完全に切り替える前に
さて、数ヶ月間の短期間はテレワークに順応出来たとしても、これが長期間に及ぶとどうでしょうか?
テレワークを恒久的に続けていくことは、果たしてあなたにマッチした働き方なのでしょうか。ここに、いくつかの質問事項を用意しました。転職活動を始める前に、これらに対するあなたの答えを考えてみて下さい。
1. テレワークとオフィス、効率が良いのはどっち?
テレワークには通勤の負担を避け、友人や家族と過ごす時間が増えるというメリットがあります。けれど、ここは率直に振り返ってみましょう。テレワークでもオフィス同様に生産的な仕事が出来ていますか?テレワークは、必ずしも全ての労働者にとって最適の働き方とは言えません。テレワークには、高い自己管理能力とモチベーションのほか、優れたコミュニケーション能力と自発的に仕事をする姿勢が必要です。そして、例えこれらの適性を備えていたとしても、オフィスで働く方が能率が良い場合、同僚と直接会って仕事をしたい場合、オフィスで共に過ごすことで刺激を受けたい場合もあるでしょう。ですから、どちらの働き方が適しているかをじっくりと考えてみることは、最高のパフォーマンスを上げるためにも重要です。では、この二つの異なるワークスタイルによる自分の生産性を比較するためには、何をすれば良いのでしょうか?それは、アウトプット(結果)を素直に受け止めることです。テレワークとオフィスでは、それぞれ何件の仕事やプロジェクトを完了することが出来ますか?ハーバード・ビジネス・レビュー誌で紹介された公式に従って(生産性=アウトプットした個数÷インプットした個数)考えて見ましょう。
2. テレワークで働くことに、自信はありますか?
働き方に関わらず、仕事で優れた結果を残すためには自信が必要です。しかし、テレワークでは、この自信が特に強く求められます。ヘイズUKのディレクター、ロディ・アデアは最近のブログの中で、テレワークで自信を持つことが必要になるケースとして、新しいツールを使いこなす場合、オンラインミーティングでプレゼンをする場合、毎日のスケジュールをしっかり管理して健康に留意しながら生産性を上げる場合など、数多くの例を紹介しています。また、実際に対面出来ない同僚とコミュニケーションとるときも、高いコミュニケーション能力と自信が必要です。テレワークでは、オフィスのように、上司や仲間からの励ましなどは期待できません。困難な仕事に従事していても、「頑張ったね」など励ましの言葉をかけてもらったり、メッセージをもらったりすることも少なくなります。
3. どこでテレワークをしますか?
テレワークをする場所は、テレワークを戦略的に考えるためにも大切なポイントです。自宅で仕事に専念できる部屋やスペースはありますか?カフェで仕事をすることはありますか?大切な電話やプレゼンが出来る、静かな場所を確保することは出来ますか?これらの質問に答えているうちに、あなたがどのようにテレワークを進めればよいのか、また、あなたはテレワークで最良のパフォーマンスと生産性を達成出来るのかどうかを、具体的に考えていくことが出来ます。また、健康に負担をかけずに目標を達成するためにも、この質問への答えが参考になるかもしれません。
4. チームの仲間や上司とのコミュニケーションは良好ですか?あなたの仕事の状況は、周囲に伝わっていますか?
チームの仲間や上司に自分がどんな仕事をしているのか、またどのようにチームに貢献しているのかを「見える化」し、キャリアに支障が出ないように配慮しましょう。チームのメンバー全員と連絡を取り合ったり、(メールやチャットではなく)オンライン会議の時間を作って仕事の相談をしたり、週明けに仕事の進捗状況をお互いに確認しあうなど、あなたの仕事を分かりやすく伝える方法は沢山あります。 他のブログでもご案内していますが、関係者にプロジェクトの進捗報告を報告し続け、上司に分かりやすく自分が何をしているのかを知らせておくのも良いでしょう。アピール色が多少強くなっても、気にしないでください。自分自身の成果は躊躇せずに連絡しましょう。
また、可能であれば、実際に仲間と会えるイベントなどに顔を出すのも良いでしょう。クリスマスパーティやチームランチなどは、チームへの帰属意識や参加意識を維持するためにも有効です。もしオフィスに出勤せずに、テレワークだけで働くのであれば、プロフェッショナルとしての自分の存在価値(パーソナルブランド)をどのように伸ばしていくかが肝要です。繰り返しになりますが、積極的に他のメンバーや関係者と繋がりを持ちましょう。同僚やクライアントとコミュニケーションを取るときは、熱心に、積極的に語りかけることも有効です。
5.働きすぎを避けるために、何をしますか?
 新型コロナ蔓延当初から、世界各国で労働時間が増加する現象がみられるようになりました。これは特に驚くべきことではありません。上司との目に見えるコミュニケーションが減少すれば、労働者は自分が生産性の高い社員であると見られたい、自分の存在価値を分かってほしいと望み、これが超過勤務に繋がっている可能性があるからです。また、自宅で24時間365日コンピュータに接続していれば、「いつでも仕事をしている」、「いつでも連絡が取れる」態勢にしておかなければならないと感じてしまうのかもしれません。
家庭の事情もあるでしょう。子供たちやペットの世話、宅配物への対応などで、日中はなかなか仕事に集中することが出来ずに生産性が低下してしまい、夕方以降に後れを取り戻そうと仕事をしてしまうのかもしれません。ですから、恒久的にテレワークをするのであれば、こうした健康に悪影響を及ぼす残業リスクへの対処法を考えておく必要があります。例えば、テレワークのための「リモートオフィス」を作り、雑念を最小限に止めたり、仕事の場所や時間を明確にして周囲に伝えておいたり、上司とオープンな信頼関係を築くなどの対策が考えられます。
6. 心身の健康を維持するために、何をしますか?
テレワークに起因するメンタルヘルスや健康の問題は、超過勤務や「燃え尽き症候群」の他にもあります。フィナンシャル・タイムズ紙は、テレワークにより「多くの労働者が『オンライン会議疲れ』や、精神的なストレスを発症する可能性がある。このストレスは、他人との直接の触れ合いを切望するために発生するものだ」と、報じています。 結局のところ、テレワークで生まれる精神的・健康的な負担は、オフィス勤務時とそれほど変わりありません。しかし、在宅勤務ではオフィス勤務よりも雑念が増えて集中できない環境になりやすいでしょう。ですから、長期的にテレワークに切り替える前に、仕事とプライベートの境界線を明確にし、これを厳守する自信を身に着けることが大切なのです。あなたは毎日、同じ時間にランチ休憩を取り、業務終了時には仕事を切り上げることが出来ますか?それとも、終業時間後も仕事モードのままメールに対応し、十分な休憩も睡眠時間も取らず、リフレッシュしないまま翌日を迎えることになりそうですか?
7. 孤独を感じたら、どのように対処しますか?
一人で仕事をすることは、孤独なものです。テレワークが初めて、またはほぼ初めてのみなさんは、このように考えたことは無かったかもしれません。ガーディアン紙が伝えているように、オフィスで働いてきた私たちは、さまざまな形で同僚とコミュニケーションしたり、広い世界に触れたりすることが日常の一部でした。常時テレワークで働くようになると、これまでのようにオフィスの同僚から言葉やしぐさで励ましてもらうことが出来なくなります。こうした励ましは、実はとても大切なコミュニケーションなのです。私たちは、失ってから初めてこのことに気づくのです。
このような孤独に立ち向かうために、あなたは何が出来ますか?チームの仲間や上司と定期的にミーティングを開いて、仕事以外の会話も楽しむのも良いでしょう。こうしたミーティングを設定したら、むやみに変更したり、先送りしたりしないことが大切です(ここは非常に大切なポイント!)。また、可能であれば仕事の後で、仕事に関係のない人脈を広げる活動を計画するのも良いでしょう。もしこうした取り組みでも孤独に対処できない、対処が難しいと思うのであれば、テレワークが自分に適した働き方なのかを考え直してみる必要があるかもしれません。
8. 自分が学ぶべきことについて、どのように積極的に伝えていきますか?
テレワークが常態化し上司と対面する機会が減ると、上司があなたのスキルを評価して必要なトレーニングを指定することが難しくなります。このような場合は、トレーニングが必要な分野を特定し、積極的に上司に相談を持ち掛け、スキルアップを図る姿勢が必要です。モチベーションを高めるためにも、まず自分の強みと弱みを客観的に分析してみましょう。そして、改善が必要な点が見つかったら、必要な対策を講じて努力をしましょう。自分の努力や行動を上司に分かってもらうことは、非常に大切です。また、学んだことがあれば、履歴書やLINKEDINにも反映していきましょう。テレワークとオフィス勤務では、求められるスキルが異なります。心して学んでいきましょう。
9. オフィスで働く仲間と違う待遇でも気にしませんか?
働き方の変革も進み、多くの企業では、福利厚生の見直しを進めています。つまり、テレワークで働くと、オフィス勤務の従業員とは異なる福利厚生制度が適用される可能性があるのです。それは一体どのようなものなのでしょうか?ヘイズのCEO、アリスター・コックスは、LINKEDINのブログの中で、「ビジネスクラスを使った旅行や社用車の使用、金銭などの特典よりも、健康で幸福な生活、自分の人生をマネジメントする自由と責任、学びなどの自己啓発の機会の方が価値を持つようになるかもしれません」と紹介しています。また、一部の企業では、今回の危機で仕事を失った労働者を対象に、教育プログラムを提供しているものもあります。その一方で、オフィス勤務の従業員を対象としたイベントやサービスの中には、テレワークで働く社員には提供出来ないものもあります。例えば無料で提供されるスナック類やドリンクは、テレワーク対象者に与えることが出来ません。社員に振舞われるケーキやお菓子などのささやかな特典もまたしかり、です。ただし、こうしたサービスの内容についてはそれぞれ好き嫌いがあるでしょうから、必ずしも自分が一方的に損をしたと感じる必要はありません。
自分に適した働き方を見つけましょう
上記の質問について、じっくりとお考えいただけましたか?テレワークは、あなたにとって本当に相応しい働き方なのでしょうか?もちろん、魅力的な働き方であることに変わりはありません。しかし、この働き方が本当に自分に適したスタイルなのかどうかを、確りと考えてみる価値はあるでしょう。働き方の選択は、人生のさまざまな局面に長期的に影響を及ぼします。だからこそ、生活様式を完全にスイッチしてしまう前に、慎重に考えて正しい判断を下しましょう。